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2024年10月12日 16:06 更新

【最終回】「最近の子どもは…」根拠のない育児論に惑わされず、楽しく子育てしてほしい。小児科医・森戸やすみ先生の思い

2022年1月にスタートした本連載。最終回では、子育てに関するデマに惑わされないためのヒントをお伝えします。おかしな情報に惑わされず、楽しく子育てしましょう!

◼︎子育ては幸せだけど大変なこと

(※画像はイメージです)
(※画像はイメージです)

いつの時代も、子育てはとてもやりがいのあること。子どものかわいさに心を打たれたり、成長を興味深く思ったり、幸せを感じたりする瞬間がたくさんあるでしょう。

しかし、同時に子育てはとても大変なこと。特に子どもが小さいうちは、食事も排泄も着替えも寝かしつけも……何もかも保護者によるケアが必要です。いくら子どものことが大好きでも疲れるときはあるでしょう。

そのうえ、現代はインターネットの情報やSNS投稿によって「子育てに関するデマ」が広まりやすく、何が本当なのかと頭を悩まされがち。さらに進行する少子化によって子育て世帯がマイノリティ化した結果、子どもや子育てに対する理解が得られないことも多々あり、これも多くのお父さんやお母さんにとって悩みのタネだと思います。

ですから、この連載のテーマは「もっときらくに子育て」。本当に気をつけなくてはいけないことだけに注意を払って、あとは気楽に楽しみながら子育てをしてほしいという主旨で、2022年1月にスタートしました。

おかげさまでたくさんの方に読んでいただいて、少しはお役に立てたのかもしれないと嬉しく思っています。ただ、今現在も、インターネット上の記事やSNSを見ていると、残念ながら子育てに関するおかしな情報がたくさんあります。

そこで最終回では、こんな情報に気をつけてほしいということを改めてお伝えします。

◼︎「最近の子どもは」という脅し

(※画像はイメージです)
(※画像はイメージです)

「今の子どもはダメ」という脅しは、まともに受け取らないようにしましょう。そういう説のほぼ全てに共通するのは、データなどの根拠がないこと。よく見かけるのは、以下のようなものです。

○最近の子どもは「体温が下がっている」
「最近は子供の平熱が低く、免疫機能が低下している」と言い、必要以上に厚着をさせたり、運動をさせたり、特定の食べ物やサプリメントを与える人もいるようです。しかし、何らかの行動によって一時的に体温が上がったとしても直ちに健康に影響するものではありません。

○最近の子どもは「子守歌で眠れない」
「スマホ育児のせいで、子どもが子守歌で眠れない」という記事が話題になりましたが、保育士や親の子守歌ではなくアプリから流れる歌を聴きながら寝ても問題ありません。

○最近の子どもは「水が飲めない」
臨床の現場で日々子どもたちに接していますが、水が飲めない子どもが増えているということはないでしょう。学校では、冷水器や水道で水を飲む子どもは少なくありません。また、仮に水が苦手で代わりに麦茶を飲む子どもがいても全く問題ありません。

○最近の子どもは「ささいなことでキレやすい」
これも根拠不明です。むしろ昔に比べて子どもの人権が守られるようになり、きちんと論理的に叱る大人が増えていますから、穏やかに過ごせる子が増えていてもおかしくないでしょう。少なくとも少年犯罪の件数は減っています。

こうして並べると、バカバカしくなってきますね。もっとたくさんの説がありますが、どれも同じような感じです。

◼︎「〇〇は体や発達に悪い」のウソ

もう一つ、「〇〇は体や発達に悪い」という根拠のない説もたくさんあります。ありとあらゆるものが悪者にされていますが、よく見かけるのは以下のようなものです。

○白い食品は体に悪い
当然のことですが、適量の飲食で毒になるような「食品」は存在しません。もし毒であれば、食品衛生法などの法律により「食品」として売ることができないからです。子どもに関していえば、1歳未満にはちみつ、3歳未満に生ものは与えず、それ以降もカフェインが多いものや喉に詰まりやすいものに気を付けてほしいのですが、一般的に「白い食べもの」である白砂糖や小麦粉、牛乳などの普通の食品を極端に避ける必要はありません。

○薬やワクチンはよくない
健康食品などと違って、医薬品やワクチンは何度も臨床試験を繰り返し、効果効能が認められて認可されています。その後も本当に副反応や副作用が少なく効果があるのかどうか、繰り返し確認されています。

○スマホを使うと脳が発達しない
その昔は「マンガを読むとバカになる」「テレビを見るとバカになる」「テレビゲームが子どもを破壊する」などと言われていましたが、新しいものは否定されやすく、今では「スマホ」が悪者になっていると考えられます。

○野菜は農薬だらけで危険
日本の慣行農業(通常の農業)で使われる農薬や化学肥料には、安全を守るための厳格な基準があります。動物実験の結果わかった無毒性量のさらに100分の1にし(安全係数)、一日摂取許容量(ADI)を算出しているので、不安に思わなくても大丈夫です。

(※画像はイメージです)
(※画像はイメージです)

こうした根拠のない説を広める団体の中には、保護者を不安に陥れ、その記事を読ませたり、何らかの物を買わせたり、おかしな講座に参加させたりする目的があるケースも少なくありません。根拠のない説には振り回されないよう気をつけてください。

それでも子どもが大事なあまりに、子育て中は不安になってしまうこともあるでしょう。そういうときは、一人で悩まないことが大切です。配偶者や友人などの身近な人、「子ども家庭支援センター」や「児童相談所」などの自治体の相談窓口、小児科などで相談してみてくださいね。

(解説:森戸やすみ 構成:大西まお)

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