【専門家解説】初めてのベビーサイン12種類|おすすめな理由や注意点
当たり前ですが赤ちゃんは最初、言葉を話せません。ママやパパの中には「言葉が通じない時期、どうやって理解すればいいの?」と思っている人もいるのではないでしょうか。ベビーサインは、言葉がまだの赤ちゃんと会話ができる画期的な方法です。今回はそのベビーサインについて、日本ベビーサイン協会の吉中みちるさんに解説していただきます。
- ベビーサインってなに? いつからできる?
- いつ頃から始めるといい? いつまでに始めればいい?
- 楽しく実践する方法は?
- どれくらいベビーサインが使えるようになるの?
- ベビーサインをやるとどんないいことがあるの?
- 我が子の「できた!」の瞬間が増え、親子の絆が深まる
- 育児ストレスが減る
- パパもママも「育児力」がアップする
- 自己肯定感が育つ
- 言語の習得のサポートになる
- 絵本好きになる
- ベビーサインをやる際に気をつけることは?
- 「気づいてくれるといいな」ぐらいのスタンスで
- ベビーサインはすべてがわかる魔法ではない
- 教えていくベビーサインは赤ちゃん目線で選ぼう
- 赤ちゃんの様子を見ながら進める
- 最初にトライしたいベビーサイン12選
- ①おっぱい・ミルク ②飲む
- ③食べる ④もっと
- ⑤おしまい ⑥替える
- ⑦お風呂 ⑧ねんね
- ⑨電気 ⑩痛い
- ⑪聞こえる ⑫鳥
- まとめ
ベビーサインってなに? いつからできる?
ベビーサインとは、まだおしゃべりできない赤ちゃんとママ・パパなど大人が、日本手話やアメリカ手話、ジェスチャーを使って「会話」をする方法です。1990年代にアメリカで話題となり、日本では2000年以降になってから普及し始めました。
まずは、ベビーサインを始めるのに最適な時期、楽しい教え方などをレクチャーしましょう。
いつ頃から始めるといい? いつまでに始めればいい?
「〇ヶ月以上でないと始められない」という線引きはありませんが、生後6ヶ月以降から始めるのがいいといわれています。なぜならおすわりができるようになる生後6ヶ月月頃は、体を動かしやすくなり、さらにママやパパが何かしたことに対して反応することができるようになるからです。
もちろんねんねの頃からやってもOK。赤ちゃん自身がサインを返すのは難しいですが、耳と目からじっくり覚えることはできます。
また、年齢の上限も特にありません。1歳をすぎて自我が出てきたけれど、言葉でコミュニケーションをするのがまだ難しいことって、ありますよね。そんな時もベビーサインでコミュニケーションがとれると、親子間でのストレスが減って、笑顔が増えますね。
楽しく実践する方法は?
語りかけるときに、一緒にベビーサインをしましょう。たとえば抱っこする前に子どもの前で手を広げながら「抱っこしてほしいの?」と聞くだけでOKです。また花や鳥など、赤ちゃんの興味のあるものからサインをみせてあげるのも、いいでしょう。これをくり返し行うことで、赤ちゃんはサインを習得していきます。
「さぁ、今からベビーサインを覚える時間よ!」とあらたまって時間をとって覚えさせる必要はありません。
どれくらいベビーサインが使えるようになるの?
2015年に日本ベビーサイン協会が実施したアンケート調査の結果によると、ベビーサイン教室の卒業生ができるようになったベビーサインの平均は約77個です。ただ、これはあくまでも目安。習得数やかかる時間は個人差があると考えておくといいでしょう
ベビーサインをやるとどんないいことがあるの?
ベビーサインで会話ができるようになると、どんないいことがあるのでしょうか。
我が子の「できた!」の瞬間が増え、親子の絆が深まる
ベビーサインのない普段の育児でも赤ちゃんが「バイバイ」や「こんにちは」のジェスチャーができるようになるだけで、親はとてもうれしいものですね。
ベビーサインをしているとそんな喜びが毎日どんどん増えます。
そして、それを使って家族でコミュニケーションをするようになるので、お互いのことをよりわかりあえるようになり、我が子を愛おしいと思う瞬間がとても増え、自然と絆が深まります。
育児ストレスが減る
「おっぱいじゃなくて水が飲みたい」など、サインを通して赤ちゃんの気持ちや要求がわかるので、「いったいどうしたいの?!」と親がイライラする回数が減ります。
赤ちゃんもただ、泣いたりグズったりするだけでなく、明確に自分の思いを伝えることができるので、泣かずに過ごす時間が長くなることもあります。
パパもママも「育児力」がアップする
赤ちゃんに声がけしても一方通行でなく「会話」ができるようになります。そうすると赤ちゃんと一緒にいる時間が楽しくなり、育児に自信が持てるようになります。
また、普段はあまり赤ちゃんと接する時間が少ないようなパパも、サインを通して赤ちゃんの伝えたいことがわかるので、2人きりになっても大丈夫! ママもパパに育児を任せて気分転換できます。
自己肯定感が育つ
手の動きを使って明確に自分の思いや欲求が伝えられ、そして伝わることをたくさん体験します。こんな日々の繰り返しの中から、赤ちゃんの自己肯定感がはぐくまれていきます。
言語の習得のサポートになる
ベビーサインと言葉の関係について調べたものでは、1989年アメリカで行われたベビーサイン育児の調査[*1]があります。
140人の生後11ヶ月の赤ちゃんを「ベビーサインを積極的に教えるグループ」「何もしないグループ」「積極的に話しかけるグループ」の3つに分類し、言葉を聴く力と話言葉の習得度のテストを定期的に行ったところ、ベビーサインを積極的に教えたグループの赤ちゃんがいずれの段階でもテストの平均値のスコアがよかったという結果が得られました。
絵本好きになる
ベビーサイン協会のデータによると、ベビーサインを学んだ子の91%が絵本好きという結果があります[*2]。
絵本の中にはワクワクドキドキするお話や、大好きな食べ物、動物、乗り物が登場します。絵本を読んでもらいながら、自分の興味があることをベビーサインで伝える事ができるのは赤ちゃん達にとって、大きな喜びです。また、一方的に読み聞かせをするよりも、赤ちゃんがベビーサインでお話に参加してくれる読み聞かせは、親にとっても何倍も楽しい時間になりますね。こういった相乗効果で自然と絵本が大好きなお子さんが増えるのでしょう。
ベビーサインをやる際に気をつけることは?
赤ちゃんと「会話」を楽しめるベビーサイン。楽しく実践するためのコツ・注意点をご紹介します。
「気づいてくれるといいな」ぐらいのスタンスで
「さあ、ベビーサイン教えるぞ!」と頑張りすぎると、パパ・ママのお顔もこわばって楽しくないですね。普段の語りかけに手を添えて、いつか赤ちゃんが気づいてくれると楽しいだろうな~ぐらいのスタンスがストレスフリーのコツです。肩の力を抜いたスタートがお勧めですよ。
ベビーサインはすべてがわかる魔法ではない
ベビーサインを覚えた=赤ちゃんの言いたいことがなんでもわかる……というわけではありません。
赤ちゃんが使える限られた数のベビーサインでは伝わらないこともありますし、ご機嫌が悪いときにはそもそも何をしてもダメなこともあります。普段から「今、どうして欲しいのかな?」「何がしたいのかな?」という目線で子育てをしながら、ベビーサインを取り入れてみてくださいね。
教えていくベビーサインは赤ちゃん目線で選ぼう
普段よく目にするもの、赤ちゃんが興味のあること、好きなものから教えていくベビーサインを選びましょう。赤ちゃんが使ってくれる姿を想像すると、赤ちゃんにみせるベビーサインを選びやすくなりますよ。
赤ちゃんの様子を見ながら進める
赤ちゃんが疲れている時や眠い時にやっても、そもそもベビーサインを見てくれません。赤ちゃんの様子を見ながら無理なく進めましょう。
最初にトライしたいベビーサイン12選
初めてベビーサインをやるときにおすすめのものをここでレクチャーします。毎日の生活でよく使うフレーズばかりなので、取り入れてみてくださいね。
①おっぱい・ミルク ②飲む
③食べる ④もっと
⑤おしまい ⑥替える
⑦お風呂 ⑧ねんね
⑨電気 ⑩痛い
⑪聞こえる ⑫鳥
まとめ
(文:高橋知寿/イラスト:杉井亜希/監修:吉中みちる)
※画像はイメージです
[*1]Susan Goodwyn,Linda Acredolo,and CatherineBrown(2000).“Impact of Symbolic Gesturing on Early Language Development.”Journal of Nonverbal Behavior,24:81-103.
[*2]ベビーサイン協会「2015年卒業生対象アンケート調査結果」