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2025年04月14日 08:11 更新

夫婦の役割分担に急激な進化をもたらした、選べるパートタイマー制と「パパの日」って?|オランダ人のシンプルですごい子育て#5

子どもの幸福度世界一といわれるオランダ。オランダのパパたちは、子どもや家族とどう向き合っているのでしょうか。

\子ども幸福度世界一のオランダ!親も苦労しないシンプルな子育てとは/

小学生は宿題なし、塾通いなし。でも学力は世界トップ層のオランダ。
手をかけないで「自分の頭で考える力」を伸ばすシンプルな育児法が、今、世界から注目されています。
それぞれアメリカ、イギリスから移住した2人の著者が、自由放任に見えて学力も幸福度も高いオランダ式育児を紹介した一冊です。

幸福度が高いオランダのパパのあり方について、書籍『オランダ人のシンプルですごい子育て』(日経BP)から一部抜粋してお届けします。

オランダ人男性はママを支えている

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※画像はイメージです

「リーン・イン」という用語を新しくつくったフェイス・ブック元最高執行責任者のシェリル・サンドバーグさんは、著書『リーン・イン』(日本経済新聞出版・2013年)の中で「リーン・インの母親はすべてを持ち合わせている」とし、ニューヨーク州のベルナルドカレッジ卒業式の訓示で「あなたが大事なキャリアを決めようとするうえで一番大事なことは、人生のパートナーがいるかどうかではなく、そのパートナーがいったい誰であるかということです」と言っている。

私はサンドバーグさんのいうパートナー論に心から賛成だ。人生のパートナーは対等な立場を理解する必要がある。さらに言えば、サンドバーグさんは、オランダ人男性との結婚を真剣に検討するべきだ、というアドバイスも加えるべきだった。

オランダ人男性はフランス人男性のようにロマンチックだったり、イタリア人男性のようにセックスが上手いという評判はないが、オランダでは男女両サイドから対等に求愛することが可能だ。つまり、女性が男性をデートに誘うことに何の問題もない。最初のデートで自分の食べた分は自分で払う(一般的に「going Dutch(割り勘)」としても知られているけれど)という厄介な作業を通過できれば、オランダ人男性は実はヨーロッパの中でも穴場の理想的存在だろう。

一例を挙げると、オランダ人男性は本気で女性の言うことに耳を傾けようとする。自分の気持ちを話すことができるということは、男女両方にとって高く評価されるすばらしい特質だ。

オランダでは、男性と女性、あるいはパパとママの間の役割分担は、急激に進化した。オランダ人男性は、北欧の国々と同じように、家事や子育てに関して平等な責任を負い、家族全体の幸せに大きな影響を与えている。

オランダ人女性は子育てや家事の責任を負わされているところがまだあるので、役割分担は完璧とはいえないが、それも時代とともに変化してきている。オランダ中央統計局によると、男性が炊事洗濯をする時間が増える一方で、女性が家事に携わる時間が減ってきているという。

選べるパートタイマー制と「パパの日」

(※画像はイメージです)

オランダ人がなぜ幸せを感じるかというもう1つの理由は、この国のパートタイム勤務文化にあると思う。

オランダ人はOECD加盟国の中で、もっとも平均労働時間が短く、ヨーロッパ諸国中でも1週間あたりの労働時間がもっとも少ない国だ。男性の26・8%が週に最長36時間以内で働き、女性の75%がパートタイム勤務だという。じつに成人人口の約半分がパートタイム勤務なのだ(これはヨーロッパ諸国中でもかなり高い数字だ)。

さらにこれは、未熟練労働者から専門労働者まですべての職種で見られることだという。これと比較してみるとイギリスではパートタイム勤務は全人口の25%(男性13%、女性43%)、アメリカに関してはさらに割合が低く、18・9%(男性12・6%、女性25・8%)となっている。

オランダでは、パートタイム勤務は普通のことだ。多くのオランダ人パパにとって自分のキャリアの追求と同じように子どもの世話をしたり、家事をしたりすることは大事なことなのである。オランダ人パパは家庭内でも自分の役割を持つことが大事だと理解しているし、またこれを理解してサポートしてくれる会社で働けるということは幸運なことだ。

子どもの成長や幸せにおける父親の役割の重要性は、研究者や医療専門家たちからも認められており、科学文献には説得力ある証拠がいくつも並べられている。

子どもの幸福についてユニセフレポートの基礎をつくったHBSCの研究によると、オランダ人の子どもと父親との関係は、一緒に過ごす時間が増えていくにともない徐々に改善されたそうだ。

オランダではフルタイム勤務を36時間として労働時間を軽減したとき、政府は失業対策として週40時間あるいは9~17時で働いてきた人に対して週半日や2週間に1日の特別休暇を付与することで補償した。そしてこの休みは「パパの日」として父親に多用されることとなる。それからだんだん多くのオランダ人パパたちが週に1回、子どもとの時間を持てるすばらしさを知り、「パパの日」を取ることが今ではあたりまえになってきている。

「パパの日」について興味があったので、近しい友だちのマタイスに話を聞いてみた。

「パパの日はいたって普通のことだよ、公共政府部署ではとくにね。週4日勤務にすることに私は何の迷いもなかった。娘と一緒に過ごせる時間が持てるなんてすばらしいことだし、もし娘が昼寝をしたり友だちと遊んだりしていれば、その間にメールをチェックしたり、あまり集中しなくていい仕事も少しできるしね」と彼は言った。

「前に何かで読んだのだけれど、学校に女性の先生がたくさんいる場合はとくに、子どもにとって男性の影響は大事みたいだ。パパはパパにできることをしなくてはならない。つまり、外に遊びに行って、娘とレスリングをしたり、じゃれあったりして体を使った遊びをすること。この金曜日の放課後はパパの日だったけれど、娘が友だちと約束をしていたので、一緒に街まで自転車で連れて行ったよ。この薄暗い11月の季節に少しでも太陽の光と気持ちのいい空気を吸わせるため外で遊ばせたんだ。それからショッピングモールへ行って、回転ドアの中でぐるぐる回って遊んだり、冗談を言ったりした。そして子どもたちに聖ニコラスのチョコレートを買ってあげた。娘の友だちが家に帰ると、また私と娘は外に出て家の前でサッカーをした。近所に住む男の子たちと自転車競走ができるようセッティングもした。体を使って遊ぶことは娘にとっていいことだし、何より私もとっても楽しかった!」と、マタイスは話してくれた。

我が家は、私がフリーランス作家として自宅でパートタイム勤務をし、夫がフルタイム勤務という典型的なケースだ。

夫のブラムも「パパの日」はあるが、それは平日ではなく週末だ。夫は週末に1週間分の買い物をする役目を果たすついでに、3歳の息子ユリウスを外に連れ出してくれる。ユリウスを動物園やプールへ連れて行った後には掃除・洗濯・掃除機がけもしてくれる。次男が少し大きくなると、今度は次男を連れ出してもくれた。私にとってこの時間が、やらなければいけない執筆やブログ、プロジェクトのために使える時間なのだ。

仕事とその人のアイデンティティが密接につながっているアメリカでは、「ほかと違うことをする」父親は孤独と汚名という事態に直面することがある。

同年代の男性はオムツを替えたり、夕食をつくったり、洗濯をしたり子育てに参加したいと思っている人が多い。しかしそうした非常に高い先進的な理想を持つ人に待ち構えている嘆かわしい現実は、長期にわたる仕事のプレッシャーで彼らの志が打ち砕かれるということだ。

アメリカの子育ては「子どもを持つことを決めたのはあなたの選択なのだから自分で対処するべき」と考えられ、地域社会の問題というよりは個人の問題と見なされる。それにくらべてオランダの子育ては、社会全体が責任を持って取り組むことだという考えがある。オランダ人の親には、子どもの世話をお願いできるおじいちゃん・おばあちゃん・姉妹兄弟や近所の人など、恵まれたサポート環境があることが多い。

親がパートタイム勤務で働いていても、理想的なのはパパとママの両方のおじいちゃん・おばあちゃんといった親戚や近所の人や地元の託児所、家まで子どもの世話に来てくれる資格を持った保育士などの追加支援があることだ。

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この続きは、是非書籍でご覧ください。

オランダ人のシンプルですごい子育て
(2025/04/14時点)

※本記事は、『オランダ人の シンプルですごい子育て』著:リナ・マエ・アコスタ、ミッシェル・ハッチソン 訳:吉見・ホフストラ・真紀子/日経BP より抜粋・再編集して作成しました。

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