横澤夏子さん・DJ松永さんが語る「子育てはもっと誰かに甘えて頼っていい」
新潟県出身の芸人で三児の母・横澤夏子さんと、同じく新潟県出身のCreepy Nuts DJ松永さんが、30日に東京・有楽町のニッポン放送 imagine studioで行われたトークイベント『横澤夏子×DJ松永 新潟出身・同い年 ホンネの「子育て」トーク』に出席。地元の魅力を余すところなく語り合いました。
「もっと誰かに甘えて頼っていい」
横澤夏子さんは新潟県糸魚川市、DJ松永さんは新潟県長岡市の出身。子どもの頃の遊びや学生時代のバイトについてなど、「新潟大好き」なお2人は地元トークで話が弾みます。
横澤さんは3歳・2歳・4ヶ月の三姉妹のお母さんで、今年第三子を出産したばかり。松永さんが「一体いつ休んでるんですか?」と驚くと、「半年間、ちゃんと産休育休をいただいて、ありがたいことに3人とも保育園に預けられたので働けます」。この日は夜18時半開始のイベントだったため、子どもたちはベビーシッターさんにしっかり頼んできたそうです。
2020年2月というコロナ禍に入りかけた時期に長女を出産して、「人にどう頼ったらいいのか、甘え方がわからなかった」という横澤さん。「母子同室で初めて寝るとき、赤ちゃんが全然寝ないんですよ。赤ちゃんは日中は寝てるのに、夜にめちゃくちゃ泣き出して。夜行性で全然寝ないから、これいつまで続くの?」と戸惑い、病室で孤独にシクシク泣いていたといいます。
そんな状態を察した看護師さんに「大丈夫ですか?」と聞かれても、つい「全然大丈夫です~」と笑顔で返事してしまいます。というのも、「こんなんで泣いてて母親失格って思われたらどうしようとか、家に帰ったら一人でやらなきゃいけないのにこんな壁にぶちあたってるって知られたくない」と思っていたから。
しかし退院後、1ヶ月訪問で自宅に来てくれた助産師さんからは、「病院のみんなが横澤さんのことすごい心配してたよ」と一言。すべてはお見通しでした。そのとき「バレてるじゃんって。なんであのときプロに頼れなかったんだろう、頼れば良かった」と後悔したといいます。
ただその後も、お子さんを連れて街中へ出ると、「うるさいって思われてるんじゃないか。(こちらを見ている人がいると)助けてあげようって目で見てるかもしれないのに、攻撃されると思ったり」、「勝手にみんなを敵だと思っちゃう」モードに突入してしまいます。
ところがあるとき、子連れ外出中に近くの女性と赤ちゃんが見つめ合っていたことがあり、横澤さんは「やめて~!」と焦っていると、去り際にその女性が「元気をもらったわ、ありがとう」と言葉をかけてくれたのだそう。横澤さんは思わず号泣。「みんなを敵だと思いすぎてたんだな。もうちょっと甘えたり頼ったりすればよかった」と、振り返りました。
また、母乳外来に通っていたとき、次回の予約を書いてもらう紙に「大きくなーれ」と書き添えてくれたことに気づき、これまた感動したとも。「私だけじゃなくて、こんな外部の方が大きくなーれって思ってくれてるのぉって。コロナ禍で孤独な気分でいたけれど、助けてくれる人も多いなって思った」と明かしました。
産後は初めての育児に緊張しどおしで、睡眠不足にもなります。横澤さんのように、産後でいっぱいいっぱいなのにヘルプを出せなかったり、子連れでうっとうしがられているのではないかと疑心暗鬼になってしまうことは、決して珍しいことではないかもしれません。
だからこそ横澤さんは、「頼る力や甘える力を自分自身で養わなきゃと思った」と言い、そのうえで「でも、新潟にいた頃は、人に頼ることが自然にできてた」と気づいたといいます。
横澤さんも松永さんも、地元では近所の人たちみんなが顔見知りで、「隣の奥さんとか向かいの何々さんとかいてくれて、子どもの年齢とかも全部わかっている」「世代が違ってもご近所さんは知っている」という関係性が普通だったと口々に大盛り上がり。自然や食事の豊かさだけでなく、そんなところも新潟の良さだと再確認していました。
子どもの節目に10万円を支給
地元を愛する松永さんは、県が運営する新潟の魅力発信ポータルサイト『新潟のつかいかた』令和5年度アンバサダー。今年9月にはファミリー向けサイト『にいがたのつかいかた for Family』が新設され、横澤さんが『子育てに優しい新潟県アンバサダー』に就任しました。
イベントでは「子育てのしやすさ」という観点で新潟の魅力を紹介。ポイントとなるのは数字の「1」「0」「10」です。
【1】地域子育ての拠点数が日本で1番多い
公共施設や保育所、児童館など 相互交流や育児相談ができる場所がたくさんあり、地域で子育てをバックアップする環境が整えられています。
【0】待機児童がゼロ
県全体で、保育所認定こども園などの待機児童がゼロ。また、国が定める職員配置基準では保育園の1歳児クラスの場合1歳児6人に対し保育士1人ですが、新潟県の独自事業で1歳児3人に対し保育士1人を配置しています。
【10】子育て応援定期預金「新潟県こむすび定期」で10万円を支給
今年10月にスタートしたもので、入園・入学の経済的負担が大きい子どもの成長の節目に支援を行うため、2歳ごろと5歳ごろに満期となる「お子様名義の定期預金」(それぞれ5万円分)が支給されます。県外で生まれたお子さんでも2歳までに転入すると対象となります。
「いろんな世界線の自分を想像している」
独身で子どももいない松永さんですが、横澤さんは「いいお父さんになりそうなオーラがある」と想像しつつ「プライベートが見えない。どういう生活されてるのか、ミステリアス」。
当の松永さんは、「子どもができたり家庭を持ったりすることを、想像するんですよ。今の自分の生活とか仕事のリズムとか心持ちとかで、どうやって具体的にやってくんだろうなってめちゃくちゃ考えますよ」と、意外な告白。
ただ、「考えることに時間を使いすぎてるから、今、自分のいる場所から動けないんでしょうね」とも。「いろんな世界線の自分を想像している」といい、「都内に住むバージョン、新潟に戻るバージョン、都内から外れて千葉や神奈川に住むバージョン、別居婚パージョン、別居婚の中でも同じマンションで2つ部屋借りるパターンとか……」と、無限にある選択肢をいくつも検討してしまうんだそうです。
それは、結婚が松永さん1人の問題ではなく、相手ありきのものだから。相手の意思を尊重していきたいのだといいます。子育てに関しても同じで、「こうすればいい」と正解を提示できるものではないため、あくまでも選択肢を狭めずたくさん選べるようにしたうえで、子どもの意思に任せたいと話しました。
そこで横澤さんが「新潟に来いっていわれたら?」と尋ねると、「その可能性もなくはない」とのこと。そう言いつつ「俺は責任から逃げてるってことでもあるんだよな、優しさというよりは……」とブツブツ呟く松永さんに、「誰としゃべってる?」とツッコミが止まらない横澤さんでした。
「ウンチの写真を送れたら本物」
最後に設けられたお悩み相談コーナーでは、東京都内で生後9ヶ月の第一子を育てる女性から「夫は指示したことしか動かず主体性がありません。1人で頑張っているようで孤独を感じます。どうしたら子育てを主体的にしてくれるでしょう」という相談が。
これに松永さんは男性の立場から「父親は自分でお腹を痛めて苦労して産むことはできない。だから母親ほどの主体性を持つのはかなり難易度が高いと思う。でも自分は絶対に乗り越えたいなと思う」と語りました。
「敵わないからこそ、カバーする姿勢を持たなきゃいけない。のらりくらりやっちゃうと、母親に勝てない。自然には(主体性は)生まれないから、意識的・能動的に、気合いを入れてやらないと追いつかないんじゃないかな」(松永さん)
一方の横澤さんは、実体験を交えて「ある程度、相手に任せて口出しをしないようにする」とアドバイス。また、恋人から夫婦になり親になって「関係性が変わったな」と強く実感した瞬間のエピソードも明かしました。
それは子どもが体調を崩し、夫が小児科へ連れて行くことになったときのこと。病院の先生に「ウンチを見せるとどんな症状かわかる」と聞かされていたため、横澤さんは子どもの便の写真を撮っており、夫のスマホにその写真を送信しました。
「カップル時代、まさかウンチの写真を送るとは思わなかった。彼氏や彼女に、ウンチの写真を送ると思います? そして夫から『ありがとう』って返ってきたんです。これで仲間だ、やっと一緒に子育てしてる、って思った。ウンチの写真を送れたら本物」(横澤さん)
このエピソードに会場は爆笑しつつ、頷きまくりです。
平日夜の開催でしたが、お子様連れの観客もチラホラ。生後9ヶ月の赤ちゃんを連れたママさんもいらして、「キャ」「アァ」と可愛らしい声が聞こえるたびに会場はほんわかした空気に包まれていました。
(取材・文=マイナビ子育て編集部)