【医師監修】双子の作り方ってあるの? 確率や妊娠しやすい人の特徴と食べ物
双子がそろっている様子はとてもかわいいですね。双子を妊娠しやすくなる方法というのはあるのでしょうか? 双子を妊娠する確率や、双子を妊娠しやすいと言われている人の特徴などを解説します。また、双子を妊娠しやすくなると噂の食べ物についても解説します。
双子を妊娠する方法ってあるの?
まずは「双子を妊娠する方法があるのかどうか」について説明します。
医学的に根拠のある方法はない
医学的には、自然妊娠で確実に双子が妊娠できるようになる方法はありません。
不妊治療(生殖補助医療)では、「複数の胚(受精卵)を子宮に戻す」「排卵誘発剤の使用」などによって双子の出生率は上がります。でも、双子を出産するために不妊治療を利用することはできません。
双子妊娠はリスクがある
そもそも、双子を妊娠することは、1人の赤ちゃんを妊娠するよりも、次のようなさまざまな合併症のリスクが上がります。
・早産
・妊娠糖尿病
・妊娠高血圧症候群
・子宮内胎児発育遅延
・胎児形態異状
・子宮内胎児死亡
また、胎児の膜性(胎盤や羊膜の数)によっては、下記のような異常のリスクもあります。
・双胎間輸血症候群
「1絨毛膜双胎(2人で1つの胎盤を共有)」の場合で、どちらかの胎児に血液が多く流れるなどのアンバランスが起こること
・臍帯相互巻絡(さいたいそうごけんらく)
「1絨毛膜1羊膜双胎(2人で1つの胎盤・羊膜を共有)」の場合で、お腹の中でへその緒が絡みついてしまうこと
そのため、双子を妊娠すると1人を妊娠した時よりも、妊娠中は経過を慎重に観察することになります。特に1絨毛膜双胎の場合は、より手厚い管理が欠かせません。
不妊治療でも、双子や三つ子などが生まれやすくなる「複数の胚を移植する」ことは避けられており、現在では「原則1個の胚」を移植することになっています。
双子を妊娠する確率は?
双子を妊娠する確率は、体質や人種などによって異なります。
日本人の場合はどのくらいの確率なのでしょうか?
およそ1/100の確率
双子を妊娠する確率は、徐々に上昇しています。現在ではおよそ1/100の確率と言われています。
なお、1974~1976年の3年間は、出産1000当たり5.8件前後の妊娠が見られました。
それが1987年には6.6件に上がり、さらに2003年には11.0件に上昇しています[*1]。
日本では一卵性が約60%だが二卵性が増加中
双子は、1つの受精卵が分離して双子に育つ「一卵性双胎」と、最初から受精卵が2つある「二卵性双胎」に分けられます。
不妊治療の一般排卵誘発や体外受精などの生殖補助医療の治療が始まっていない1960年台以前の日本では、一卵性が60%前後を占めると言われていました[*2]。
ただし、より新しい研究では、不妊治療の普及により二卵性の割合は増加しており、一卵性と同じくらいかそれ以上になっています[*3]。
同性の双子は40%ずつくらい
仮に、すべての双子のうち、一卵性が約60%、二卵性が約40%という割合で計算すると、「男×男」または「女×女」の双子は、双子のうち約40%ずつとなります。
異性の双子は約20%かそれ以上
また、「男×女」という異性の組み合わせで生まれてくる双子は約20%ということになります。これは、もとは同一の受精卵が分割して生まれてくる一卵性の場合は、基本的に2人とも同じ性別になるという前提で推測した結果です。
ただし、現在は不妊治療の普及のために二卵性の割合が40%より増えているので、男女の双子は20%より多く生まれていると考えられます。
双子の妊娠がわかるのはいつ?
双子を妊娠したかどうかは、妊娠何週くらいに分かるのでしょうか?
妊娠5、6週にわかることが多い
双子ができたかどうかは、医療機関で超音波(エコー)検査により「胎嚢(赤ちゃんを包む袋のようなもの)」や心拍を確認することでわかります。
ただ、ひとくちに双子と言っても、2人の赤ちゃんが同じ胎嚢に包まれていることもあれば、別々に包まれていることもあるので状況によりますが、だいたい「妊娠5、6週ごろ」から双子かどうかわかることが多いようです。
なお、妊娠検査薬では妊娠の可能性が高いかどうかしかわからず、双子かどうかは確認できません。
双子を妊娠しやすい人の特徴は?
双子を妊娠しやすい人はどんな人なのでしょうか?
大まかな特徴を紹介します。
30代後半女性
双子はママが高齢になるほど生まれやすくなります。高齢になるにつれてホルモンが変化し、複数の卵子が放出されやすくなるためです。また、不妊治療の影響で双子が妊娠しやすくなることもあります。
なお、双子が生まれる割合がもっとも高くなるママの年齢は35~39歳と言われています[*2]。
上の子がいる(経産婦)
「初産の人よりも経産婦のほうが双子を妊娠しやすい」ことも過去の論文で報告されています。
つまりすでにお子さんがいて、2回目以上の妊娠ということになります。
不妊治療をしている
不妊治療では、排卵を誘発する効果がある「クロミフェン」という薬が処方されることがあります。クロミフェンを服用していると、双子以上の多胎妊娠が起こりやすくなります。クロミフェンの影響で複数の卵子が排卵されることがあるからです。
同様に、排卵誘発で用いられる注射(ゴナドトロピン療法)でも多胎妊娠は起こりやすくなります。
その他
その他、双子を妊娠しやすい人には次のように、人種や肥満などさまざまな特徴があると言われることもあります。
アフリカ系
日本人は比較的双子の頻度が低く、欧米は日本の倍程度、アフリカでは4倍ほど双子が生まれやすいと言われています[*1, 2]。
とくに、ナイジェリア南西部には「ヨルバ族」という双子の生まれる頻度がかなり高い人たちがいます。
菜食主義ではない
菜食主義ではない女性の方が、双子を妊娠しやすいと言われることもあります。
中等度以上の飲酒、喫煙をしている
頻繁に酒を飲んだり喫煙をしている人の方が、双子を妊娠する割合は高いとする報告もあります[*4]。
インスリン様成長因子の血中レベルが高い
成長や発達を促す「インスリン様成長因子」というホルモンが多く分泌されていると、双子を妊娠しやすくなるという説もあります。
肥満
肥満度指数(BMI)が高いほど、二卵性双生児が増加したという研究結果がアメリカで報告されています。ただし、この研究によれば、一卵性双生児の割合は肥満度とは関連していませんでした[*5]。
双子を妊娠しやすくなる!? ジンクスがある食べ物
食べると双子を妊娠しやすくなるという噂の食べ物もあります。よく話題になるものを紹介します。
どれもはっきりした根拠はない
双子を妊娠しやすくなると言われている食べ物を紹介する前に、期待される効果のほどについてお話しておきます。
残念ながら、食べ物で双子の妊娠率が上がるという噂には、どれも科学的にはっきりした根拠はありません。健康な妊娠のためには、普段から栄養バランスの取れた食べ物を摂ることの方が大切です。
そのため、以下で紹介するものについてもそんなことを言われることもあるんだくらいに考えて、摂るにしてもあくまで縁起かつぎ程度にしておきましょう。
乳製品
「乳製品を含む動物性食品を口にしないビーガン(菜食主義)」の女性と、「動物性食品、特に乳製品を摂る女性」が双子を持つ割合を比較したところ、動物性食品、特に乳製品を摂っている女性の方が5倍双子を出産していた、という報告があります[*6]。
ただし、単に乳製品を摂れば摂るほど双子を妊娠しやすくなるというわけではありません。
ヤムイモ(やまいも)
アフリカのナイジェリア南西部に暮らすヨルバ族は、双子の出生率が「2.8~5.0%」と高いことで知られています。
彼らの中でも、さまざまなものを食べている都市部の人に比べ、植物エストロゲンを豊富に含むヤムイモが主食となっている村落部の人の方がより双子の出生率が高かったそうです[*7]。
そのため、ヤムイモをよく食べていると双子を妊娠しやすくなるのではないかという説があります。
玄米やライ麦などの複合炭水化物
玄米やライ麦、そば粉、大麦、雑穀などに含まれているでんぷんや食物繊維などの「複合炭水化物」が、双子の妊娠を助けるという説もあります。
「複合炭水化物」は「単純炭水化物(ブドウ糖、果糖、ショ糖など)」に比べて、消化されてエネルギーになるまで時間がかかります。
単純炭水化物ばかり食べていると血糖値が急上昇・急降下して乱れがちになるので、排卵を妨げる可能性があるとは言われています。そこから拡大解釈した人がいたようですが、複合炭水化物を摂れば双子妊娠の確率は上がるのかどうかはよくわかりません。
葉酸
90年代後半にテキサス州で葉酸の摂取を勧めたところ、双子が生まれる確率が1年あたり2.4~4.6%上昇しました[*8]。そのため、葉酸を摂ると双子が生まれやすいという噂が生まれました。
ただし、アメリカ疾病予防管理センター(CDC)では「葉酸の摂取と双子の妊娠には関連がない」というプレスリリースを公表し、はっきり否定しています[*9]。
まとめ
自然妊娠で双子を妊娠しやすくなる方法というのは残念ながらありません。そういう効果があるという食べ物にも医学的にはっきりした根拠はなく、あくまでジンクスのようなものと考えておきましょう。自分で何か努力して双子を妊娠する、ということはほとんどできないのです。また、ここで解説したように双子の妊娠ではさまざまなリスクが高いので、双子が欲しいと思っていて運よく妊娠できたとしても、想像以上に大変と感じることが多いかもしれません。双子になるかどうかはあくまで天に運を任せ、妊活中はバランスの取れた食事や適度な運動などで生活習慣を整えて、できるだけ健康な状態で赤ちゃんを待ちたいですね。
(文:大崎典子/監修:齊藤英和 先生)
※画像はイメージです
[*1]国立成育医療研究センター 多胎妊娠外来
[*2]『多胎妊娠 妊娠・分娩・新生児管理のすべて』村越毅 メジカルビュー社
[*3]病気が見えるvol.10産科 多胎妊娠 発生頻度, 150p , メディックメディア, 2018.
[*4]F Parazzini et al.: Coffee and alcohol intake, smoking and risk of multiple pregnancy, Hum Reprod. 1996 Oct;11(10):2306-9.
[*5]Reddy UM: Relationship of maternal body mass index and height to twinning, Obstet Gynecol. 2005 Mar;105(3):593-7.
[*6]AAAS NEWS RELEASE 20-MAY-2006: Study finds that a woman's chances of having twins can be modified by diet
[*7]Nylander PP. : The twinning incidence of Nigeria, Acta Genet Med Gemellol (Roma) . 1979;28(4):261-3.
[*8]”Rates of twinning before and after fortification of foods in the US with folic acid,Texas, 1996 to 1998” Waller, DK, Tita, AT, Annegers, JF. Paediatr Perinat Epidemiol 2003;17:378–83.
[*9]“Study Finds No Link Between Taking Folic Acid and Having Twins” January 27, 2003 CDC, Press Office
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます