
【医師監修】臨月のスクワットは陣痛を促す効果あり?臨月スクワットのやり方
臨月に入れば「1日も早く赤ちゃんに会いたい!」そんな気持ちが日増しに募るためでしょうか、妊婦さんには陣痛発来を望んで何らかの行動をとる人が少なくないようです。その目的で話題にあがることが多い「スクワット」などについて、専門医の見解をうかがいました。
陣痛を起こすため、スクワットは効果あり?
まず、臨月とは妊娠36~40週のこと。その少し前から母体は出産準備に入り、いつ陣痛や破水が起きてもお産ができる状態に整っていきますが、赤ちゃんの一部の臓器の機能はまだ未熟で、生まれてきても大丈夫なほどに成熟するのは37週以降になります。
そのため37週以降(~41週)に生まれた場合を「正期産」とし、それ以前(妊娠22~36週)に生まれると「早産」とされます。
つまり臨月に入っても36週〜37週未満の1週間は陣痛発来を望むのはまだ早いということです。この1週間も赤ちゃんにとって大切な成熟の時間ですから、ぜひお母さんも赤ちゃんと一緒に、大事に、安全に過ごしましょう。
では本題ですが、スクワットに陣痛を促すような効果はあるのでしょうか?


スクワットや階段の上りをりをする妊婦さんは多い
ある調査では、分娩前の7日間に「何らかの陣痛発来への取り組み(「ウオーキング」「乳頭刺激」「スクワット」「階段昇降」など)をした」という妊婦さんが9割を超えていました[*1]。
予定日が近づくと、お腹の苦しさや赤ちゃんに会いたい気持ちから「早く陣痛が来て欲しい」と思う妊婦さんは多く、これ以外にも「焼肉を食べる」など医学的根拠のないジンクスを試す人もいるようです。
「スクワットで陣痛を起こす」に明確な医学的根拠はない
とはいえ、医学的には「スクワット」をはじめ、運動やさまざまなアイデアが陣痛を促すとはいえません。
自分で行えることで陣痛を促せるのは「乳頭刺激」だけということが、世界的に信頼されている研究結果で明らかになっています[*2]。乳頭を刺激すると、オキシトシンという子宮の収縮を促すホルモンの分泌が高まり、陣痛につながることがわかっているのです。
やり方としては、親指と人差し指・中指の腹で乳頭をつまみ、上下→左右からとずらしながらゆっくり優しく抑えます。それを左右の胸に行います。強くつまみすぎたり、ゴシゴシこすったりするのは厳禁です。
※ハイリスクの妊婦さんなど乳頭刺激を行わない方がいいケースもあります。詳しくは医師に相談してください。
出産に向けての体力づくりとしては有効
陣痛発来の意味はなくても、運動は出産に備えた体力づくりとして有効です。
体調がよく、主治医からも特別な注意を受けていないなら、妊娠中に行っていた運動を37週以降も継続できます。
下肢の筋肉を動かす軽い有酸素運動が良く、「ウオーキング」や「水中ウオーキング」、「階段上り(下りはエスカレーターなどを利用)」のほか、マタニティヨガ、マタニティビクスなどが人気です。
「妊娠中から基礎体力づくりとして運動に取り組んできた人は、運動を続けて体調を整えることは良いでしょう。ただし『臨月だから』と運動を始めたり、ことさらがんばる必要はありません。
そしてスクワットも、出産のときに使う筋肉を動かす『準備体操』として、臨月の妊婦さんにふさわしいやり方で、安全最優先で行うなら問題はないでしょう。
基本的に妊娠中は、負荷の大きい運動をしてはいけないので、筋トレではなく体力づくりであることを忘れないで、無理のないやり方にしましょう」
臨月のスクワットの注意点は?


臨月スクワットのやり方
妊娠中には、全身の筋肉を鍛えるようなタイプのスクワットをすることはできませんが、臨月の妊婦さんもできるスクワットを紹介します。
臨月の妊婦さんが上体を無理に下げようとすると転倒の危険がありますので、無理のない、安全な範囲で下げる程度でも正しい姿勢で行うと、体力づくりに十分な運動になります。
ゆっくりスクワットの基本姿勢
・広げる足幅は肩幅と同じくらいに
・つま先は正面に向け、親指の付け根・小指の付け根・踵への体重が同じくらいになるように立つ
・背筋を伸ばし、正面を見る
・腕は机などにつかまるか、壁につく
ゆっくりスクワットの正しいやり方
1. 基本姿勢をつくる
2. 息を吐きながら、股関節と膝を一緒に曲げる。
※背中はまっすぐのまま、腰骨を太ももに近づけるように、股関節から折り曲げ、椅子に腰掛けるようにお尻を後ろにひくイメージ。
※膝はつま先と同じ方向を向くように注意。
※この時常に、足の裏では、親指の付け根・小指の付け根・踵への体重が同じくらいになるように意識。
3. 一度息を吸い、息を吐きながら膝が伸びきらない程度に立ち上がる
4. 2〜3を10回繰り返す
5. 1分休む
6. 残り2セット行う(目安は10回 × 3セット/日)
(スクワット指導・監修:近藤加那先生)
こんなときは中断・お休み!
臨月に運動するときは、体調次第で中断・お休みすることが大切で、無理は禁物です。ふらつく、お腹が張る、呼吸が荒くなる、出血するなど、体調に何らかの変化があったら運動はやめて、必要があればかかりつけの産科に連絡をしましょう。
スクワット中・後に破水したら?
スクワットをしている最中、またはその後に破水したら、出産予定の産科に連絡して状況を伝え、指示をもらいましょう。
すぐ産科に向かうことになったら、破水後は動くたびに羊水が流出するので、病院が徒歩圏外の場合は自家用車やタクシーで移動します。ナプキンを当て、車の座席にレジャーシート(またはビニール袋)とバスタオルを敷いて乗車しましょう。
関連記事 ▶︎破水とは?早期破水・前期破水の違い
まとめ


医学的に効果ありと証明されている陣痛を来させる方法は少ないものの、負荷の軽いスクワットやウオーキングなどの軽い有酸素運動の継続は、出産に備える体力づくりとして有効です。どのような運動を行う場合も体調と安全を最優先に考え、何か心配なことや不調を感じたら主治医に相談し、アドバイスを受けましょう。母子ともに健やかに出産を迎えられるよう、大事な臨月を快適にお過ごしください。
(文・構成:下平貴子/日本医療企画、監修:松峯美貴先生)
※画像はイメージです
[*1]高畑香織,分娩前7日間に妊婦が行った陣痛発来への取り組み:日本助産学会誌.29(2)p251-61,2015
[*2]日本産科婦人科学会「産婦人科診療ガイドライン―産科編2017」
(Boulvain, Stan, Irion, 2010; Kavanagh, Kelly, Thomas, 2005)
[*3]佐藤喜根子ほか,乳頭刺激による陣痛促進成功の1例:東北大学医療技術短期大学部紀要論文,7(1),p35-8,1998
宋美玄「妊娠・出産パーフェクトBOOK」(内外出版社)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます