【助産師監修】授乳中にキムチを食べてもいい?母乳が変わる!?
食欲をそそる味と香りが魅力のキムチですが、授乳中に食べてもいいものなのでしょうか。実際に「キムチを食べたせいで母乳が辛くなったらどうしよう」と心配するママもいるようです。今回は授乳中のキムチについて、助産師でラクテーションコンサルタントの坂田陽子先生に解説いただきます。
授乳中にキムチは食べていい?
妊娠中はお腹の赤ちゃんへの影響などを考え、避けたほうがいい飲食物がいくつかありましたね。一方、産後に気になるのは母乳への影響です。ちょっと刺激的な風味のキムチは授乳中に食べても問題ないのでしょうか。
授乳中にキムチを食べてOK
結論からお伝えすると、授乳中のママでもキムチを食べて大丈夫です。
母乳はママの血液から作られますが、食べたキムチがそのまま母乳として出るわけではありません。もちろん「母乳が辛くなる」なんてこともありませんので、食べすぎにならない程度に楽しむ分にはなんら問題ないでしょう。
乳腺炎の原因になることもない
授乳中の食べ物のことでまず気になるのが母乳への影響ですが、よく質問されるのが「○○を食べたら乳腺炎になりやすくなることはありますか?」ということです。
キムチと乳腺炎は直接関係なし
まず、キムチを食べることで乳腺炎になりやすくなるということはないでしょう。
母乳の通り道である乳管が詰まるなどして、おっぱい(乳房)の中に母乳が長い間溜まったままになっていると、乳腺炎が引き起こされやすくなります。乳管の詰まりは、「何を食べたか」よりも「赤ちゃんがちゃんと母乳を飲み取っているか」の方が大きく影響しています。
乳腺炎の心配があるママは、授乳時の抱き方・姿勢(ポジショニング)と乳首への吸い付き方(ラッチオン)が適切かどうかを見直すといいでしょう。
授乳時のポジショニング・ラッチオンについては以下の記事も参考にしてください。
▶写真で学ぶ授乳姿勢!パターン別授乳姿勢と4つのポイント
▶授乳姿勢(ポジショニング)の見直す
▶くわえさせ方(ラッチオン)を見直す
キムチを食べると母乳のにおいが変わる?
ママがキムチを食べることで母乳が辛くなったり乳腺炎になったりすることはないですが、全く母乳が変わらないかというと、そうでもないようです。
食べたもので母乳のにおいが変わることもある
母乳のにおいとママが食べたものの関係に関して興味深いデータがあります。ドイツにある大学(FAU)の食品化学者が行った研究で、平均2時間半前にニンニクを食べた母親の母乳からニンニクのにおいが確認されたのです[*1] 。キムチにもニンニクが入っているので、もしかしたらキムチを食べた後の母乳はほんのりニンニクのにおいがするかもしれません。
このにおいを赤ちゃんが必ずしも嫌がるわけではなく、かえって喜んで飲む赤ちゃんもいるとか。母乳を通じてママの食べたもののにおいに出会えるということですね。
赤ちゃんがおっぱいを嫌がったらキムチが原因?
ママが食べたもののにおいのせいで赤ちゃんが母乳を飲むことを嫌がる可能性はゼロではありませんが、それ以外にも母乳を拒否する原因として考えられることはたくさんあります。
母乳が出る勢いが強すぎて飲みにくかったり、乳頭混乱でママの乳首を嫌がったりということも珍しくないのです。また、乳腺炎の時は母乳の塩味が増えるので、味の変化を感じて嫌がる赤ちゃんもいるかもしれません。
赤ちゃんが嫌がったらほかの理由も考えてみて
授乳中にキムチを積極的に食べる必要は特にありませんが、授乳中であることを理由に特定の食品を避ける必要もありません。赤ちゃんが授乳を嫌がる様子が見られたら、食べた物だけでなく、そのほかの理由に関しても考えてみましょう。
赤ちゃんが母乳を飲まない時の原因については以下の記事で詳しく解説しています。
▶母乳を飲まないのはなぜ?哺乳拒否?考えられる原因と対策
授乳中のキムチ、食べすぎには注意
ここまで授乳中のキムチについて、母乳への影響や乳腺炎との関係について解説してきました。最後に、授乳中のママがキムチを食べる量についてお伝えします。キムチを含めいろんな食品を偏りなく食べて、ママも赤ちゃんも健やかに生活してくださいね。
カプサイシンには胃粘膜保護効果も
キムチには唐辛子が入っていますが、唐辛子に含まれる「カプサイシン」という成分はご存知の方も多いのではないでしょうか。
この成分は、少量であれば胃の粘膜を保護する作用が働くとされています[*2]。また、適度に胃を刺激してくれるので、食欲もわいてきます[*3]。「いまいち食欲がないな」という時、ごはんにキムチをちょっと添えてみるのもいいかもしれませんね。
食べすぎると逆効果に
唐辛子を口にすると舌がヒリヒリするような辛みを感じますよね。これもカプサイシンの作用で、実は肛門に近い直腸にはこれを感じる受容体が多く存在します[*2]。妊娠出産の影響や便秘などで痔になってしまったママもいるかと思いますが、カプサイシンをとりすぎると粘膜を傷つけてしまうことがあります。痔など不安があるときは唐辛子などの刺激物は控えめにしましょう。
また、カプサイシンの胃粘膜保護作用に関しても、大量に摂りすぎることで保護作用がなくなるとの報告もあります。キムチは塩分も多めなので、いずれにせよ食べすぎはいけませんね。
まとめ
赤ちゃんに母乳をあげていると、「自分が食べるものも注意しなければいけない」と意識するようになりますね。それはとてもいいことで、授乳期も栄養をバランスよくしっかり摂ることが必要です。一方で避けなければならない飲食物は少なく、キムチに関しても食べて問題ありません。ただし、食べすぎには注意しましょう。育児で忙しい毎日かと思いますが、ママも食事を楽しんでくださいね。
(文:マイナビ子育て編集部/監修:坂田陽子 先生)
※画像はイメージです
[*1]FAU「Knoblaucharoma in Muttermilch nachgewiesen“Stoffwechselprodukt AMS verantwortlich für typischen Geruch”」
[*2]農林水産省「カプサイシンに関する詳細情報」
[*3]農林水産省「カプサイシンに関する情報」
水野克己「これでナットク 母乳育児」(へるす出版)p.82-3
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます