
【医師監修】妊娠中は鼻血が出やすい? どうやって止める?
妊娠すると「鼻血が出やすい」こともマイナートラブル(妊娠に伴って起こる不快症状)のひとつです。なぜ、鼻血が出やすいのでしょうか? 健康状態と鼻血との関係や、止血法やケアについてまとめます。
妊娠中に鼻血が出やすいわけ


「妊娠してから鼻血が出やすい」という訴えは、松峯先生も診察時、時々妊婦さんから聞くと話します。なぜ「鼻血が出やすい」のでしょうか? 妊娠中の鼻血について、まずは原因を知っておきましょう。
ホルモン分泌の変化と鼻血の関係
妊娠中に分泌量が増えるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、体に水分を蓄える作用と末梢の血管を拡張させる作用をもっています。そのため妊娠している間、女性の体をめぐる血液量は増大し、妊娠後期には、妊娠していないときと比べ40~45%増にもなっていて[*1]、大変むくみやすい状態にあります。
一方、鼻血が出る場所は、キ-ゼルバッハ部位という鼻の入り口から1cmほど中にある網の目状に血管が浮き出ているところからです。
妊娠中に出やすくなった鼻血は、「血管の拡張」「血液循環量の増加」「キーゼルバッハ部位のむくみ」が同時に起こっている結果です。つまり、多くの場合は妊娠による生理的な変化が原因ですから、妊娠経過が順調な人で、すぐに血が止まるようであれば、心配することはないでしょう。
同じ理由で歯ぐきからの出血も?
口の中には毛細血管が張り巡らされているので、粘膜がむくみ、傷つくなどすると出血しやすい部分ではあります。
とくに、妊娠中はホルモンの関係で歯ぐきが炎症を起こしやすいとも言われています[*2]。歯ぐきからの出血は、誤った口腔ケアや歯肉炎、歯周病などでもよく起こることです。歯ぐきからの出血がある場合は、妊娠を告げて歯科診療を受けましょう。
鼻血で貧血になる?
妊婦さんに起こる「妊婦貧血」は、妊娠に原因のある「鉄欠乏性貧血」「葉酸欠乏性貧血」「鉄欠乏と葉酸欠乏を合併している貧血」であることがほとんどです[*3]。
主治医は、定期的な血液検査で貧血など血液の状態をチェックしています。定期健診で主治医と十分なコミュニケーションがとれていたら、鼻血による貧血を心配することはないでしょう。
鼻血の止め方
案外知られていない「正しい止め方」
鼻血が出たとき、つい顔を上に向けてしまいがちです。その場合、血が喉に流れ込み、飲み込んでしまうことで、吐き気や嘔吐につながることがあります。
また、ひとむかし前には「ティッシュを鼻の穴につめる」とも教わったかもしれませんが、ティッシュを外すとき、再び粘膜を傷つけることがあるので、現在は「指で圧迫し、冷やして止める」が勧められています。
鼻血はこうやって止める
1. うつむき、ティッシュなどで鼻血を受け止めながら(鼻の穴につめない)、しっかり鼻をつまみましょう。
息苦しかったら、鼻血が出ているほうの鼻の穴をふさぐように小鼻を真横から人さし指で押さえます。
2. このとき、目と目の間を冷やすと止まりやすくなります。小さな保冷剤などをタオルで巻いて、目頭の間に当ててみましょう。
3. そのまま5分程度安静にしていて、手を外したとき、たまっていた血が出るかもしれませんが、その後、ほとんどの場合は止まります。
止まらなかったら、もう5分、指で圧迫しながら様子を見ましょう。それでも止まらない場合は一般的な原因とは異なる可能性もありますので、耳鼻咽喉科を受診してください。
鼻血を予防するには?
鼻を刺激しない! 注意のポイント
妊娠中、鼻の粘膜は「出血しやすくなっている」を念頭に、鼻の中には触れないように気をつけましょう。鼻をかむときも、やさしく、あまり勢いをつけないようにします。
こんなことも試してみよう!
むくんでいる粘膜は乾燥で傷つき、出血やすくなります。鼻血を繰り返すようなら、不織布製マスクをつけて、保湿しましょう。とくに冬場や、エアコン除湿をしているシーズンの居室・寝室内に加湿器を置いて、適度なうるおいを保ってください。
まとめ
妊娠すると鼻血が出やすくなるのは、多くの場合、生理的な変化で心配のないケースのようです。出てしまったら、正しい止血法で対処し、粘膜の状態がデリケートであることを心にとどめて、保湿ケアを習慣にしてください。
(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]日本産科婦人科学会雑誌59巻12号「D.産科疾患の診断・治療・管理」
[*2] 日本臨床歯周病学会「歯周病と妊娠」
[*3]日本産婦人科・新生児血液学会「妊婦貧血とはどんな病気ですか?」
広島県医師会「子どもサポーターズ 耳鼻咽喉科 鼻血が出たとき」
日本産婦人科医会「妊娠中の飲酒について」
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます