【医師監修】妊娠に気づかないことってあるの? 妊娠に気づく理由と時期・注意点<ママ体験談>
「お産が始まるまで妊娠に気づかなかった」という話を耳にしたことはありませんか。にわかには信じられないかもしれませんが、実際起こることもあるようです。妊娠になかなか気づけないとき、考えられる理由を解説します。また、妊娠に気づいた時期、そのきっかけの体験談も紹介します。
妊娠に気づかないことってあるの?
妊娠した経験があったり妊娠を心待ちにしたりしていると、妊娠に気づかないことが信じられないかもしれません。でも、実際、妊娠したことに気づかない人はそれほど珍しくはないようです。
実は結構ある!
大阪産婦人科医会では、大阪府内の全産婦人科医療機関へのアンケートによって2009年の1年間で「未受診妊婦」がどのくらいいたかを調査しています。
ここでは、未受診妊婦は「妊娠中に3回以下しか妊婦健診を受けていない」または「最後に受診してから3ヶ月以上受診していない」に該当する人としていますが、調査の結果、「1年間で152人の未受診妊婦」がいたということがわかったそうです。ちなみに、大阪府内では年間8万件近くの分娩が行われています。
未受診の理由で、最も多かったのは経済的な理由ですが、その次に多かったのが「妊娠に気づかなかった」「どこに行って良いかわからなかった」などの身体や社会システムへの知識の欠如でした。これを理由とする人は21%、つまり152人中30人程度いたそうです[*1]。
海外でも、オランダで妊娠に気づいていなかった23歳の女性が腹痛に襲われ、駆け込んだ歯科医院で出産したり、イギリスで妊娠に気づかず救急車内で出産した女性がいたりといったニュースが最近話題になっています。
妊娠に気づけなかった妊婦さんは、国を問わず思ったより珍しくないのかもしれませんね。
妊娠に気づかない理由は?
妊娠に気づかなかった人たちは、どんな理由があって気づくことができなかったのでしょうか?
妊娠初期の症状がないか軽かった
妊娠初期によく見られるとされる症状には、次のようなものがあります。
・生理の遅れ
・着床出血
・基礎体温で高温期が続く
・おりものの増加
・乳房のハリや痛み
・つわり
・食欲や味覚、嗅覚の変化
・おしっこの回数が増加
・便秘、ガスが増える
・眠気が増す、だるくなる
・微熱や風邪っぽくなる
・むくみ
・快活になったりうつっぽくなる
・頭痛
・めまい
・腰痛
など
ただ、こうした症状は妊娠するとすべての人に現れるわけではありません。また、症状が軽かったり、まったくなかったりしても珍しくはありません。その場合、妊娠したことになかなか気づかない可能性はあります。
もともと生理不順や無月経気味だった
生理の遅れは、妊娠に気づくきっかけの中でもわかりやすいものです。
ところが、もともと生理不順で予定日が狂いがちだったり、無月経に近い状態の人では、生理が遅れたり来なくてもなかなか妊娠に気づかないでしょう。
その他、出産直後の妊娠や便秘と勘違いなども
その他にも、次のような理由で妊娠に気づかない可能性もあります。
着床出血を生理と勘違い
受精卵が子宮に着床すると「着床出血」という少量の出血が起こることがあります。
この着床出血を生理と勘違いすれば、妊娠になかなか気づかないでしょう。
産後すぐ妊娠した
産後、まだ生理が再開していない時期に次の妊娠をすると、生理が来ないのは産後だからと勘違いして妊娠に気づかないかもしれません。
忙しくて余裕がなかった
自分の体調や体の変化に注意を払えないほど忙しい毎日を送っていて、妊娠に気づかない人もいます。
普段からひどい便秘
ひどい便秘が続いていると、お腹の痛みや違和感があっても便秘のせいだと見過ごす可能性があります。
体重が増えているところだった
妊娠してお腹がふっくらしてきても、太ったせいだと勘違いすることもあります。
ピルの飲み忘れで妊娠した
ピルを一時的に飲み忘れたタイミングで妊娠すると、「ピルを飲んでいるのだから妊娠するはずがない」という思い込みで、妊娠に気づきにくくなる可能性もあります。
妊娠にはどうやって気づく?時期は?
