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2021年06月13日 16:15 更新

【医師監修】生理で眠いときは寝た方がいい? 適切な対処法とは

生理中、ものすごく眠たくなるときってありますよね。仕事や家事、育児でそうそう眠れない場合も、こういう眠気は寝ないと解消しないのでしょうか。なぜ生理のときは眠くなるのか、昼間に眠気が来るのを防ぐ方法や眠る以外の対処法も紹介します。

生理中に眠いと感じる女性は多い

ソファであくびをする女性

生理(月経)前や生理中にとても眠くなる女性は多いものです。

41%の女性が生理に関連して睡眠に変化があり、そのうち「生理前になると日中強い眠気に悩まされる人」は43%、「生理中に強い眠気が出る人」は51%、反対に「生理前になると眠れなくなる人」は1%、「生理中に眠れなくなる人」は5%だったと報告している調査もあります[*1]。

生理前や生理中にこうした症状が現れるのは、いったいなぜなのでしょうか。

生理中に眠い・だるいのはホルモンの変化の影響

生理が来て次の生理が来るまでの1サイクルを「生理周期」と呼びます。この中で女性の体内では「エストロゲン(卵胞ホルモン)」と「プロゲステロン(黄体ホルモン)」という女性ホルモンの分泌量が大きく変化しています。この変化は生理周期のたびに繰り返されています。

生理周期と女性ホルモンの変動イメージ(1サイクル28日の人の場合)
生理周期と女性ホルモンの変動イメージ(1サイクル28日の人の場合)

この生理周期の中での女性ホルモンの変化が、女性の睡眠に影響すると言われているのです[*2]。

女性ホルモンの変化で睡眠サイクルが乱れる

くわしいメカニズムはまだはっきり解明されてはいないものの、女性ホルモンの変化は、睡眠に関わりの深いホルモンである「メラトニン」の分泌に影響を与える可能性があるとわかっています。

メラトニンの分泌は脳の視床下部にある「体内時計」によって調節されていますが、「昼間に少なく、夜は昼間の十数倍に増える」という特徴があり、脳から血流によって体内をめぐることで時間の情報を他の器官に伝えています。これによって、約24時間の周期で体内のさまざまな働きが調節される「概日リズム」が生み出されます。

睡眠のサイクルもこの概日リズムに従っていますが、女性ホルモンの変化によりメラトニン分泌量が乱れると、昼夜の眠気のコントロールがうまくいかなくなってしまうのです。実際、健康な成人女性で調べたところ、「生理前である黄体期には卵胞期に比べメラトニンの分泌量が少なかった」という報告があります[*1]。

つまり、女性ホルモンの変化によって「時差ぼけ」に似た状態になり、日中も眠くて仕方がないという症状が現れると考えられます。

プロゲステロンによる体温上昇で寝付きにくくなる

また、女性ホルモンの1つである「プロゲステロン」の分泌量が多くなることも睡眠に影響します。眠気は脳の温度が低下するときに現れやすいのですが、プロゲステロンには「体温を上昇させる働き」があり、脳の温度低下を妨げることで、眠気が起こるのを邪魔する可能性があるのです。

これにより適切な時間帯に入眠できないと、睡眠不足になり、昼間に眠気を感じるかもしれません。

プロゲステロン自体が眠気を起こしている可能性も

プロゲステロンには体温上昇のほかに、脳の神経伝達物質であるGABAに働きかけて眠気を引き起こす可能性もあると言われています。

生理中に眠いときはとにかく寝た方がいい?

ソファで寝る女性

このように女性ホルモンの影響で生理中は眠気が強くなっても仕方がない状況にあるのですが、こういう場合はとにかく寝て解消するしかないのでしょうか。

昼間に20分ほど仮眠をとるのは有効

昼間の眠気を軽くするのに、適度な仮眠をとるのは有効です。ただ、あまり寝すぎると起きたあともかえって眠気が続くこともあるので、短すぎず長すぎない時間の仮眠にする必要があります。理想的な仮眠の長さは「10~20分」程度と言われています[*3]。

夜はしっかり寝る対策を

昼間、眠くなるのを防ぐためには、やはり夜十分に眠っておく必要があります。成人の場合、推奨される睡眠時間は「7〜9時間」です[*4]。

ただ、女性の場合はさきほど解説したように女性ホルモンの影響で睡眠のサイクルが乱れがちで不眠症になる人も多く、男性よりさらに長い睡眠が必要といわれることもあります。

毎日忙しすぎて、なかなか十分な睡眠時間を確保するのが難しいという人も、可能な範囲で長く眠れるよう工夫するのは大切です。後半で解説する「普段の生活でできる対策」を参考に、生理ではないときから良質で十分な睡眠がとれるようにできるだけ努力しましょう。

寝だめは症状が悪化することも

寝だめで日中の眠気を防ごうとするのはお勧めできません。なぜなら、女性ホルモンの変化が引き起こした「時差ぼけ」のような状態を悪化させる可能性があるからです。

睡眠のサイクルを作り出す概日リズムは、脳の視床下部にある「体内時計」によってコントロールされています。この体内時計の1日の長さは人によって多少異なることがわかっていますが、平均で「24時間より少し長く」なっています。

体内時計が24時間より長いと、「夜更かしは楽にできるのに早起きは難しい」、つまり生活時間がどんどん後ろにずれやすいのです。ただ、このずれを正すために、体内時計は毎日時刻合わせ(リセット)が行われています。

このずれのリセット方法でもっとも強力なのが「光を浴びること」です。寝だめで光を浴びることがないと、睡眠のサイクルがますますずれてしまっても不思議ではありません。昼間はできるだけ活動し日光を浴びて、このずれを「こまめにリセットする」ことで体内時計が整えば、昼間の眠気も軽減するでしょう。

眠る以外の対処法

生理による眠気対策でも、さきほど解説したようにまず睡眠のサイクルを整えるのが大切ですが、いままさに眠気がひどく、どうにかしたいというときに試してみたい方法を紹介します。

光を浴びる

カーテンの前で朝日を浴びる女性

日中に光を浴びるのが毎日の睡眠サイクルの調節で大切なのは、「メラトニンの分泌を抑える働き」があるからです。メラトニンには眠気を起こす作用があるので、この分泌が抑えられれば眠気の解消につながるでしょう。

とくに「起床直後の光」は最も効果的と言われています。生理中、眠かったりだるかったりして朝起きるのが辛いときも、少し頑張ってまずカーテンを開け、自然光を十分に浴びてみましょう。その後の眠気の軽減に役立つかもしれません。

カフェインを上手に摂る

カフェインは、このあと解説しますが、摂り過ぎたり、摂取する時間帯によっては睡眠に悪影響を及ぼす可能性があります。ただ、カフェインは脳の睡眠中枢で眠気を引き起こす「アデノシン」という物質の働きを邪魔するので、「上手に摂取すれば昼間の眠気を軽くする」のに役立ちます。

強烈な眠気を解消するのに、コーヒーなどをたくさん飲んでとにかくカフェインを摂取する、というのはやりがちな対処法ですが、この方法はそのときの眠気はなんとかできても、健康的な睡眠サイクルの定着には逆効果。「上手なカフェインの摂取方法」は次の章で解説します。

ガムを噛む

チューイングガムなどを「よく噛む」と、脳を目覚めさせ、その動きを活性化させることができます。眠くて仕方がないとき、これも試してみたい対処法です。

その他、部屋の換気をして新鮮な空気を吸ったり、ストレッチで気分転換する、顔を洗う、ミントなどの気分がすっきりする香りをかぐなどの方法も試してみましょう。

普段の生活でできる対策

生理中はただでさえ眠くなるものですが、もともと夜十分に睡眠がとれていない状態ではますますひどい眠気を感じることも。生理中に眠くなるのを少しでも軽くするために、普段から何に気を付ければ良いのでしょうか。

適度な運動習慣をつける

公園でウォーキングをする女性

「普段から運動する習慣のある人は、睡眠の問題が起こりにくい」と言われているのでできるだけ毎日体を動かすようにしましょう。

おすすめは「ウォーキング」や「水中エアロビクス」「サイクリング」といった「有酸素運動」です。1回だけでは効果は薄いのですが、習慣づけることで睡眠の質を改善し、昼間の過度な眠気を軽くすると言われています。

夕方~夜にかけての運動が効果的

なお、より良い睡眠のために運動するなら、「夕方~夜(就寝の3時間くらい前)」にするのが効果的と言われています[*5]。就寝の数時間前に運動によって脳の温度が一時的に上がると、運動なしのときに比べて寝入るまでの脳の温度の低下量が大きくなり、入眠しやすくなるのです。ただ、就寝直前に運動すると体が興奮し、逆効果になるので注意してください。

寝る2~3時間前に入浴をする

「お風呂に入る」こともより良い睡眠に役立ちます。運動同様、体温を一時的に上げるので、その後、脳の温度が下がっていくときに眠気を感じやすくなるからです。

入浴も就寝直前ではなく、寝る2~3時間前に済ませておくことで、スムーズに寝入ることができ、かつ深い睡眠をとるのに役立つと言われています[*5]。

寝る前のスマホをやめる

ベッドでスマホを見る女性

スマホなどの電子機器は、メラトニンの分泌を妨げる「ブルーライト」を発するので、夜使用するのは避けましょう。

忘れないよう、「寝る2~3時間前」[*6]にアラームをセットしておき、それ以降は触らないようルールを決めておいたり、「おやすみモード」や「休止時間の設定」を活用すると良いですね。

カフェインの摂り方に注意する

カフェインは上手に摂ると昼間の眠気を紛らわすのに役立ちますが、摂り方によっては「睡眠に悪影響を及ぼす」こともあります。

カフェインは体に入ると代謝され、やがて体外に排出されますが、この時間は思いのほか長いのです。個人差は大きいのですが、摂取したカフェインが半分になるまでには、なんと「通常4~6時間」かかると言われています[*7]。

寝るときにカフェインが体内に残っていると、「なかなか寝付けない」「睡眠時間が短くなる」「寝足りないと感じる」などの事態を引き起こす可能性があります。睡眠を改善したい人は、カフェインを摂る際、「コーヒーなら多くても1日マグカップおよそ3杯(カフェイン400mg)まで」「就寝の6時間前までに飲む」ことに気を付けてみましょう[*7]。

生理前から続く場合は婦人科で相談してみる

生理中のひどい眠気が生理の前から続いている場合は、「月経前症候群(PMS)」による眠気や睡眠障害の可能性もあります。

この場合は、「低用量ピル」や「体質に合った漢方薬」で改善することもあるので、思い当たる人は婦人科で相談してみましょう。

まとめ

睡眠中の女性

生理で眠いときは寝たほうがいいのか、寝るときの注意点、寝る以外の対処法、普段からできる睡眠改善法を紹介しました。生理中に限らず、昼間眠くなってしまう人はまず夜間に十分な睡眠がとれるよう工夫してみてほしいのですが、夜きちんと眠れていても生理前や生理中に眠気を覚えるのはよくあることです。ここで紹介した対策を試してみてもあまり効果がみられない場合は、あまり一人で抱え込まず医療機関を受診してくださいね。

(文:マイナビ子育て編集部/監修:窪麻由美先生)

※画像はイメージです

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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