宋美玄先生解説|ローションセックスがおすすめな3つの理由!夫婦にこそ必要?
ローションや潤滑ゼリー(ラブローション)といったラブアイテムは、実は若いカップルよりも、夫婦間におすすめといわれることがあります。なぜ夫婦におすすめなのか、その理由を、産婦人科医で女性の性に関する著書も多数ある宋美玄先生に伺いました。
セックスの際、ローションを使ってほしい3つのケース
まずは「ローションを使ったほうが、よりよいセックスができるはず」という代表的なケースを教えていただきました。
ケース1:排卵後から生理前の期間
「ローションは腟のうるおいが足りないときに使うのがおすすめです。
腟のうるおいにはエストロゲンという女性ホルモンの分泌量が大きく影響するのですが、定期的に生理が来る女性の場合、排卵から生理開始までの期間(黄体期)はエストロゲンの分泌量が低下し、濡れにくくなりがちです。
性的興奮を感じたときに分泌される腟の潤滑液(俗に言う“愛液”)の分泌量には個人差があり、濡れにくい時期でもそれなりに分泌される人もいれば、乾いてしまうという人もいます。それは個人差ですから、致し方ないことです。
濡れやすくする方法がないわけではないですが、改善には時間がかかることも多いため、ローションを使ってうるおいを足すことをおすすめします、そのほうがストレスなく、安心した状態でセックスに臨めるはずです。」
ケース2:出産後間もない時期
「出産による女性ホルモンの変化は生理周期以上です。そのため、産後は腟のうるおいが極端になくなり、性交痛を訴える人も少なくありません。さらに、授乳をしている女性では、母乳分泌に関わるホルモンの影響で濡れにくい傾向が強くなります。
そこで、産後は性交痛を避けるため、セックスの際にローションや潤滑ゼリーを使うことが推奨されています。産後は『濡れなくて当然』というホルモンバランスなので、ローションなどでうるおいを補いながらするのがおすすめです。」
ケース3:セックスをもっと楽しみたい時
「愛液の分泌量が少なく濡れにくい時期以外であっても、ローションを使うことに何ら問題はありません。
ローションは、濡れにくい女性にとってはうるおいを足してくれる助けになってくれますし、そうでない女性にとっては、セックスを楽しむためのエッセンスになってくれることもあります。」
妊娠中や出産後すぐでもローションは使える?
「ローションはいつでも使ってOK」といわれても、妊娠中や産後すぐなど、肌状態が敏感な時期でもOKなのか、気になるところです。本当に使ってもよいのでしょうか。
妊婦さんや産後の女性も使ってOK
「妊娠中なら妊娠経過に異常がなければ、また、産後なら一ヶ月健診で異常なしと診断されてからであれば、普通のセックスもローションセックスも問題ありません。
妊娠中はエストロゲンの分泌量が増える時期なので、うるおいを足す目的で使いたいという人は少ないかもしれませんが、産後の濡れにくさで挿入時の痛みを感じる人は特に潤滑ゼリーを活用するといいですね。」
出産後の濡れにくさはずっと続くわけではなく、女性ホルモンの分泌が回復すればもとに戻るので、それまでの時期をカバーしてくれるローションは産後の夫婦にとって必要なセックスアイテムといえるかもしれません。
肌状態が敏感なときは、選び方に注意を
「妊娠前に使っていたローションが肌に合わない……ということも考えられるため、ローション選びには少し慎重になったほうがよい場合もあります。それについては個人差が大きいので、ご自身の肌の状態に合わせて考えてみるとよいでしょう。」
ローションの選び方 4つのポイント
では、実際にローションを選ぶ場合、どのようなところに気を付けて選べばよいのでしょうか。ローションの選び方についても、宋先生に伺いました。
選び方1 デリケートゾーンに使えるものを選ぶ
「『ローション』として市販されているもののなかには、腟周辺に使うには適していないものもあります。たとえば、吸水性ポリマーとして知られるポリアクリル酸ナトリウムを主成分とした製品は、肌につけること自体に問題はないものの、腟周辺の粘膜に使うには刺激が強く、トラブルを引き起こすことがあります。
