恐くて悲しい物語「雪女」子どもに読み聞かせるときは、雪女とお雪を演じ分けて楽しんで!
美しい妖怪と言えば? そう聞かれてまず思い浮かぶのは「雪女」ではないでしょうか。今回はそんな雪女のお話を子どもに語り聞かせる時に、怖いだけじゃなく楽しくコミュニケーションとなる工夫を紹介します。親子で「雪女」の世界を楽しんでみましょう。
「雪女」を子どもに聞かせよう!
雪女は古くから伝わる雪の精、もしくは妖怪です。身近な昔話の1つであり、小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)の『怪談』の中にも収められています。本記事では小泉八雲の残した「雪女」をもとに、そのあらすじと、お話しするときのポイントをご紹介します。
「雪女」のあらすじ
馴染みのある物語とはいっても、子どもに話して聞かせるとなると、途中の展開があやふやだったりもしますよね。あらすじのポイントは物語が2つに分かれること。前半で起こること、後半で起こることを押さえておけば、うまく話せますよ。
① 大吹雪の夜の出会い
武蔵の国(※)のとある村に二人の木こりがいました。茂作というおじいさんと、巳之吉(みのきち)という青年です。
とあるたいそう寒い日、2人は川の向こうにある森へ行きましたが、大吹雪のために川を渡ってかえってこられなくなりました。そこで、舟の渡し守の小屋で一晩過ごすことにします。茂作はじきに眠りましたが、巳之吉はとても寒くて眠れませんでした。それでもようやく寝入った巳之吉でしたが、ふと、雪が顔に掛かるので目が覚めるのです。
茂作にキラキラと輝く煙のような息をかけていました。巳之吉は叫ぼうとしたけれど声が出ません。
美女は「あなたもこうしてしまおうと思ったけど、気の毒だし、若くて美しいからやめておきます。その代わり、今夜見たことを誰かに言ったら……たとえお母さんにでも言ってはなりません。その時はあなたを殺します」と言って、すーっと戸を通り抜けて、出て行きました。
巳之吉が茂作を見ると、氷のように冷たくなって死んでいました。
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※現在の東京都と埼玉県、神奈川県の川崎市、横浜市の大部分を含む地域
\ココがポイント/
✅大吹雪の夜、避難した小屋で雪女に出会う
✅美青年だった巳之吉は助かる
✅雪女は「誰かにしゃべったら殺す」と言い残す
② お雪との出会いと別れ
それから1年の月日が流れました。冬のある晩、巳之吉はお雪というとても美しい女性と出会い、ひとめぼれします。2人は結婚しました。2人の間には色白できれいな10人の子供が生まれ、幸せにくらしていました。
ところが、ある晩のこと。巳之吉は「いつだったか、お前のように美しい女の人を見たのだよ」と口を滑らせてしまいます。するとお雪はその話を聞きたがりました。そこで巳之吉は雪女のことをすべて話してしまいました。
突然お雪は立ち上がり、「それは私、私、私でした。雪でございます。あなたは約束を破ってしまわれたのですね。その時あなたが一言でも喋ったら殺すと言いました。けれども今は子どもたちがいるから殺しません。子どもたちを大切にしなかったら、その時は許しませんから!」
そう言うとお雪は、輝いた白い霞となって屋根の方へ上っていき、それから煙出しの穴を通ってふるえながら出て行きました。
それから巳之吉は2度とお雪の姿を見ることはありませんでした。
\ココがポイント/
✅巳之吉はお雪と名乗る色白の美人と結婚、雪のように白い子どもも生まれる
✅巳之吉はうっかり雪女のことをお雪に話してしまう
✅子どものためにお雪は巳之吉を殺さずに消える
子どもと「雪女」を楽しむには?
「雪女」は怖い話として知られますが、妻を失う夫の気持ちや、夫や子どもと離ればなれになる妻の気持ちを思うと、悲しい物語でもありますよね。
お子さんと楽しむときは、
・このお話は怖いと思うか、悲しいと思うか
・誰が悪かったと思うか
など、子どもに聞いてみると、盛り上がるかもしれません。
・自分だったら約束を守る? それとも喋っちゃう?
などと尋ねてみるのもいいですね。
また、お話を聞かせるときに、綺麗だけれど怖い雪女や、お嫁さんであるお雪の声色を使い分けて上手く演じると、お子さんも喜ぶでしょう。風が強く吹く感じや雪の絶えない音など、情景も再現できるとよいですね!
まとめ
美しくも悲しい物語である怪談「雪女」。茂作を殺してしまったり、話してしまったら殺すと脅したりと少し怖いシーンがありますので、お子さんが怖がらないように上手くお話をしてあげるのがよいでしょう。
(文:千羽智美)
※画像はイメージです