
【医師監修】離乳食アレルギーで出る症状は? 口の周りが赤い……よだれかぶれとの見分け方は?
離乳食を進める時、赤ちゃんに食物アレルギーがあるかどうかは気になりますよね。口の周囲に何か症状が出た時は、食物アレルギーを疑ったほうが良いのでしょうか? ここでは食物アレルギーの症状やよだれかぶれとの違い、離乳食をあげる時の注意点などについて説明します。
- 離乳食で起きることもあるアレルギー
- アレルギーってそもそもどんな状態?
- アレルギーに要注意な離乳食の食材
- 口の周りが赤いのは離乳食によるアレルギー?
- 食べ物のアレルギーで口の周りが赤くなることも
- よだれや食物にかぶれて似た症状が出ることもある
- アレルギーとかぶれの見分け方
- アレルギーが疑われるときは病院に行くべき? 受診の目安は?
- アナフィラキシーが疑われる場合は119番
- 軽い症状でも早めに病院を受診
- 何を食べたかのメモも用意
- 離乳食によるアレルギーの予防と対策
- 初めての食材はひと口から始めて様子をみる
- 初めての食材を食べさせるのは病院が開いている時間帯に
- 口の周りの症状以外にも注意する
- 食べてからしばらくは様子を観察する
- まとめ
離乳食で起きることもあるアレルギー

離乳食をあげる時、初めての食材は「食物アレルギー」に注意が必要ですが、そもそも「アレルギー」とはどういうものなのでしょうか? また、とくに注意が必要な食材にはどんなものがあるのでしょうか?
アレルギーってそもそもどんな状態?
アレルギーとは、「免疫が過剰に反応することで起こる病気」です。
免疫は、細菌やウイルスなどの病原体や異物が体内に入ってきた時に、それらから体を守ろうとする機能のことです。
ところが、本来は体に悪い影響を起こさない食べ物や花粉、ハウスダストなどに対しても、免疫機能が過剰に反応することがあるのです。それがアレルギーです。
アレルギーに要注意な離乳食の食材
食物によって引き起こされるアレルギーを「食物アレルギー」と言います。
食物アレルギーを引き起こす代表的な食材には、「卵」「牛乳」「小麦」があげられます。特に卵が原因となるケースはもっとも多く、食物アレルギーのある乳児の半分以上は卵アレルギーと言われています[*1]。
その他にも、魚介類、エビやカニなどの甲殻類、大豆、そば、キウイやメロンなどの果物、ピーナッツなどのナッツ類、イクラなどの魚卵もしばしば食物アレルギーを引き起こします。
赤ちゃんの食物アレルギーについてより詳しくは、下記の記事を参照してください。
口の周りが赤いのは離乳食によるアレルギー?

離乳食をあげている赤ちゃんの口の周りが赤くなったら、「食物アレルギーかも?」と心配になってしまいますよね。口周りが赤くなることは、食物アレルギーと関係があるのでしょうか? 食物アレルギーのよくある症状とともに解説します。
食べ物のアレルギーで口の周りが赤くなることも
食物アレルギーの症状の中でも一番よく見られるのが、「皮膚の症状」と言われています。実際に、3歳児の食物アレルギーでは9割以上に皮膚症状が見られています[*2]。
食物アレルギーの皮膚症状では、かゆみの出ることが多く、かゆすぎて眠れずツラい場合も珍しくありません。発疹が出て数時間で消える「じんましん」、皮膚の赤み、湿疹も代表的な皮膚症状です。
こうした食物アレルギーの皮膚症状は口の周りに出ることもあります。また、口の近くではくちびるの腫れや口の中の違和感もよくある症状です。
食物アレルギーで起こりうる皮膚以外の症状
食物アレルギーでは、ほかに、目のかゆみ、充血、まぶたの腫れといった目の症状や腹痛、吐き気、下痢といった消化器症状、声のかすれや咳、呼吸困難、くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど、呼吸器の症状もしばしば起こります。
また、食物アレルギーでは「アナフィラキシー」も起こります。アナフィラキシーは、皮膚・粘膜症状、呼吸器系症状、消化器系症状、循環器症状(血圧低下、意識障害)などの複数のアレルギー症状が同時に起こる重篤な状態で、これは命に関わることもあるほど危険です。
よだれや食物にかぶれて似た症状が出ることもある
ただし、口の周りが赤くなるのはすべて食物アレルギーのせい、というわけではありません。何か肌にとって刺激となるものに「かぶれる」ことで、口の周りが赤くなることもあります。これは「接触皮膚炎」と呼ばれるものです。接触皮膚炎でも、かゆみや赤み、湿疹、ぶつぶつ、水ぶくれなどの症状が出ます。
赤ちゃんの皮膚は非常に薄く、特に新生児の皮膚は大人の半分くらいしかありません。さらに新生児期を過ぎたころには皮脂の分泌量が少なくなり、外からの刺激に弱くなるのでかぶれやすくなります。赤ちゃんでよくあるのが、よだれや食べ物による口の周囲のかぶれや、おしっこ・うんちによるおむつかぶれです。
口周りのかぶれは、離乳食が始まる乳児期の後半から2歳ごろまでによく見られます。これはよだれの多い月齢に当たります。よだれかぶれについてより詳しいことは、下記の記事を参照してください。
アレルギーとかぶれの見分け方
食物やよだれによるかぶれと食物アレルギーの症状は、実は素人にはなかなか見分けにくいものです。赤ちゃんの肌症状の原因は、専門家でも簡単には特定できないことがあるほど見分けるのが難しいのです。
また、大人の場合でも、食物アレルギーかどうかを自己判断するのは難しいとされています。食物経口負荷試験などの正しい診断基準を通して実際に食物アレルギーであると診断される人は、自己判断でそう考えていた人の一部でしかないそうです。
ママやパパが自己流で判断するのは避け、肌の赤みが続く、かゆみがありそう、症状がひどいなどの場合は、かかりつけの小児科か皮膚科で診察を受けましょう。
アレルギーが疑われるときは病院に行くべき? 受診の目安は?

食物アレルギーかもしれないと感じたら、どのタイミングで受診すればいいのでしょうか?
アナフィラキシーが疑われる場合は119番
アナフィラキシーが疑われる場合は、「必ず救急受診」しましょう。アナフィラキシーでは下記のようなもののうち、複数の症状が出ます。
アナフィラキシーの症状(以下のうち複数)
●ぐったりしている、または意識がない
●呼吸がゼイゼイしている、または連続した咳をしている
●お腹が痛そうだったり、おう吐がある
●じんましんや赤みなど皮膚に異常がある
これらの症状が複数起こり、急激に進行するのがアナフィラキシーの特徴です。放置すると命が危険にさらされることもあるため、こういった症状が複数見られたら119番にすぐ電話してください。
軽い症状でも早めに病院を受診
次のような症状が単独で出た場合も、できるだけ早く受診しましょう。
すぐに受診
●かゆがって身体をかく
●顔やお腹などにじんましんが出ている
●顔が腫れた
●目や口のまわりが赤い
●下痢をしている
●吐き気がある、またはおう吐している
●肩を上下させて息をしている、呼吸が早い
●かゆがって口をしきりに動かしている
●不機嫌な状態が続いている
外から見た症状をチェックするのはもちろん、赤ちゃんの様子に違和感を覚えたら「服を脱がせて全身の状態も確認する」ことが大切です。
何を食べたかのメモも用意
受診する前に「赤ちゃんがその日、何を食べたか」を書き出したメモがあると、診断の手がかりになることがあります。余裕があれば、食べたものをメモにリストアップして、診察の時に医師に見せるのがおすすめです。
離乳食によるアレルギーの予防と対策

食物アレルギーが発症した時のことを考えて、離乳食を進める時には次の点に気を付けましょう。
初めての食材はひと口から始めて様子をみる
初めての食材は、まず「ひと口だけ」あげてみて様子をみましょう。ここまでであげた症状が起こったら、必ず病院で診てもらってくださいね。食物アレルギーの症状が見られない場合は、徐々に食べる量を増やしていって問題ありません。
なお、毎日1食品だけ増やしていると、なかなか食べられるものが増やせません。そのため、3大アレルゲンである「卵、牛乳、小麦」やその他にも食物アレルギーの原因になりやすい「魚介類、甲殻類、大豆、そば、キウイやメロンなどの果物、ピーナッツ、魚卵」以外の食べ物なら、1日に2~3品同時にあげてもいいでしょう
初めての食材を食べさせるのは病院が開いている時間帯に
食物アレルギーが心配な食材や初めてあげるものは、「かかりつけの小児科が開いている時間帯」にあげるようにしましょう。そうすれば、万が一食物アレルギーを起こしたとしても、すぐに病院を受診することができます。
ちなみに、離乳食を始める前にアレルギー検査を受けても、実際に食べさせてみなければその食物でアレルギーを起こすかどうかはわかりません。検査でたとえ数値が高く出ても実際は食べても問題ないことが結構あり、検査数値だけに従って避けていくと過剰除去になってしまうことが多いのです。また、小さな子は免疫がまだ安定していないこともあって、離乳食にアレルギーがあるかどうか前もって知るためのアレルギー検査は勧められません。
ただし、症状がひどく、続いているような場合は、赤ちゃんでも食物アレルギーの血液検査を受けることはあります。また、赤ちゃんがアトピー性皮膚炎と診断されていたり、家族の中に深刻な食物アレルギーの患者さんがいる場合も、離乳食を始める前にかかりつけの小児科であらかじめ相談しておくと安心です。
口の周りの症状以外にも注意する
食物アレルギーの症状は、口の周りのブツブツや赤みだけではありません。すでに解説したとおり、不機嫌な状態が続いたり、吐いたり、下痢をしたり、呼吸が苦しそうになるなど、様々な症状が考えられます。
離乳食を与えたあと赤ちゃんの様子に違和感を覚えたら、外から見るだけでなく服も脱がせて全身の状態を確認してみましょう。もし食物アレルギーを疑う症状が見つかったら、必ずかかりつけの小児科などを受診してください。
食べてからしばらくは様子を観察する
食物アレルギーのほとんどの症状は食事の1~2時間後、遅くても3時間以内に症状が出ます[*3]。
食後すぐに症状が出ないこともあるので、食べた後はしばらく赤ちゃんの様子に注意しておきましょう。
まとめ

食物アレルギーは、卵、牛乳、小麦などがおもな原因ですが、ほかにも様々な食材によって起こります。口の周りを含め皮膚の症状がもっともよく起こりますが、その他の症状が出ることもあります。赤ちゃんの場合は食物やよだれによる口周りのかぶれも多いものですが、ママやパパが自己判断するのではなく、症状が続く場合は一度専門家に診てもらってくださいね。
なお、アナフィラキシーが疑われる症状が出た時は、119番で救急受診しましょう。また、食物アレルギーを起こした時のことを考えて、離乳食で初めて食べるものは病院の開いている時間帯にあげましょう。まずはひと口だけあげて、食後3時間くらいは赤ちゃんの様子を見ます。様子がおかしいと感じたら、全身をくまなくチェックしてください。
ただ、食物アレルギーは心配なものの、離乳食を進めていくことも大切です。食物アレルギーの原因となりやすい食材でなければ、1日に2~3種類ずつ食べさせてもいいでしょう。赤ちゃんの様子を注意深く見ながら、少しずつ食べられる食材を増やして、楽しい食事の時間にしてあげてくださいね。
(文:大崎典子/監修:丘逸宏先生)
※画像はイメージです
[*1]日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会「食物アレルギー診療ガイドライン2016」ダイジェスト版
[*2]東京都福祉保健局:東京都アレルギー情報navi. 食物アレルギー
[*3]森戸やすみ:小児科医ママの子どもの病気とホームケアBOOK, 60p, 内外出版社, 2018
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます