【医師監修】妊娠検査薬で陽性=妊娠確定は間違い?妊娠していないのに陽性になるケースとは
妊活中や妊娠の可能性があるとき、まず試すのが妊娠検査薬でしょう。それでは検査薬で「陽性」反応が出たら、妊娠は確定なのでしょうか。今回は妊娠検査薬で陽性が出た場いいの正常妊娠以外の可能性や正しい結果を得るための妊娠検査薬の使い方などを解説します。
妊娠検査薬で陽性反応が出たら妊娠確定?
妊娠検査薬は、薬局などで手軽に買うことができます。しかも尿をかけるだけで、数分後には結果がわかり、使い方も非常に簡単です。
それでは妊娠検査薬で陽性反応が出たら妊娠が確定したということなのでしょうか?
陽性=妊娠はほぼ確実、ただしそれ以外の可能性も
検査薬を正しく使用した結果、陽性となったのであれば妊娠はほぼ確定です。
ただし、必ずしもそれが「正常な妊娠」とは限りません。また、妊娠以外でも妊娠検査薬で陽性になるケースがあります。
1. 子宮以外の位置に着床する異所性妊娠である可能性
通常は厚くなった子宮内膜に受精卵が「着床」します。その後、だんだんに根を張るようにして成長していき、やがては胎芽、そして胎児になります。ところが、実は受精卵が子宮内膜以外に着床してしまうこともあるのです。妊娠検査薬では着床の有無はわかっても、正常な場所に着床しているかまではわからないのです。
受精卵が正常ではない場所に着床した場合には、「異所性妊娠(子宮外妊娠)」となります。これは、受精卵が卵管や卵巣などの、その後に順調に赤ちゃんとして成長することができない場所に着床してしまう状態です。
このような状況を放置しておくと、妊娠6~9週ごろに卵管が破裂することがあります。そうなると卵管の血管からお腹の中に大量の出血が起こって、ママに命の危険がある場合もあります。そのため、早めに診断して、手術などを行う必要があります。
---------------------------
異所性妊娠(子宮外妊娠)について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎子宮外妊娠(異所性妊娠)の症状はいつから?原因と妊娠の継続について
2. 妊娠していないのに陽性になっている可能性
妊娠ではないのに妊娠検査薬が陽性となる可能性があるのは、不妊治療などで、hCGを含む排卵誘発剤などを使用している場合や、hCGを産生する腫瘍(絨毛上皮腫など)がある場合などです。また、糖やタンパク、血液が尿に多量に出ていると、妊娠検査薬の結果は影響を受けるとされています。
---------------------------
そのほか、早期に流産した場合の妊娠検査薬の結果などについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎化学流産の症状と原因は? 妊娠検査薬陽性判定と発生時期の関係
妊娠反応が陽性になったら、産婦人科で超音波検査を
妊娠検査薬が陽性になったことが、正常妊娠のためかそうでないかを確認するには、受診が必要です。
産婦人科の超音波検査(エコー検査)で、赤ちゃんが入っている袋である胎嚢(たいのう)が子宮内にあるかどうかを確認してもらいましょう。妊娠5週以降であればほぼ確実に超音波検査で胎嚢を確認できるとされています[*3]。妊娠5週後半~妊娠6週前半ごろになると、赤ちゃんの心拍も確認されるようになります[*4]。
---------------------------
妊娠検査薬で陽性だったとき初めて受診する時期などについて、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎「妊娠かも」初診のタイミングはいつ?
■陰性だけど生理が来なかったら?
ここまでは妊娠検査薬が陽性であった場合について解説してきましたが、もし、陰性と判定されたにもかかわらず生理が遅れたままの場合は、検査するタイミングが早すぎたので正確に結果が出なかった可能性も考えられます。特に、生理不順の人の場合は、排卵と受精のタイミングの把握や予測が難しいものです。
この場合は1週間後に妊娠検査薬で再検査しましょう。また、妊娠反応が陰性なのに3ヶ月以上も生理がない場合には、産婦人科を受診しましょう。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊娠検査薬で陰性なのに生理がこない……これって病気?
妊娠検査薬で正しい結果を得るためには?
妊娠検査薬は、妊娠すると分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG:妊娠していない女性や男性では通常は分泌されないホルモン)が尿に一定以上の濃度で存在するとリトマス試験紙のように色が変わることで妊娠の可能性があるかどうかを判定します。
しかし、正しく使わなければ正しい結果が得られません。メーカーによって、多少異なる部分もありますが、その使い方にはほぼ共通している約束事があります。それはどんなことでしょうか。
時期|検査する時期が適切であること
妊娠検査薬に反応するほど尿にhCGが出始める時期には個人差があります。十分な量のhCGが尿に出ていないと正確な結果が判定できないので、通常の妊娠検査薬は生理予定日の1週間後以降、つまり妊娠5週からの使用が推奨されています(早期妊娠新検査薬の場合は生理開始予定日当日から)。
早すぎるタイミングで検査薬を試した場合は、妊娠していたとしても、検査結果が陰性となる場合があります。
なお、妊娠が成立するのは、受精卵が子宮内膜に着床したときなので妊娠3週ごろのこと。受精卵はここからまたおよそ1週間かけて子宮内膜に入り込み、妊娠4週ごろ、着床が完了します[*1]。ちなみに、妊娠4週は妊娠していなかったら次の生理が始まるころです。
hCGは受精卵が着床を始めたころから分泌され始めますが[*2]、尿に出るくらい分泌量が増えてくるのは妊娠4週ごろ(妊娠していなかったら、ちょうど次の生理が始まる予定のころ)です。妊娠初期ではhCGの分泌量は急激に増加しますが、妊娠8~10週ごろをピークにその後は次第に減少、分娩で胎盤が出ると激減します[*1]。
---------------------------
妊娠検査薬の使用時期について、詳しくは以下の記事を参考にしてください。
関連記事 ▶︎妊娠検査薬は最短でいつから?フライング検査
関連記事 ▶︎生理不順の場合、妊娠検査薬はいつから使える?
尿量|尿の量が適切な量であること
尿の中にあるたくさんの情報から、hCGの情報だけを拾い出すため、尿の量が十分でないと、正しい結果が得られません。また、多すぎても正しい結果は得られません。検査薬の説明書に記載のある時間を守って尿をかける、または浸すという使い方を守りましょう。
時間|検査結果が出るまで規定の時間を待つこと
尿をかけたあと、すぐには結果が出ません。スティック状の検査薬に、検査結果が見える窓がついていて、そこにサインが現れるのを一定時間待つという方法が一般的です。試験部分まで尿の成分がしみていくまでに時間がかかります。
尿をかけてからだいたい1~3分程度の時間がたったころに、じわっとサインがあらわれるようになっています。10分以上結果が表示されない場合は、尿量不足などの操作ミスで判定できないとしている製品が多いようです。この場合は、新しいもので再度やり直すことになります。
ほか、判定ラインの色や出方など、メーカーによって少しずつ異なることもあるので、各製品に添付されている使用方法をよく読んで使いましょう。
まとめ
尿をかけるだけで、体に負担をかけることなく妊娠の判定ができる妊娠検査薬。でも、子宮の中の正しい場所で妊娠成立しているかは、産婦人科で診てもらわないとわかりません。おなかの赤ちゃんを元気に育て続けるためにも、妊娠検査薬で陽性がわかったらなるべく早めに産婦人科を受診しましょう。
(文:関川香織/監修:太田寛先生)
※画像はイメージです
[*1]病気が見えるvol.10産科 第4版, p6, 20, 35, メディックメディア, 2018.
[*2]NEWエッセンシャル産科学・婦人科学 第3版, p279, 医歯薬出版, 2004.
[*3]日本産科婦人科学会編:産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第4版, p230, 2018.
[*4]日本産科婦人科学会監修:Baby+ 改訂第二版, p9, 2016.
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます