pecoさんの叱り方「すごくめんどうくさいお母さんかもしれない」自分を否定されたと感じないように/pecoさんインタビュー【4】
pecoさんの育児のキーワードは「自分を好きになる」こと。pecoさんが日々意識する、子どもに「僕はダメなんだ」と絶対に思わせない、自己肯定感を引き上げる言葉のかけ方とは。
親子別々で寝た10ヶ月は「朝まで眠れたことが一切なかった」
ーー息子さんが生後10ヶ月くらいまでは、同室の目が届く場所にベビーベッドを置き、大人と別々で寝ていたんですよね。
pecoさん(以下、peco) はい、赤ちゃんのうちから寝室を別にするアメリカ式のスタイルに憧れていましたが、すごく泣いてしまって。やっぱり、夜中にふと目覚めたときに隣に親がいないから泣くんでしょうね、そのたびに起きて抱っこして授乳して……とやっていました。だから10ヶ月くらいまで、私、朝まで寝られたことが一切なかったんです。ちなみにryuchellはまったく起きなくて(笑)。
ーーそれもすごいです!(笑)
peco 自分でも「ごめんね、ほんとうに起きられないの。なにも耳に入らないの」と言っていましたが(笑)、寝る前はいろんなことをやってくれるし、朝になったらバトンタッチしてくれるから、どれだけ泣いて喚いて起きなくても、そこに対して不満はなにもありませんでした。
ーー親子別々のベッドは、どんな対策をしましたか?
peco 試行錯誤しましたね。泣いたら、私はベビーベッドの隙間に指を入れて息子の口元に寄せ、吸ってもらうとか。でも、実家に帰ったとき、ベビーベッドがなかったので仕方なく同じベッドで寝たんですよ。そしたら、初めて朝まで寝たんです。それで、「あっ、そういうこと!?」と気づいて。ならもう一緒に寝よう! と思って、私はその日からようやく朝まで眠れるようになりました。
ーー息子さんは一緒に寝たくて泣いていたんですね。アメリカのお母さんお父さんはそれを乗り越えているんですかね?
peco そうなんですよ。仲の良いアメリカ人のママがいますが、彼女は「子どもが熱を出したときの1回しか一緒に寝たことがない」と言っていました。やっぱり一緒に寝た次の夜はすごく泣いたそうですが、心を鬼にしてテレビの音量を上げて乗り越えたそうです。彼女の子どもはいま6歳ですが、ひとりで「おやすみー」と寝室に入っていくそうです。
ーーpecoさんのYouTubeのナイトルーティン動画を観ましたが、今の息子さんの就寝時間は夜7時半。すんなり寝ますか?
peco そうですね、7時半になったら寝るモードになります。一緒にベッドへ行って寝かしつけます。
ーーそこからpecoさんはどんなふうにすごしていますか?
peco 起きていろいろやります。7時半だから、まだなにも終わっていないんですよ。洗濯や食器洗いなどの家事をしたり、仕事をしたり、ぼーっとする時間もほしいですしね。
どんなことでも伝えてくれたら「ありがとう」
ーーぼーっとする時間、人間には必要ですよね。YouTubeのルーティン動画では、息子さんへの褒め方や叱り方など、言葉の向け方にとても配慮されているように思います。
peco いやいやいや! 私も毎日毎日、適当なことばかり言っていますよ。こんなにえらそうなことを言っていますが(笑)、本当に毎日ボロクソ言っちゃって。気をつけたいとは思っていますけど……。
ーーかける言葉について、いつから、どんなふうに意識していますか?
peco まずは小さいころから、どんなにとんでもないことでも、私に伝えてくれたことに対して「ありがとう」と心から思うし、大きくなったときに「ママにはなんでも伝えられる」と思ってもらいたいんです。
私自身が母には「何を言っても許される」と思っていたからこそ、めちゃくちゃなことを言っていたし。だから以前から、なにかを伝えてくれたときは「言ってくれてうれしかったよ」と伝えるようにしていました。
実現できないことでも同じ。「それはできないよ」と断る前に「言ってくれてありがとう」を必ず伝えます。それは意識的にやっています。
ーー「なんでも言っていい」の線引きはとても難しいように思います。たとえば食事中、自分が作った料理に対して「うわ! またキノコが入ってる。こんなの食べられないよ!」と言われたら、「もう食べなくていい!!!」とテーブルをひっくり返したくなってしまいますが、そういうときはどうしますか?
peco 私も言いますよ。「もう下げるで。食べんでいいよ」と。でも、余裕がある日は「そっか、ごめんね。イヤだったよね。イヤって言ってくれてありがとう。明日はちがうのにしようね」。余裕があれば、ですけどね。
ーー私は我が子が思春期に増長して「くそババア」など言うようになったらどうしましょう、と心配してしまいます(苦笑)。
peco 私は「くそババア」と言われても別にいいと思っていますが、「それ、絶対に外で言うなよ」とは言うでしょうね。いまはまだ汚い言葉は言いませんが、たとえばごはん中にふざけてテーブルに足を上げていたら「それはダメだよ。絶対に外でやったらあかんで」とは、よく言いますね。
ーーお母さんが子どもにとっての最後の受け皿になっていて、それが子どもにも伝わり、家や親に対する安心感に繋がるのでしょうね。
peco そうですね。私も外ではすごくお利口さんで、家では母が靴下を脱がせる、みたいなお姫様状態だったんですよ(苦笑)。
「僕がダメなんだ、と思ってほしくないから」
peco だから息子にとっても、家がいちばんリラックスできる場所になってほしいと思っているんです。いまは思っているだけで全然できていないし、「靴下脱がして」と言われても「自分で脱いで」と返しちゃいますけど(笑)。やっぱり、頭で思っていても、それを実行できるか否かには高い壁があると、日々思います。
ーー「こうしたい」と意識しているだけで全然違うと思います。息子さんは今年の夏で6歳に。インターナショナルスクールに通っているそうですが、学校ではどんな子なんでしょう。
peco 通知表に「お友達の喧嘩の仲裁に入っている」と書かれていたことがあって「えー! すごいやん!」と言うと、「そんなことやってないよ」と言っていました。知らず知らずにやっていたのかなと思うと、すごくうれしいですね。
ーー心根の優しい子なんですね。息子さんの尊敬するところはどんなところですか?
peco ほんとうに優しいところですね。私が失敗しても「まあいいんじゃない」といつも言ってくれるし、「いいじゃん、それくらい」を口癖のように言ってくれます。完全にryuchellの要素を受け継いでいると思います。
ーーpecoさんは、いろいろなことをポジティブ変換するのがうまいのではと思いました。そのひとつが、お子さまへの接し方です。
peco やっぱり自己肯定感を高く持ってほしいと思っています。怒るときは、「僕のことを否定されたんだ」と絶対に思ってほしくないから「あなたの行動を怒っているんだよ」ということを伝えるために、もうすっごくていねいに細かく言っています。逆に、すごくめんどうくさいお母さんかもしれないけど(笑)。
あと、たとえば約束の時間があるとき。家を出る前にゆっくりしていたら、ゆっくりしていることを怒るのではなく、「お約束だから、時間が決まっているから、間に合うように動かないといけないよ」と細かく言います。
絶対に「あなたのせいだ」にはしたくないんです。準備が遅くて見たいテレビが見られなかった。それは「あなたのせいだよ」ではなく、「あなたが早く準備をしなかったからだよね」と。
ーーなるほど。
peco 「僕がダメなんだ」と思ってほしくなくて、日々、気をつけています。
「いま、できないこと」ではなく「ここまで、できたこと」を見てほしい
ーーYouTube動画で、息子さんが寝坊したとき「いっぱい寝られたね」と声をかけている動画がありましたが、これは実践したいと思いました。
peco このときは私も起こせなかったから寝坊したわけだし、結果「いっぱい寝られた」というのは事実なので(笑)。いいことがあるなら、そこを言いたいんですよね。
たとえば、テストで100点満点中1点の回答用紙が返ってきても「1点取れたね!」と言いたいし、そういういいところに目を向けられる子になってほしいんです。
ディズニーランドでアトラクションに並んでいるときも、息子に「まだ? 早く乗りたい」と言われたら、「うしろを見て。こんなに進んだよ」と言うようにしていて。昨日も自転車で坂道を登っているときに「もう疲れた」と言っていたので「うしろを見て。こんなに登ってきたんだよ」と言いました。
ーーそれまでの道のりを見せる、とてもいいですね!
peco 「いま、できないこと」ではなく、「ここまで、できたこと」を見てほしいなと、いつも思っています。
ーー大人も心がけたい、すてきな言葉ですね。「自己肯定感」は昨今のキーワードとしてさまざまなメディアで見聞きしますが、pecoさんの幼少期を振り返り「自己肯定感が育まれた」と感じた出来事はありますか?
peco まず、一度も親に否定されたことがないです。テストで悪い点数を取っても否定されないし。あとはなにをするにしても「まあ、ええんちゃう?」といつも言ってくれたから、「これでいいんだ」と思えました。
ーー親になると「肯定したいけど、甘やかしたくはない」という葛藤が生まれることもあります。そこには大きな違いがあるかと思いますが、いかがでしょうか。
peco 私自身はとても甘やかされていたとは思います。でも、習っていたバレエを「辞めたい」と言ったときは「あんたがやるって言ったんやから、全部やり終えてから辞めなさい」とはっきり言われました。甘やかされるだけではない、ハッとする言葉をもらっていたとは思います。
ほかにも、私が「おしゃれできないから学校に行きたくない」と言ったときも「休むのはいいけど、ちゃんと自分で計算して、卒業できるようにしいや」と言われました。最終的にはいつも認めてくれるけど、その前に一度、私にゆだねて責任を持たせてくれたんだと思います。
ーーお母さんからpecoさんへ、pecoさんから息子さんへ、たいせつなことが脈々と受け継がれていく様子がうかがえます。最後に、これを読んでいるママやパパにメッセージをお願いします。
peco 私は「いつも穏やかでかわいいママになれたら」と思っていますが、今朝もいっぱい怒ってきました(笑)。そんなママでもぜんぜんだいじょうぶだと思います。一緒にがんばりましょう!
pecoさん/タレント、ブランドプロデューサー
1995年6月30日、大阪府出身。原宿系ファッションのカリスマ読者モデルとして10代を中心に支持され、パートナーのryuchellとテレビ番組やTVCMなど多数出演。一児の母になった現在は、育児やライフスタイルを映したSNSが人気。2023年に自身がデザイナー・プロデューサーを務めるファッションブランド「Tostalgic Clothing」を開始。2月に初のエッセイ本『My Life』(祥伝社)を上梓した。
(撮影:松野葉子 取材・文:有山千春)