「うるせぇ!」と母親を避ける息子…どうすればいい? 元開成学園校長が教える<思春期男子の正しい育て方>#2
昔はあんなに「ママ、大好き」って言ってたくさんお話ししてくれたのに、今ではブスッとして乱暴な言葉遣いまで(泣)。自分も通ったはずの思春期だけど、こんなに難しく感じるのは、私が母で、子が息子だからでしょうか?
今回は思春期の男子に対する
・なぜ母親を遠ざけるの?
・「うるせぇ」などの悪態はどうすればいい?
などの疑問について、元開成学園校長の柳沢幸雄先生の著書(思春期男子の正しい育て方/宝島社刊)より解説をお届けします。
思春期男子が母親を避けるようになるのは当たり前
子どもには親離れの本能が準備されている
母親にとって“思春期男子”は未知との遭遇。我が子なのにどう扱ったらいいかわからないと感じるでしょう。女の子はどちらかというと言葉数も多く、「同性だからわかってくれるはず」と自分の思いを母親にぶつけます。また、第二次性徴は女の子のほうが2歳程度早く、精神的にも大人びています。一方で、男の子は一般的に、自分の思いを言語化する力が弱く、考え方もやや幼い傾向にあります。
もう一つ大事なことがあります。第二次性徴を迎えた子どもが異性の親と距離をおくというのは、“ヒト”という動物として根本的かつ無意識的な習性です。女の子は小学校の高学年くらいになると、父親のことを「臭い」などと毛嫌いするようになります。一緒にお風呂に入るのも嫌がります。同じように、思春期の男子は母親と距離をおくようになるのです。これは生物学的に見れば当然のこと。本能として親離れがプログラムされていた種族のほうが相対的に健康だったので、“ヒト”は近親相姦を避けて発展した種族が生き残りました。
子どもには親離れの本能が備わっていますが、親には子離れの本能がありません。“ヒト”以外の動物は、子育てを終えると死を迎えることが多いため、子離れの本能は必要なかったのです。しかし、“ヒト”は長生きするようになり、子どもに距離をおかれるようになっても親は世話を焼こうとします。
幼い子どもは、親を100%信頼して自身を預けます。親は子どものために好きなメニューの食事を用意し、生活に必要なものは全部揃え、病気のときは寝ずに看病します。こうした関係は、疑似恋愛に似ています。親離れをしようとしている思春期男子には、その疑似恋愛が重たく感じられるのです。
思春期男子の子育て対策>>>
・子どもが距離をおくのは本能と理解する。
・思春期男子を子ども扱いしすぎない。
思春期男子の「うるせぇ」は「ねぇ、お母さん」と理解する
子どもが親から離れようとするときは静観する
思春期男子は、母親が何か言ったり聞き出そうとしたりすると、「うるせぇ」と悪態をつくようになります。これは正しく成長している証ですから、いちいちムカッとしないように。「うるせぇ」は「ねぇ、お母さん」と同義語くらいに捉えましょう。
子どもは思春期になると、「自分たちだけの楽しい世界」が生まれます。秘密基地です。いつも群れる同性の友だち、部活の先輩・後輩との関係には、仲間内だけで通じる会話やルールがあります。それが楽しくてたまらないのです。しかし、多くの母親は、自分が介入できない世界の存在を好意的に思わず、理解しようとしません。子どもとしては、理解しようとしないくせに口を出す母親を疎ましく思います。そもそもあまり知られたくないのに、根掘り葉掘り聞かれることにうんざりなのです。
母親としては、「きちんと説明すればいい」と反論したくなるかもしれません。でも、おそらく子どもは話すのが得意ではなくても、自分と周囲の関係や興味のあることについて一度は話しているはず。それなのに、母親は最後まで聞かずに「何それ」と批判的に子どもの話を遮ります。理解してもらえないどころか、批判される。それでは思春期男子は口を閉ざしてしまいます。
しかし、「うるせぇ」と言いながらも、親を完全に拒絶しているわけではありません。思春期男子は、親の庇護から離れて、親の知らない世界に羽ばたくことを不安に思っています。「うるせぇ」と言っているうちは、まだ親を頼りにしていると解釈しましょう。だからといってガミガミと小言を言うと、口だけでなく心も閉ざしてしまいます。子どもが離れていこうとするときは少し離れて静観しましょう。そもそも思春期男子は、なるべく短い言葉で会話を済ませようとします。「メシ、風呂、寝る」に「うるせぇ」くらいだったのが、「ありがとう」の一言が加わるときが来ます。親のいるありがたみがわかるようになったら、大人への第一歩を踏み出したということ。思春期男子の反抗も一段落です。
思春期男子の子育て対策>>>
・「うるせぇ」にはいちいちムカつかない。
・親を頼りにしていると解釈する。
『マンガと図解 元開成学園校長が教える 思春期男子の正しい育て方』(著:柳沢幸雄、マンガ・イラスト:藤井昌子、宝島社刊)より一部抜粋、再編集