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2021年09月30日 17:30 更新

【医師監修】妊婦の体重が増えないと胎児に影響が!?理想的な体重増加の目安とは

妊娠中、体重の増加に悩む妊婦さんの声はよく聞きますが、反対に体重が増えないことに悩んでいる妊婦さんもいます。妊娠中、体重がなかなか増えないと、妊婦さんの体や胎児にはどんな影響があるのでしょうか?

妊婦の体重が増えないとき|考えられる胎児への影響

悩みのある女性のイメージ

妊娠するとおなかの赤ちゃんの重さや羊水などが増えるため、妊婦さんの体重は増加するのが一般的です。とはいえ、短期間で過度に体重が増えると、妊娠経過や赤ちゃんの成長、出産の際に影響が出ることがあるので、中には医師から指導を受ける妊婦さんもいるでしょう。

そうした話を聞くと「妊娠中でも体重はなるべく増えないほうがいいの?」と思うかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。本来、増えるべきものが増えないことで生じる影響もあります。

早産・低体重児になりやすい

健康で普通体形の妊婦さんの場合、「妊娠中の体重増加量が著しく少ない」と「低出生体重児分娩」や「早産」のリスクが高まることが明らかになっています。

低出生体重児とは「出生時の体重が2,500g未満の赤ちゃん」のことです。赤ちゃんの出生体重については「WHO(世界保健機関)」による定義があり、2,500g以上4,000g未満が「正出生体重」とされています。赤ちゃんの体重がこの目安に入らないと、健康にさまざまな影響の出てくる可能性があるといわれています。出生時の体重が少なすぎるとどんな影響が心配されるかは、このあと解説します。

また早産とは、「妊娠22週以降37週未満」で出産にいたることをいいます。

赤ちゃんが成人後に生活習慣病を発症しやすい

赤ちゃんが体重2,500gに満たない状態で生まれてくると、大人になったときに生活習慣病(成人病)などを発症するリスクが高くなるといわれています。

具体的にどういった影響があるのかは報告によって異なりますが、「高血圧」「冠動脈疾患」「2型糖尿病」「脳卒中」「脂質異常」「神経発達異常」などは、低出生体重との関連性が大きいといわれています。

胎児期に長期間にわたって低栄養状態にさらされたり、早産で早すぎる出生を迎えると、赤ちゃんの内臓などはママの胎内で十分に育ちきることができません。実は、その影響は成人期まで続き、大人になってからこうした病気を発症するリスクを上げる可能性があると考えられています。

妊婦のやせ過ぎも太り過ぎもハイリスク

一方で、妊娠中の体重増加が著しい場合にも、赤ちゃんの健康に影響が生じる可能性はあります。

過度に妊婦さんの体重が増加すると、出生時体重が4,000g以上の「巨大児(高出生体重児)」が生まれやすくなったり、帝王切開のリスクが高まったりすることがあるといわれています。

このように妊娠中は体重増加が「多すぎても」「少なすぎても」リスクが高まります。妊娠中の体重増加は、適切な範囲にとどめることが大切です。体重増加量の目安についてはこの後、詳しく説明します。

理想的な体重増加の目安

体重を測る女性のイメージ
Lazy dummy

「体重増加は適切に」といっても、どれくらいであれば適切なのか、判断が難しいところがあるでしょう。妊娠中の体重増加量は、以下の基準を目安にするとよいといわれています。

妊娠前のBMIを元に計算する

妊娠中の体重増加量の目安は、妊娠前の体形(体重)によって異なります。基本的にはBMIという、肥満度を表す国際的な指標を元に計算します。BMIごとの、妊娠中の体重増加の目安は、以下のように示されています。

BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)

BMI18.5未満(やせ)=12~15kg
BMI18.5以上25.0未満(ふつう)=10~13kg
BMI25.0以上30.0未満(肥満1度)=7~10kg
BMI30.0以上(肥満2度以上)=5kgまでを上限に個別対応

妊娠中は赤ちゃんの体重や胎盤、卵膜、羊水によって、どんなに少なくても約4kgは体重が増加します。それ以外の、皮下脂肪などの増加許容量が、妊娠前の体重によって異なるというわけです。

妊娠中期から後期にゆっくりと体重を増やしていく

妊娠初期は、まだ赤ちゃんが非常に小さい状態なので、「妊娠したから体重を増やさなきゃ」と焦る必要はありません。

妊婦さんは、非妊娠時よりも多くのカロリーを摂取することが推奨されていますが、その付加量も妊娠初期は「1日あたり+50kcal程度(健康で普通体形の妊婦さんの場合)」で、非妊娠時とほとんど変わりません[*1]。この時期は、母体に必要な分の栄養や水分を摂取できていれば問題ありません。

妊娠中期以降の付加カロリー量は増える

ただし、妊娠中期になると「1日あたり+250kcal」、後期では「1日あたり+450kcal」と妊娠経過が進むに伴って、推奨される摂取カロリーも徐々に増加していきます[*1]。

妊娠中期以降からは、上記の付加量でカロリー摂取を増やすことを心がけ、ゆっくりと体重を増やしていくのがよいでしょう。

妊婦さんの体重増が少なすぎる場合

赤ちゃんの体格と妊婦さんの体重増加量は基本的に相関関係にあり、「妊婦さんの体重増加量が大きいほど、赤ちゃんの体格も大きくなる」傾向にあります。

そのため、体重がなかなか増えない妊婦さんや元々やせている妊婦さんでは、お腹の赤ちゃんの体格が基準値よりだいぶ小さい(胎児発育不全)ことがあります。

この場合は、妊婦健診などの際に治療や生活上の指導などがあるはずなので、医師の指示に従いましょう。胎児発育不全は妊婦さんの体重が増えないこと以外に、感染や胎盤の異常、母体の病気や喫煙などが原因で起こることもあり、これらの場合もその原因の治療などを受けることになります。

なお、まれに「在胎不当過大」といって、おなかにいる期間のわりに赤ちゃんの体格が大きすぎる場合もあります。在胎不当過大は「両親が大柄」「母親が糖尿病や肥満」などが原因で生じると言われています。

そのような傾向がある妊婦さんも、健診の際などに医師から話があるはずです。この場合も、かかりつけ医の指導に従いましょう。

体重が増えない妊婦さんが心がけること

さまざまな食品のイメージ
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増えるはずの体重が増えず、赤ちゃんが成長も心配……そんな時は、以下のことに気を付けてみましょう。

栄養バランスのとれた食事

栄養バランスのよい食事は、健やかな体をつくるための基本です。バランスのよい食事とは「主食、主菜、副菜」という3つの要素が揃った食事のこと。

主食、主菜、副菜が揃った食事を心掛けるだけで、主食からは「体を動かすエネルギー源」を、主菜からは「体をつくり維持するのに必要なたんぱく質」を、「副菜では、主食と主菜だけでは不足しがちなビタミン、ミネラル、カルシウムなどの栄養素」を、まんべんなく摂取することができます。

とはいえ、何をどのくらい食べたら良いのか具体的に考えるのはなかなか大変ですよね。厚生労働省が公開している「妊産婦のための食事バランスガイド」には、1日に「何を」「どれだけ」食べたらよいかがわかる食事量の目安が載っているので参考にしてみてください。

なお、妊娠初期につわりがひどくて思うように食事が摂れないときは、栄養バランスについて気にする必要はありません。その場合は、「食べられるもの」を「食べられるとき」に口にすればOK。また、水分が不足しないようこまめに水分摂取するようにしましょう。

1回の食事量を減らして回数を増やす

おなかの赤ちゃんが大きくなってくると、子宮に内臓が圧迫され、1回の食事で十分な量が食べられなくなり、思うように体重が増えないこともあります。心当たりがある人は、1回あたりの食事量を減らす代わりに、回数を増やしてみましょう。

1回で摂取していた量を数回に分けて食べるように、食べ方を工夫してみると、1日に必要なエネルギー量を摂取しやすくなります。

思うように増えないときは専門家に相談して

妊娠期間中はできるだけ適度に体重を増やしたいものですが、いろいろ努力していても思うように増えない人もいるでしょう。そんなときは一人で悩まず、妊婦健診などの際に相談してみてください。

妊娠中に体重が増えない妊婦さんでは、管理栄養士さんに相談し、食事記録をつけてきてもらうことは多いです。また、摂食障害があったり、ボディイメージとの乖離が受け入れられなかったり、妊娠前からのやせ願望が継続している方、産後すぐに体型を戻したいと強く思っている方などもいます。こうした場合は、メンタルヘルスの専門家と連携してサポートすることになります(監修:直林奈月 先生)

「たかが食事のことで……」とためらう人もいるかもしれませんが、ここまでで解説したとおり、妊婦さんの食生活は赤ちゃんの健やかな成長を支えるものです。管理栄養士や助産師などの専門家が具体的なアドバイスをしてくれるでしょう。積極的に相談してみましょう。

まとめ

クーファンとエコー写真
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妊娠中は赤ちゃんとママの健康維持のためにも、主食、主菜、副菜の揃った、栄養バランスの整った食事をこまめに食べて、適切に体重を増加させることが必要です。
妊娠中の体重増加があまりに少ないと、赤ちゃんの成長に影響が生じる可能性も考えられます。こうした心配がある妊婦さんに対しては、かかりつけ医などから指導があるはずですが、その他の人も妊娠中の食生活や体重について悩みがある場合は、妊婦健診の際などに恥ずかしがらずに相談してみてください。

(文:山本尚恵/監修:直林奈月 先生)

※画像はイメージです

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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