<離婚の実態調査>別居の段階で離婚の合意をした人は約6割、金銭面では合意が低い傾向
夫婦がこれまでの結婚生活を解消して別居を決意したとき、最も大切なのは「今後、どうしていくか」ということです。単なる恋人同士の別れと違って、ただ単に「さようなら」というわけには行かないのが夫婦関係。さまざまな合意形成が必要になります。離婚経験者はどうだったのでしょうか? 法務省の調査結果から見ていきます。
円満な離婚のためにはいろいろな合意形成が必要不可欠でしょう。いつ・どのように合意形成をするかはそれぞれの事情によって変わってくると思いますが、今回は一つの参考として、離婚前に別居していた人の場合を見ていきたいと思います。法務省が全国の協議離婚(※)を経験した30代および40代の男女1,000人を対象に行った実態調査をもとにお伝えします。
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(※)協議離婚とは裁判所を通さず、夫婦間の話し合いによる合意で離婚条件を取り決め、離婚届の提出をもって成立する離婚です。最も一般的な方法といえます。
■ 離婚前の別居にあたって話し合いをした人は6割以上
離婚前に別居をしたと回答した430人を対象に、別居することを決めたときに「相手と話し合いをしたか」を尋ねた結果を見ると、「別居前に話し合いをした」と回答した人は66.3%、「別居前に話し合いをしていない」と回答した人は33.7%でした。およそ3人に2人が何かしらの話し合いをして、別居を開始したことがわかります。
■ 話し合いでどんな合意形成をしたか?
ここからはさらに、別居前に話し合いをした285人を対象に、8つの項目における合意の有無を尋ねた結果を見ていきましょう。
・別居に関すること
1.別居について
まずは、「別居すること」そのものについてですが、「合意できた」と回答した人は72.6%でした。一方、「合意できなかった」は18.9%、「別居することについて話し合っていない」が8.4%となっています。ほとんどの人はお互いに合意して別居を開始したようですが、3割弱の人は合意に至らない、または、別居について話し合うことなく別居を始めたようです。
2.子どもの同居者について
今回の調査では離婚時に子どもがいた夫婦が回答者となっています。したがって、別居時にはどちらが子どもと同居するかという問題も生じます。この点を聞いた設問は、「合意できた」が68.8%、「合意できなかった」が18.2%という結果でした。夫婦の間に子どもがいた場合には、どちらが子どもと暮らしていくのかはとても重要な事柄です。それだけに合意がなかなか難しいケースもあるでしょうが、それでも合意できたほうが約3倍多いという結果でした。
なお、「話し合っていない」という人も13.0%と、1割を超える数にのぼりました。
3.同居しない親との面会について
子どもと同居していない親がどう面会するかについては、「合意できた」と回答した人が38.6%、「同居しない親との面会等の仕方について話し合っていない」が37.9%と、いずれも約4割。「合意できなかった」は23.5%となりました。まだ離婚に至っていない、一時的な別居の段階では、そこまで取り決めないケースも少なくないと想像されます。
4.別居中の生活費について
「別居中の生活費の支払い」については、「合意できた」と回答した人は50.5%と半数にとどまり、「合意できなかった」が24.6%、「別居中の生活費について話し合っていない」が24.9%で、ほぼ同じ割合となりました。そもそも話し合いをしていない人が意外にも多い印象です。別居を考えるような夫婦関係となっている以上、お金の話はしにくいということなのかもしれません。
・離婚に関すること
5.離婚することについて
別居前の話し合いで、離婚することについて「合意できた」と答えた人は58.6%、「合意できなかった」は29.8%でした。一方が離婚を望み、一方は望まないケースもあることを考えると、別居前に話し合いで離婚の合意をした人が約6割にのぼるのは、思ったよりも多いといえるかもしれません。
6.離婚後の親権について
離婚後の親権者については、「合意できた」が58.9%で約6割を占め、「合意できなかった」(20.0%)と比べて約3倍でした。別居にあたってどちらが子どもと同居するかという設問の回答とおおむね近い結果です。
子どもがいる夫婦が離婚する場合、協議するうえで重大な論点のひとつが親権でしょう。現在、政府が離婚後の共同親権の導入を検討していますが、現行の法律ではどちらか一方の親が親権を持つことになっています。夫婦や子を交えた話し合いで親権者を決められるのが理想ですが、そうはいかないことも大いにあり得ます。別居前の話し合いですでに合意形成を行ったのが約6割というのは、少なくない数字かもしれません。
7.離婚後の養育費について
子ども関連でいうと、離婚後の養育費をどうするかも大きな問題ですが、しっかり合意できた状態で別居を開始したという人は半数ほどでした。「合意できた」は51.6%、一方の「合意できなかった」は25.6%となっています。まだ離婚が確定していない段階ではやはり決めにくい向きが強まるのか、親権と比べると合意の割合は下がるようです。
8.離婚後の財産分与について
最後は、離婚に伴う財産分与についての合意の有無を見てみます。「合意できた」人は39.6%、「合意できなかった」人は23.9%、「離婚に伴う財産分与について話し合っていない」人も36.5%にのぼりました。離婚成立前であり、また、ここまで話し合う余裕がなかったという人も多いのでしょう。
■ まとめ
今回は、離婚前に別居をした人を対象にしたアンケートをもとに、別居前の話し合いの状況を見てきました。離婚は大きな負担を伴うものですが、その後のことを考えると、相手とよく話し合って双方が納得したうえで進めたいもの。離婚に向けて別居前から必要事項について合意形成をはかっている人は少なくないようです。離婚は必ずしも後ろ向きな行動ではなく、「これからまた違う一歩を踏み出すための行動」と捉え、平和に解決できるのなら、それが一番だといえるでしょう。
(マイナビ子育て編集部)
・調査概要
■協議離婚に関する実態調査/法務省
調査対象:協議離婚を経験した30代および40代の男女
調査時期:2021年3月8日~10日
有効回答数:1,000(男性:500、女性:500)