「おしりぺんぺん」は効果的?体罰のもたらす悪影響と上手な回避方法【教えて保育士さん】
他に方法がないときは「おしりぺんぺん」するなど、“子どものしつけに体罰は必要“と考える親御さんもいるかもしれません。でも、それは本当に効果的な方法なのでしょうか?体罰がもたらす影響や、体罰に頼らない子育ての方法をご紹介します。
「体罰が必要」だと思っている人は多い
上の図で示したように、2018年の調査では、程度の差はあるものの「体罰を容認する」という大人はなんと全体の60%近くもいたという結果が報告されています[*1]。
もちろん、このなかには「虐待」と考えられるほどの暴力から「軽くたたく」というものまで、人によってさまざまな程度を想定していると考えられますが、それにしても多いとは思いませんか?
軽くたたくなら大丈夫?「体罰」とは
「軽くたたくくらいは体罰じゃないでしょ?」と思っている人もいるかもしれません。そもそも「体罰」とはどのような行為を指すのでしょうか。
体罰とは
体罰とは、教育のためという名目で、「身体に、何らかの苦痛を引き起こし、または不快感を意図的にもたらす行為」のことを言います[*2]。
軽くたたくのも体罰
「軽くたたくくらいなら大丈夫」と思っている方は多いのでは?。
「痛みの程度が軽いから」「感情的になっていないから」などと思うかもしれませんが、たとえ軽くでも、お子さんを叩いて言うことを聞かせようとしたり、必要だからといけないことをしたら強く怒鳴ったりという行為は、れっきとした「体罰」です。
以下に挙げる行為も、すべて体罰です[*2]。
・ 言葉で3回注意したけど言うことを聞かないので、頬をたたいた
・ 大切なものにいたずらをしたので、長時間正座をさせた
・ 友達を殴ってケガをさせたので、同じように子どもを殴った
・ 宿題をしなかったので、夕ご飯を与えなかった
最初は軽い体罰だったとしても、
子どもがそれに慣れてしまったり、親が自分を守るために体罰を正当化し始めると、
さらなる体罰に繋がったり虐待にエスカレートすることもあります。
なぜ?体罰をしてしまう理由
体罰は良くないと感じているのに、してしまうこともあるかもしれません。では、どのようなときに体罰をしやすいのでしょうか?
年齢に対して発達が遅れていると感じるとき
「5歳なのに、おねしょをする」「小学生なのに、じっと座っていられない」などと、年齢の割に発達が遅れているのではないかと親が感じているときは、体罰をしやすい傾向にあるそうです。
実際に、幼稚園や保育園でかかわってきた保護者の中でも、
「うちの子は遅れているかも」という不安を抱える方は多かったです。
そのことに必要以上に焦りを感じてしまったり、周りの人(特に子どもの祖父母や親戚など)から心配されたりすると、育て方を責められているように感じてしまい、どうにかしなくてはという気持ちから体罰をしてしまうこともあるようです。
保護者自身が困難を抱えている
「周囲に頼れる人がおらず育児が手一杯になっている」
「仕事や介護でストレスが溜まっている」
「家族関係がうまくいかず不満がある」など、
保護者自身が追い詰められていたり孤独だったりと余裕がない場合もあります。
幼稚園や保育園の保護者でも、複数のお子さんの相手を一人でしなくてはいけなかったり仕事が忙しい時期だったりして、
親に子どもに向き合う余裕がないと、親子ともに不安定になる姿が見られました。
このような場合にも、体罰をしてしまう可能性は高まるそうです。
体罰は遺伝する?
保護者自身が体罰を受けて育ってきたという背景も、少なからず影響します。
「自分はこうされて育ってきた」という思いから自分の子どもにも同じように体罰を与える方もいれば、逆に「自分が傷ついたから子どもにはしない」という方もいるので一概には言えませんが、
自分がされたことで体罰は必要なものと信じたままでいると、
遺伝のように次の世代へ続いてしまう可能性もあります。
なぜいけないの?体罰の与える悪影響
2020年4月施行の「児童福祉法」と「児童虐待防止法」に、体罰の禁止が新たに規定されましたが、法律で禁止されたから体罰をしてはいけないのではありません。
体罰にはさまざまなデメリットがあるのです。
問題行動のリスクが上がる
「親から体罰を受けていた子ども」は、全く受けていなかった子どもに比べて、
「落ち着いて話を聞けない」
「約束を守れない」
「一つのことに集中できない」
「我慢ができない」
「感情をうまく表せない」
「集団で行動できない」
などといった行動の問題を起こすリスクが高くなり、体罰の頻度が上がるほどこうした問題を起こす可能性は高くなると言われています[*2]。
成長や発達に影響がある
体罰や暴言は子どもの心身に多大なダメージを与え、その後の成長や発達に影響すると言われています。
実際に、親によく叩かれているという子では
頭をなでようと手を出すと「かばう」ようなしぐさをして怯えたり、
名前を呼ばれただけで「叱られる」と感じ暴れたり逃げ出したりする子もいました。
また、ママが怖いので叱られないように
「ママの前でだけいい子」にし、幼稚園や保育園ではトラブルばかりという子もいました。
親に相談できなくなり非行に繋がる
体罰をされることで、子どもは親に対して恐怖を抱くようになります。
困ったときに相談することができず、結果、非行や犯罪など別の問題に発展してしまう可能性もあります。
体罰は自己肯定感も下げる
体罰は、一時的に効果があるように感じられるかもしれません。しかしその勘違いはとても危険です。
「忘れ物が多い子」に対して叩いて叱ったとして、翌日はその恐怖を覚えているので効果があるかもしれません。ですが、体罰では問題の根本は解決されないため、子どもはまた忘れ物を繰り返します。
「なぜ忘れてしまうのか」
「どうしたら忘れないのか」
を一緒に考え、
解決法を見つけるサポートをしていくことが大切なのです。
体罰を与えたところで問題は解決しないので、子どもはその行動を繰り返すことになり、その度に
「こんなに叱られるのに、どうしてわたしは忘れ物をしてしまうんだろう……」と落ち込んで、
自己肯定感も下がっていく可能性があります。
体罰をしない子育てのコツ
体罰はダメ、と言われても、じゃあどうやってしつければいいの?と悩む親御さんも多いのではないでしょうか。体罰によらない子育てのコツを紹介します。
子どもの気持ちを聞く
子どもは、自分の気持ちを受け止めてもらうことで「わかってもらえた」
「大切にされている」
と感じ、落ち着くことがあります。
また、大人も「なぜこの子が問題行動をおこしたのか」を知ることによって、気持ちに共感できたり正しい行動を伝えたりすることができます。
言うことを聞かせようとしない
子どもが言うことを聞かないと感じる場面は多々あるでしょう。しかし、子どもも一人の人間で、「気持ち」があります。
「体調が悪い」
「ママやパパの気をひきたい」
「言われたことがよくわからない」など、
子どもにも子どもなりの事情があることを覚えておきましょう。
「イヤ」に対抗しない
何を言っても「イヤ」と返されるときもあるでしょう。「イヤ」と言うのも子どもの立派な主張なので、いったん受け止めてあげることも大切。
子どもは、「イヤ」と泣いているうちにパニックになり、何が嫌だったのかわからなくなってしまうこともあります。
このような状態のときは何をしてもダメなので、
一度距離をおいたり、
嫌がらないのであれば
「ぎゅっと抱きしめたり」
「さすったり」
して、まずは落ち着くように導いてあげる
といいですよ。
実際に幼稚園や保育園でも、
パニックになったときはクールダウンしてから話をするようにしていました。
これは家庭でも同じで、わたしはもうすぐ2歳になる娘に実践しています。
子どもの周りの環境を整える
「花瓶は触ってはダメよ」と言われても、触ってみたくなるのが子どもです。
何度も注意して親子ともにストレスを感じるくらいなら、花瓶は手の届かないところに置くようにすることも効果的です。
叱らないで済む環境をつくることも大切ですよ。
こんな方法も
子育てをしていると、「イライラしてしまったり」「余裕がなくなったり」してしまうことはありますよね。ワンオペ子育てならなおさらそんな場面も多いはず。
わたし自身も睡眠不足だったり時間に遅れそうだったりするとき、ついつい娘に強く当たってしまいそうなときがあります。そんなときにしていることをお伝えしますね。
・子どもからいったん離れ、距離を置く
・子どもの手をぎゅっと握ったり、抱きしめたりする
・大きな声を出してしまいそうなときは、逆にふざけてみたり、「大好き!」とプラスの言葉を叫んだりする
騙されたと思って一度やってみてください。
自分の気持ちが落ち着いたり子どもの気持ちが切り替わったりして、
意外とその場の雰囲気が変わりますよ!
まとめ
「おしりぺんぺん」というとたいしたことのなさそうな印象を受けるかもしれませんが、こうした比較的軽いと考えられているものを含め、体罰がいかに親子にとって良くないことなのか感じていただけたでしょうか。
体罰をしてしまいそうになったら、お子さんや自分と向き合い、必要であれば周囲にサポートを求められるといいですね。体罰に頼らない子育てを広げていきたいものです。
(文:mamaco)
※画像はイメージです
[*1]国際NGOセーブ・ザ・チルドレン 報告書『子ど体やこころ を傷つける罰のない社会を目指して』発表-国内2万人のしつけにおける体罰等に関する意識・実態調査結果2018年
[*2]厚生労働省「体罰等によらない子育ての推進に関する検討会」体罰等によらない子育てのために~みんなで育児を支える社会に~
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます