
【医師監修】赤ちゃんにほくろができる原因は? がんの可能性と手術について
赤ちゃんを見ていると、以前はなかった「ほくろ」ができているのに気付くことがあります。それが少し大きくなったりすると、「がんでは?」と不安になるママもいるでしょう。そこで赤ちゃんのほくろとがんの関係や、子供のうちに美容目的で切除してもよいのかについて、ママのギモンにお答えします。
赤ちゃんのほくろはいつ、どうしてできる?


赤ちゃんの肌にできた黒や茶色のほくろ。もしかして皮膚の病気かも……と気にしているママもいるかもしれませんね。赤ちゃんのほくろも、大人のほくろ同様、多くは良性のものです。ただ、なかには注意したほうがいいものもあります。
そこで、ここではほくろの特徴と、どんなほくろに注意が必要なのかを解説。あわせて、見た目上、気になるからという理由で子供のほくろを切除しても問題ないのかという点についても、みていきたいと思います。
生まれる前にできるものも
医学的にいうほくろ(1.5cm以内のもの)の多くは生まれる前には存在せず、3〜4歳あたりからできてきます[*1]。一方で、生まれる前からできているもの(医学的には黒あざにあたる)は、「先天性色素性母斑」といいます。
ほくろの場合、その直径は0.5~0.6cmぐらいにとどまることが多い[*2, 3]ですが、先天性色素性母斑では直径が1.5cmを超えます。さらに直径20cmを超えるものもあり、それは「巨大先天性色素性母斑」と呼ばれています[*1]。
ほくろに似ている「表皮母斑」「扁平母斑」
ほくろと間違えやすい皮膚疾患に、「表皮母斑」や「扁平母斑」があります。
表皮母斑
皮膚にできた褐色の盛り上がったブツブツで、形はいびつです。近くの場所に複数できることもあります。先天性であることが多く、赤ちゃん(新生児)1,000人に1人程度の頻度でみられます[*4]。原因は不明ですが体の成長に伴って大きくなり、かゆみなどの症状が出ることもあります。
治療が必要な場合、外科手術やレーザーなどを行いますが、大きく切除すると傷あとが残ります。ただ、取り残しがあると再発することもあるので、大きさなどを考慮して治療法を決めていきます。
扁平母斑
カフェオレのような色をしたあざが皮膚の一部にできている状態で、生まれたときからあることがほとんどです(カフェオレ斑とも呼ばれます)。あざの大きさは数mm程度のものから10cm程度のものまでさまざまで、形も丸かったり、いびつだったりします。まれなものではなく、単発の扁平母斑は10人に一人ぐらいが持っているとされています[*1]。
なお、扁平母斑自体は良性のものですが、こういったあざが複数(6個以上)[*5]ある場合は別の病気が疑われますので、小児科、あるいは皮膚科で相談することをお勧めします。
扁平母斑の治療はレーザーが一般的で、特に子供の場合は有効性が高いことがわかっています。ただし、すべての扁平母斑に有効というわけではなく、1~2回のレーザーを照射しても再発するときは、手術など別の治療が検討されることもあります。
ほくろのがん「メラノーマ」の可能性もあるの?
赤ちゃんの場合、体の成長とともにほくろが大きくなることもあります。
そのため、赤ちゃんの成長を毎日みているママからしたら、「このほくろ、もしかして、がん……?」と不安に思うかもしれません。
そこで、ほくろのがん、メラノーマとはどんなものなのか、ふつうのほくろとの違いなども含めて説明していきます。
赤ちゃんや子供がかかることはまれ
メラノーマ(悪性黒色腫)は皮膚がんの一種で、ほくろを作る細胞が悪性化したものです。日本人にもっとも多いメラノーマは、手のひらや足の裏、手足の爪などに発生するタイプです。
一般的にメラノーマは、男女とも60歳以上で加齢とともに増えてくる病気で[*6]、赤ちゃんや子供がかかることは非常にまれとされています。
ふつうのほくろとメラノーマの違いは次の通りです。
こんなほくろがあったら要注意
・形がいびつで、左右が対称ではない
・皮膚とほくろの境目がくっきりせず、ギザギザしたり、にじんだりしている
・色の濃いところと薄いところがある。ところどころ色が白く抜けている
・ほくろの大きさが直径6mm以上
・急にほくろが大きくなり、色や形が変化してきた
(国立がん研究センターがん情報サービス「悪性黒色腫」[*6]を編集部で改変)
メラノーマと診断された場合の治療
さきほど紹介した通り、赤ちゃんや子供ではメラノーマの可能性はあまり心配しなくて大丈夫ですが、万が一、メラノーマと診断された場合に受ける治療などについても紹介しておきます。
皮膚がんであるメラノーマは、内臓にできたがんと違って目で確認することが可能です。
そこで、まず医師がほくろの状態を見て診察します。さらに詳しく状態を知るために、特殊なルーペを使って診察にあたります。
がんの深さや転移があるかどうかについては、超音波やCTなどの画像検査で調べます。
治療は進行度によって異なりますが、早期の場合は切除が基本です。ほくろだけでなく、少し余白(マージン)をとって切除します。切除した範囲が大きいときは同時に皮膚移植などを行います。
切除したがんは病理解剖を行い、本当にがんであったか、がんがしっかり取り切れていたかなどを確認します。
がんが周囲のリンパ節などに転移している場合は、抗がん剤や放射線を用いて治療を進めていきます。
メラノーマもほかのがんと同様、早期で見つかるほど生存率は高く、早期がんであるステージ1の5年相対生存率は9割近いことがわかっています[*6]。
大切なのは、早期発見・早期治療です。ほくろの変化は日々、観察しているからこそわかるもの。異変に気づいたらためらわずに小児科医や皮膚科医に相談をしましょう。
「見た目が気になる」という理由で取ってもいい?


メラノーマなど、皮膚の病気によるほくろでは、専門的な治療が必要になることも少なくありません。他方、こうした病気ではないものの見た目的に気になるほくろもありますよね。美容目的で赤ちゃんのほくろを切除しても大丈夫なのでしょうか。
治療法|除去手術やレーザー治療などがある
口元や目の周りなど、顔の目立つところに大きなほくろがある場合、子供の将来を考えて、今のうちに取っておいたほうがいいのではと悩んでいるママ・パパもいるかもしれません。
一般的にほくろの治療には、ほくろの周囲を円筒状にくりぬく手術や、炭酸ガスレーザーやQスイッチレーザー(超短パルスレーザー)などで焼き切る方法などがあります。
手術は1回ですみますが、切除したところが痕(あと)になりやすいデメリットがあります。対して、レーザー治療では、レーザーが黒いものに反応するという仕組みを利用してほくろを焼き切ります。傷あとが残りにくい利点はありますが、大きなサイズのほくろでは何回も治療を受ける必要があります。また、ほくろの盛り上がりは治らないともいわれます。
時期|体への負担なども考慮して決める
大人が医療機関でほくろ切除を受ける場合は、ほとんどが局所麻酔であり、日帰りで済みます。ところが小さい子供の場合、大人ほど治療は簡単ではありません。ほくろの状態や医療機関によっても異なりますが、全身麻酔で行い、入院が必要になることもあります。
赤ちゃんのほくろを切除する前に、まずそれが通常のほくろなのかどうか、別の病気の可能性がないかどうか調べる必要があります。調べてみて、そうした可能性がないことがわかった場合も、子供の体にかかる負担をよく考えたうえで決めることが望まれます。
もう少し成長してから、子供の希望を聞いたうえで切除するかどうかや時期を決める方法もあるでしょう。
手術を受けさせることを決めたら、治療法や入院の有無、治療によるリスクと予想される治療後の皮膚の状態などについて、しっかり確認しておくのを忘れないようにしましょう。
まとめ


赤ちゃんのほくろのほとんどは良性ですが、まれに治療が必要なものもあります。形や大きさに異常がみられたら、できるだけ早くかかりつけの小児科医に相談を。
目立つところにあるほくろを美容目的で取ることについては、慎重に考えたほうがいいかもしれません。本当に切除が必要なのか、いま切除する必要があるのかなど、家族や医療機関でよく相談した上で決めるようにしましょう。
(文:山内リカ/監修:大越陽一先生)
※画像はイメージです
[*1]清水宏:あたらしい皮膚科学第3版、376、377p、389p、中山書店、2019
[*2]日本皮膚科学会 皮膚科Q&A
[*3]東京女子医科大学東医療センター ほくろの説明
[*4]日本形成外科学会:脂線母斑・表皮母斑
[*5]厚労省 指定難病 34 神経線維腫症
[*6]国立がん研究センターがん情報サービス 悪性黒色腫
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます