登山ガイドママに聞く【親子でアウトドア】のススメ! 普段からできることはある?安藤さんインタビュー#1
もうすぐ春休み! 子どもとどう過ごそうか計画を立てているご家庭も多いのではないでしょうか。また、2023年からは愛知県で保護者と校外学習に学校を休める「ラーケーション」が始まり、親子でのアウトドアもますます注目を集めています。一方で、アウトドアと言っても何から始めればいいか迷ってしまう親御さんも少なくないようで……。
日本山岳ガイド協会認定登山ガイドで2人の男子の母でもある安藤真由子さんにアウトドアの楽しみ方や親子登山についてお聞きする本シリーズ(全3回)。
初回となる今回は「親子のアウトドア、はじめの一歩はどう踏み出すか」についてお聞きします。
お話をしてくださった方
安藤 真由子さん
(低酸素シニアトレーナー、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド)
子どもとアウトドア、どんな“いいこと”がある?
―― アウトドアや屋外遊びは子どもに重要だと言われています。親世代にとっても、屋外は開放感がありますし気持ちがいいものですよね。
子どもにとっては、具体的にどんな「いいこと」があると思いますか?
安藤真由子さん(以下、安藤) 自分では調整できない、自然そのものを体験できる、というのが大きいです。
室内では温度や湿度がある程度コントロールできます。水道も自分で水流を調整できますね。でも、屋外では暑さや寒さ、川や海の水の勢いなどは調整できません。
屋外での活動はコントロールできない自然の出会い。やってみたら心身ともに強くなれる
安藤 自分でコントロールできないものがいっぱいある中で、自分がどうやってなじんだり対処したりできるのかを体験できる。それが自然で過ごす一番のメリットだと思います。
―― コントロールできないものは危ない、と考える保護者もいそうですが、それでも自然はいい、と言っていいんでしょうか?
安藤 小さいうちは親や周りの大人がサポートしつつ「こうしたらいいよ」って教えてあげますよね。「ここは危ないから近寄らない」とか、「ここは気を付けて」とか。そういうふうに教えてもらいながら体験していくのはすごく大事です。
学校登山などで山ガイドとして高校生たちを山に連れて行くことがあり、高校生から「雨が降り出したけど大丈夫なんですか?」って聞かれることもあります。でも、山の中では多少雨が降っても行動しなくてはならない場合もあります。
レインウェアをしっかりと身に着けたり、危ないコースは変更したりしながら山を歩きとおすと、1日で心身ともにすごく強くなった感じがします。
―― ままならない自然を感じながら活動すると、自信もつくんですね。
安藤 そうですね。そして、小さいうちからそういう屋外での経験をしておくと、大人になってからやるよりも心も体もなじみやすいと思います。
アウトドアの「はじめの一歩」はどこから踏み出す?
―― そもそも、親自身がインドア派というご家庭もあります。虫がブーンと飛んでいるのを見ただけで怖い人もいると思うんです。
それでも子どもに自然で過ごす体験をさせたい、と思ったら、まず手始めに何から始めればいいんでしょうか?
安藤 まずは広めの公園に連れていくところから始めるといいと思います。公園でも自然に触れられるので。
私自身の子育て中も、しょっちゅう子どもと一緒に公園に行っていました。朝から昼まで公園で過ごして、家に帰ってお昼ご飯を食べたらまた公園に行って、って感じで。
インドア派の親は公園遊びから始めよう。身近な自然にも出会うチャンス
―― ずっと公園にいたんですね!
安藤 そうです。
幼児のうちは走っている小学生とぶつからないなどに気を付ける必要はありますが、活発な子も公園なら自由に動き回れます。
親にとっても、屋外なら家にいる時のように「物を壊すな」とか「暴れるな」とか言わずに済むのでストレスが減ると思いますよ。葉っぱや小石や砂を手に取ってみたり、鳥や虫を見つけたりするのもいい体験だと思います。うちの子は葉っぱや砂を口に入れたこともありました(笑)。
―― 歩けないうちから公園遊びをしてもいいんでしょうか?
安藤 いいと思います。うちは洋服が汚れても割り切って、公園の中をハイハイさせていましたよ。汚れたり水に濡れたりすることもあります。そういうことが続くうちに、親も子どもへの許容範囲が広がると思いますよ。
―― 地面に割れた物や触れると危ない物がないかなどをチェックしてあげれば、芝生のある公園などではハイハイを楽しめそうですね。
子連れでキャンプに行きたい! でも準備に不安も……
―― 公園遊びには慣れたし、バーベキューやキャンプなどにも挑戦したい!と思ったら、ビギナーはどうすればいいでしょう?
安藤 食材や炭などを買いそろえて火を起こすのは大変だし、テントやキャンプ道具をそろえたくてもわからないですよね。なので、最初から用意されている施設とかサービスから利用してみるのがおすすめです。
ビギナーなら手始めに手ぶらバーベキューやグランピングを。がんばり過ぎないのがポイント
安藤 例えば、手ぶらで行けるバーベキューや、色々セッティングしてもらえるグランピングなら初めての人もやりやすいのではないでしょうか。宿泊する場合でも、テントを張らずコテージやバンガロー泊にするだけでも、初心者には安心でしょう。
―― 最初から全部自分で用意するのではなく、少しずつ慣れていけばいいんですね。
安藤 そうですね。グランピングでキャンプに慣れてきたら、次は食事だけ自分たちで作ってみるとか、日帰りのデイキャンプをしてみるとか、少しずつステップアップしていけばいいんです。
アウトドアグッズを一気に購入して自分たちだけでやろうとすると、テントやコンロや寝具などを全部セッティングするだけじゃなく帰り際には全部を掃除して片づけたり、帰宅してから生乾きのテントを干したりとすごい大変。
安藤 がんばり過ぎないで、ちょっとお金がかかっても少しずつサービスを利用していくのがいいです。
子どもは大人よりも順応性が高いものですが、お子さんによってはいきなり「テントで寝るよ」と言われても寝付けない子もいます。また、雨風の音がダイレクトに聞こえることで怖がったり、興奮してしまうことも。
だからいきなり本格的なキャンプを始めるのではなく、バンガローを使ったりデイキャンプから始めるなど、少しずつ慣れていくとスムーズになじめるでしょうね。
ちなみに行く前の下地作りも意外と大事です。突然キャンプに連れていくんじゃなくて、事前にキャンプ場のホームページや写真を見せて、子どもの「わくわくする気持ち」を盛り上げておくのもいいですよ。
―― がんばり過ぎない、少しずつ慣れる、そして少しずつステップアップする。親子で楽しい気持ちを盛り上げる。
無理をしないのが楽しむためのコツなんですね。
(解説:安藤 真由子、取材・文:大崎典子)