薬局や信頼のおけるWebサイトなどで販売されている、デリケートゾーンへの使用が可能なローションを選びましょう。」
・ウォーターベース:水が主成分で初めての人でも使いやすい
・シリコンベース:シリコンを主成分とし、ヌルヌルが長続きする
・オイルベース:植物性オイルを主成分とし、乾きにくくマッサージにも使用が可能
選び方2 肌にやさしい素材でつくられているものを選ぶ
「肌トラブルが起きないかどうかは試してみないとわかりませんが、ローションは、お試しがしづらいのが難点でしょう。
なかには婦人科で、ローションの試供品を配布しているケースもあるため、かかりつけの婦人科で聞いてみてもよいかもしれません。」
選び方3 口に入れても平気な素材のものを選ぶ
セックスの際には、知らず知らずのうちにローションが口に入る可能性も考えられます。したがって、肌にやさしいことに加えて、なめたり口に入ったりしても問題がないと明記されている商品を選ぶのも、大切なポイントのひとつといえます。
選び方4 保湿ジェルでもOK
「ローションを買うのにはどうしても抵抗があるという人は、これを代用してもよいでしょう。
ローションよりもヌルヌル感の持続が短いなどのデメリットはあるかもしれませんが、選択肢のひとつとして参考にしてみてください。」
自然なローションセックスの持ちかけ方
ローションセックスをしてみたいと思っても、いざとなるとパートナーにどう持ちかければいいのか、戸惑ってしまう人も多いでしょう。特に女性の場合、自分からローションの使用を言い出すことに抵抗がある人もいるようです。自然なアプローチ方法はあるのでしょうか。
別な場所に使ってみる
「いきなりデリケートゾーンに使ってもいいのですが、胸や背中、脚、おしりなど、デリケートゾーンから離れた場所に塗ってみると、性的興奮が高まって意外とすんなり抵抗なく使えることがあります。」
先にパートナーに使う
そんな時は、まず相手に使ってみるとスムーズにローションを使えることがあります。
「パートナーのペニスを愛撫するときに使ってみるのもよいでしょう。
ローションを手に取って、ペニスに塗布し、愛撫してからそのまま挿入に持ち込むようにすれば、パートナーも気持ち良くなりますし、自然な流れでローションを使うこともできます。」
ローションセックス、する前・した後にすることは?
ローションを使ったセックスをする場合に気を付けておいたほうがよいポイントについても教えていただきました。
Before|大判のタオルなどを敷くと安心
「ベッドにビニールシートや大判のタオルを敷いておくとよいでしょう。
場合によってはバスルームで使うのもいいですが、ローションで滑って転倒しないように注意してください。」
After|種類によってはシャワーで洗い流す
「オイルベースのローションは洗い流す必要がありませんが、コンドームと一緒に使用すると、コンドームを劣化させ、破れやすくすることがあります。
腟へのうるおいを補うために使う場合は、ウォーターベースまたはシリコンベースのローションを選んだほうがよく、これらのローションは使用後はシャワーなどで洗い流す必要があります。」
まとめ
ローションは「濡れにくい」という女性の悩みを解決するのに適したアイテムです。産後や生理前の黄体期など、女性ホルモンのバランスが崩れることによって、感じていても濡れにくくなる時期もあります。そうしたお悩みがある場合、ローションを利用することによってセックスの際に抱えていた憂うつな気持ちがなくなることも少なくありません。
婦人科で試供品がもらえることもあるので、可能であればそれを利用してお試ししながら、自分に合ったローションを選び、セックスを楽しんでいけるとよいですね。
(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)
[*1]日本性科学会・編「性機能不全のカウンセリングから治療まで セックス・セラピー入門」p289
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
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