溺れるときは静かに沈んでいく。子供の「水の事故」を防ぐために知っておきたいこと
夏になると、毎年起こってしまう水難事故。特に子供は、浅いプールなどでも溺れてしまうことがあるので要注意です。どんなことに気をつけるべきか、小児科医の森戸先生に教えてもらいました。
溺れるときは静かに沈んでしまう
コロナ禍のピークを過ぎ、お子さんにいろいろな経験をさせてあげたいという親御さんは多いでしょう。これからの暑い季節は、特に海やプールなどでの水遊びも楽しいですね! ただ、毎年夏になると増えてしまうのが、水の事故。水遊びは体調のいいときに、十分に気をつけて安全に楽しむようにしてください。
まず、一般に子供は大人に比べて溺れやすいので、水遊びの際は保護者が決して目を離さないようにしましょう。実際、下のグラフの「遊泳中の事故の背景要因」を見ると、年齢が低いほど保護責任者の監視不十分によって事故が多く起きています。
特に小さい子は、10cm程度の深さの水でも溺れてしまうことがあります。以前、保育園や幼稚園、こども園などの浅いプールでも溺水事故が相次いだことから、現在では子供たちと一緒にプールに入って指導する先生以外に、見守りだけに専念する「監視者」をおくことがガイドラインで定められているほどです(内閣府:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン)。
子供が溺れる際は、バシャバシャと暴れて水音を立てたり、「助けて」と言ったりするイメージがあるかもしれませんが、実際には静かに沈んでしまうことがほとんど。だから、しっかり見ておかないと危険なのです。
水が浅いから、少しの間だから、もう小学生だから……などと決して油断しないようにしてください。たとえ水深が浅くても、短時間でも、目を離したすきに溺れてしまうことはあるのです。普段は泳げても、足がつるなどして、たまたま溺れてしまうこともあります。
遊泳場所ごとの注意事項は?
また、ひとくちに水遊びといっても、海や川、プールなど、遊ぶ場所によって特に注意すべきことは違います。以下のことに気をつけましょう。
<海>
監視員やライフセーバーのいる海水浴場の、遊泳が許可されている範囲で泳いでください。堤防や河口付近など場所によっては驚くほど潮の流れが速い離岸流(リップカレント)があり、いつの間にか沖へ流されてしまうことがあります。離岸流が起こりやすい場所(河口付近、人工物付近、岩場など)には入らないようにしましょう。
<川>
川遊びをするときは、必ずライフジャケットを着てください。川の流れは表面上は緩やかに見えても思いのほか速い場合があるので、より注意が必要です。天候が悪いとき、上流で雨が降っているとき、もともと増水しているときなどは、流される危険があるので川に近づかないようにしましょう。
<プール>
飛び込んだときに重大な事故が起こっているので、静かに入るようにしましょう。また吸い込まれる危険性のある排水口に近づいたり、監視員の目の届かない遊具や台の下に潜り込まないようにしてください。
<池や沼、用水路など>
基本的に遊泳は許可されていないはずですし、危険なので立ち入らないようにしましょう。
川遊びの場合はライフジャケットを必ず着せることが大事ですが、海などでも不安な場合は着せてあげてもいいでしょう。ライフジャケットは必ずサイズの合うものを選び、抜け落ちないよう股の間に紐を通すなどして正しく着用させてください。
また水遊びの時の注意事項を、親子でしっかり確認しておくことも大事です。以下のサイトを見てみましょう。実際に流されてしまったら、難しいことですが、あまり動かず浮くように教えておくことも大切です。
参照)
子どもを事故から守る!Project <消費者庁2021年7月7日のリリース>
自宅での水の事故にも要注意!
子供の水の事故が起きるのは夏だけではありません。実は、日本ではお風呂での溺水が非常に多いのです。それは湯船につかる習慣があるから。以下のグラフの通り、2歳以下の子供が溺れた事故の9割以上は浴槽で起こっているのです。3〜6歳でも、半数以上が浴槽で発生しています。
ですから、お風呂に入る際も、水遊びのときと同様に子供から決して目を離さないようにしましょう。ポイントは、大人が髪や体を洗うときは湯船から出す、浴室から出るときは先に子供を出すのを習慣づけること。寒い時期だと子供を湯船から出しておくのを躊躇するかもしれませんが、誰でもうっかりすることがあるので、安全な椅子などに座らせて時々湯をかけてあげたほうが安心です。
また乳児の首につけて湯船に浮かべるための浮き輪が市販されていますが、ずり落ちて溺れる事故が起きていますから、使わないようにしてください。詳しくは、消費者庁の下記リリースを読んでみてください。
▼消費者庁 独立行政法人国民生活センター 子どもを事故から守る!プロジェクトニュースリリース(平成24年7月27日)より
「首掛式の乳幼児用浮き輪を使用する際の注意について」
そのほか、子供が水を溜めたままの浴槽や洗濯機をのぞき込んで落ちて溺れる事故も発生しています。なるべく毎回排水したほうが安全ですが、もしも水を入れたままにする場合は、洗濯機や浴室の扉が開かないように鍵をかけておくなどの工夫をしましょう。
(参考)
・水回りの事故 消費者庁
・消費者庁「子どもを自己から守る!PROJECT」NewsRelease(令和3年7月7日)
・内閣府:教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン
・消費者庁「平成30年版消費者白書」より
(編集協力:大西まお)