そもそも、妊娠した人は何をきっかけに妊娠したかもしれないと気づくことが多いのでしょうか。
通常は生理が来なくて気づくことが多い
妊娠に気づいた理由としてよくあげられるのが、「生理予定日になっても生理が来なかったこと」です。ただし、人によっては、別の理由で妊娠に気づく人もいます。
妊娠したことに気づいた理由や時期についてアンケートを集めました。先輩ママたちの生の声をチェックしてみましょう。
<体験談>妊娠に気づいたのはきっかけ
生理の遅れ
吐き気があった
着床出血があった
基礎体温の変化
なんとなく体調不良
<アンケート>妊娠に気づいた時期
いつ妊娠に気づいたかも聞いたところ、最も多かったのは「妊娠2ヶ月(妊娠4~7週)」でした。なお、生理予定日の週は「妊娠4週」、多くの妊娠検査薬が使えるようになるのが「妊娠5週」に当たります。
◆アンケート情報 2021年9月23日~2021年9月30日 調査対象:マイナビニュース会員、既婚女性 調査数:381名の結果から抜粋
調査方法:インターネットログイン式アンケート
※マイナビニュース会員とは、Tポイントが貯まるアンケートやキャンペーンの参加、メールマガジンの購読などができる「マイナビニュース」の会員サービスです。(https://news.mynavi.jp/lp/2018/present/present/register_campaign/)
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
妊娠に気づくのが遅れた場合の4つのリスク
妊娠に気づくのが遅くなると、ママと赤ちゃんの健康に影響する可能性が出てきます。
考えられるリスクについて説明します。
1. 気づかずお酒やタバコ、薬を摂取してしまう
妊娠に気づいていなかったために、胎児に害を及ぼす可能性があるお酒やタバコを摂取してしまうことがあります。
また、妊娠中は時期によって避けるべき薬がありますが、妊娠に気づいていないとそうした薬を服用してしまう可能性もあります。
2. 食生活に注意できない
妊娠中は、妊娠前に比べて食中毒菌のリステリア菌に感染しやすくなっており、発症すると赤ちゃんに影響することがあります。そのため、妊娠中は加熱殺菌していないナチュラルチーズ、肉や魚のパテ、生ハム、スモークサーモンなどの食品は避けたほうが良いと言われています。
ほかにもさまざまにある食中毒を避けるために、刺身などの加熱の不十分な食品も妊娠中は口にしないほうが良いと言われていますが、妊娠に気づかないままではなかなかそこまで食品に注意しようと意識できないかもしれません。
また、妊娠に気づくのに遅れると、妊活中~妊娠初期に摂取することで胎児の神経管閉鎖障害のリスクを下げる「葉酸」を摂取し始めるのが遅れる可能性もあります。
3. 異所性妊娠で大出血の可能性も
妊娠したかもしれない、と気づいたら多くの人は妊娠検査薬を使うでしょう。そこで陽性が出れば「妊娠した!」と思うかもしれませんが、実は「異所性妊娠(子宮外妊娠)」の可能性もあります。異所性妊娠は、受精卵が子宮内膜の適切な部位以外の、卵管や卵巣、腹腔、頸管などに着床することで、すべての妊娠の約1~2%の割合で起こります[*2]。
通常、妊娠検査薬で陽性が出たら産婦人科で超音波検査を受けます。その時に、異所性妊娠の疑いがあればさらに検査を行い、診断されたら薬剤や手術で治療することが多いです。なぜなら、異所性妊娠では、受精卵が成長することで卵管破裂などが起こり、お腹の中で大出血するリスクがあるからです。大出血が起こると、出血性ショックなどによって命が危険にさらされることもあります。
異所性妊娠では、最初は「生理がない」「妊娠検査薬が陽性」以外にめだった症状はないか、少量の出血や起きたり治まったりする下腹部痛がある程度のことが多いのですが、妊娠6週以降になると卵管破裂などの症状を起こすことが増えていきます[*2]。ですから、妊娠した場合はなるべく早く超音波検査を受け、異所性妊娠の可能性がないことを確認するのが大切なのです。
4. 必要な検査が受けられない
妊娠していることに気づけないと、妊婦健診で定期的にチェックを受けられず、異常が起こっても放置することになってしまいます。妊娠中は、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病、前置胎盤などさまざまなトラブルが起こる可能性があります。
また、妊娠に気づくのがあまりにも遅くなると、健康状態の把握や管理ができていないことから、お産を引き受けてくれる産院がなかなか見つからなくなることもあります。
もしかして妊娠!?と思ったときにまずすること
「もしかして妊娠したかも」と思ったら、次の方法で妊娠を確認しましょう!
妊娠検査薬を使ってみる
生理予定日の1週間後になったら、通常タイプの妊娠検査薬で検査することができます。使用説明書を読んで、正しい方法で妊娠を確認してみましょう。なお、生理予定日から検査できる「早期妊娠検査薬」も市販されています。
陽性ならすぐに産婦人科へ!
妊娠検査薬で「陽性」と出たら、早めに産婦人科で確認してもらいましょう。
超音波検査で正常妊娠かどうか調べてもらい、健康上気をつけることはあるかどうかも教えてもらいましょう。
妊娠していたなら、その後も妊婦健診を受け、ママと赤ちゃんの健康を守っていってくださいね。
まとめ
妊娠に気づけないことは実は珍しくありません。その理由は、妊娠初期によくある症状が見られないか軽かったり、生理不順や無月経気味だったり、忙しすぎて自分の体調に注意を払えなかったり、ピルを服用中だったりなど、さまざまです。
妊娠に気づくのが遅れると、妊娠中は避けたい飲酒や喫煙をしてしまったり、葉酸を適切な時期に摂取しそびれたり、異常な妊娠を見逃してしまう可能性もあります。また、妊娠中に必要な検査を受けられず、ママと赤ちゃんの健康に影響することもあります。
妊娠したかもと思ったら、まずは妊娠検査薬でチェックし、陽性の場合はほうっておかずに産婦人科で診てもらってくださいね。
(文:大崎典子/監修:宋美玄 先生)
※画像はイメージです
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます