【医師監修】「臨月の外出ルール」4つを産婦人科医に聞いた!
出産を間近に控えたとはいえ、出産前にしておきたい用事や、上のお子さんの行事などがあれば外出しないわけにはいかない場合もあります。また、産休が始まり、出産までの間にすこし気分転換したい、などということがあるかもしれません。臨月の妊婦さんの安全な外出について、4つのルールをご紹介します。
ルール1 36週目の1週間を大事に過ごす
早産と正期産の違いとは
36週からは「臨月」と呼ばれ、そのすこし前ごろからお母さんの体は出産準備に入り、いつ陣痛が起きてもおかしくない状態にぐんぐん整っていきます。しかし、赤ちゃんの肺など、一部の臓器の機能はまだ未熟で、成熟するのは37週以降です。
そのため37週以前に生まれると「早産」とされ、37週以降に生まれた場合が「正期産」とされます。
つまり、同じ臨月でも36週〜37週未満の1週間は、赤ちゃんの成熟にとってとても大切な時期といえます。ぜひお母さんも赤ちゃんと一緒に、安全に、穏やかに、注意深く過ごしましょう。
37週以降はいつでも出産の可能性あり
一般的に37週を超えると、赤ちゃんは十分に成長し、外界に出て生きることができる状態です。お母さんの体も、いつでも出産可能な準備が整えば、いつ陣痛が始まってもおかしくありません。
誕生の瞬間はもうすぐ! そのことを心に留めて臨月を過ごしていきましょう。
ルール2 産科まで「すぐ行ける」圏内でお出かけ
行っていい範囲や持ち物は?
それでは、出産を間近にしたこの時期、どのくらいの範囲であれば外出しても安全でしょうか。
具体的に「ここまでならば絶対安心!」と明言はできませんが、移動先で破水や陣痛が起きたら、タクシーなどを利用して出産予定の産院へすぐ行ける距離の場所、つまり生活圏内を外出の範囲の目安としましょう。
例えば、運動としてのウォーキングをかねて行きつけのスーパーへ買い物に行き、ランチを食べて戻ってくる、などです。また、外出の際は下記のような「持ち物」(表)を準備しておけば、外出先で破水などが起きた際も安心です。
持ち物リスト
□スマートフォン(出産予定の病院の電話番号登録)
□母子手帳
□出産予定の病院の診察券
□保険証
□タクシー代
□大きめのナプキン
□替えの下着
□レジャーシート(小)またはビニール袋(大)
□バスタオル
外出時の移動手段は?
どのような交通機関も、何かアクシデントがあれば長時間、車内から出られなくなる可能性はゼロではありません。
しかし、自分だけで運転するマイカーは、事故渋滞などに巻き込まれてしまうと、身動きできなくなるだけでなく、お腹を圧迫する姿勢をとり続けなければならない危険があります。とくに臨月に入ってからの自動車の運転は避けましょう。
移動中、つらくなったら姿勢を変えたり、すこし動いたりできる公共交通機関を、混雑時を避けて利用するか、ドアツードアが可能なタクシーを使うか、歩きましょう。
いつ、どこへ行くのもOK?
感染症などが流行しやすい時期には、人の多い場所、保育園・幼稚園や学校など感染が広がることの多い場所はなるべく避けましょう。保育園など「抵抗力が弱い人」「同じ人が、連日集まる場所」といった感染が拡大しやすい条件に合うため、注意が必要なのです。
とはいえ、上の子の送り迎えや行事参加などで、完全に避けるわけにはいかない場合もあるかと思います。その際は、短時間の滞在にする、十分な手洗いをする、不織布製マスクを着用するなど、予防の対処を心がけてください。
ルール3 産前の外食、ここに注意!
食中毒予防のポイント!
赤ちゃんが産まれたら、しばらく外食はおあずけと思って、臨月に外食を楽しんでおこうと考える妊婦さんは少なくないようです。
また、赤ちゃんの位置が下がって、胃が楽になると食欲が戻ってきたり、産休の“オフ”の充実を望んだり、おいしいものを食べに行く絶好のチャンスと思うのもやむなし!? ですから、外食するならば「食材」と「調理方法」に注意しましょう。
なぜなら妊婦さんが食中毒を起こしてしまうと、使用できる薬がある程度限られるうえ、食中毒を起こした場合、特に妊娠後期は重症化しやすく、出産経過や母子の著しい健康被害につながるリスクの高い細菌があるからです。
「リステリア菌」は私たちの生活環境に広く存在している細菌で、妊娠していない時期、健康であればリステリア食中毒を起こすことも、重症化することもほとんどありません。しかし、妊婦さんや体力が低下した人は十分に加熱されていない食品(生ハム、ナチュラルチーズ、未殺菌乳、スモークサーモン、果物など)を食べることで感染してしまう例が報告され、注意喚起されているのです。
予防のため、衛生管理の行き届いた店で、十分に加熱された献立を選んで外食を楽しみましょう。
ルール4 外出先で破水や陣痛が起きたときは?
出産予定の病院に一報!
外出先で破水や陣痛が起こったら、出産予定の病院に電話をして、状況を伝え、指示をもらいましょう。
すぐに向かうことになったら、用意しておいたナプキンを当て、家族などが運転する車かタクシーを確保し、座席にレジャーシート(またはビニール袋)とバスタオルを敷いて乗車を! 破水した場合、動くたびに羊水が流出しますので、産院が徒歩圏外の場合はタクシーや自家用車で移動しましょう。また、事前登録が必要になりますが、24時間年中無休で対応してくれる便利な陣痛タクシーの利用もおすすめです。
里帰り出産をする人の注意点
臨月に入る前、なるべく早めに移動を
「出産は実家近くの産院で」と里帰り出産を予定している人は、移動の安全と、産む産院での診察や体制づくりもあるので、産休が始まる妊娠34週を目安になるべく早めに転院しましょう。
また、帝王切開の予定や可能性がある場合は、妊娠何週までに診察を受けたらいいか、産院でのスケジュールをあらかじめ聞いておき、それに合わせて余裕をもって移動してください。
なお、移動に飛行機を使う場合、各航空会社が妊娠中の乗客の利用について妊娠期間や利用路線により「医師の診断書」の提出などが求められますので、利用する便の条件の事前チェックも忘れずに!
まとめ
臨月は、急に陣痛が始まったり破水する可能性もある時期です。外出には慎重さを要しますが、それでもリフレッシュのためや上のお子さんの用事など、必要な外出もあるでしょう。できるだけ生活圏内の外出にとどめ、「陣痛が起きても対応可能」な用意を整えて、臨月のお出かけを楽しみましょう。
待望の日はもうすぐやってきます。その日のために体は着々と準備をし、赤ちゃんも育っています。くれぐれも安全に、健やかに出産を迎えられるよう、気をつけてお過ごしください。
(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
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※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます