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2021年08月09日 17:31 更新

【医師監修】妊娠検査薬で陰性なのに生理がこない……これって病気?

予定日を過ぎたのに生理が来ないから、妊娠検査薬を使ってみたけれど「陰性」。そんな時は「これは妊娠ではない?」または「何かの病気?」と心配になりますね。そこで今回は、検査薬で陰性なのに生理が来ないときに考えられる原因と、妊娠の可能性についてまとめました。

実は妊娠しているのに検査薬が陰性のケース

妊娠検査薬に関する
Lazy dummy

妊娠初期には、妊娠を維持するために受精卵から「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンが分泌されます。妊娠検査薬は、尿の中のhCGに反応することで、妊娠しているかどうかを検査するものです。

市販されている妊娠検査薬の精度は非常に高く、通常は妊娠していれば陽性となりますが、さまざまな原因で「妊娠しているのに陰性」となることもあります。

(1)検査薬が期限切れ

市販の妊娠検査薬は、必ず使用期限が決まっています。期限が切れている妊娠検査薬は、薬剤が劣化していて正しい判定が出ないことがあります。

そのため、期限切れの妊娠検査薬を使うと、妊娠していても陰性となったり、判定ラインが出ても薄かったりかすれていたりして、陽性か陰性か判断しにくくなる可能性があります。

(2)検査薬を正しく使えていない

妊娠検査薬は、「正しい方法」で使わないと正確な判定が出ないこともあります。たとえば採尿した尿を使う場合、長時間放置せずに採尿後できるだけ早く使うことが大切です。尿は時間が経つと、雑菌が繁殖するなどで薬剤がきちんと反応しにくくなるからです。

また、妊娠検査薬を使う前にたくさんの水分を摂ると、尿が薄くなるため尿中のhCG濃度が低くなり、妊娠していても陰性となったり、はっきりした判定ラインが出ないこともあります。妊娠検査薬は基本的にどの時間帯に使用しても問題ありませんが、尿の濃さがhCG濃度に影響しないよう、「朝一番の尿」を勧めているメーカーもあります。

検査薬によっては、「尿にひたす時間(判定が出るまでの時間)」が多少異なる場合や、「尿をかけた妊娠検査薬は水平にした状態で判定を待つ」といった条件が記載されているものもあります。妊娠検査薬で正しい判定を得るためには、製品ごとの使用方法や条件に合った使い方をすることが必須です。

(3)検査薬を使うタイミングが早すぎる(フライング検査)

通常の妊娠検査薬は、hCGの濃度が「50IU/L以上に達していると陽性」の反応が出て、「それ未満だと陰性」となります。これはつまり、「妊娠していても、hCG濃度が50IU/Lに達していなければ陰性」となるということです。

hCGは受精卵が子宮に着床するとすぐに分泌されるようになりますが、最初の分泌量は微量です。それが着床~2週後ほどまでの間に急激に増加し、妊娠5週までに尿にまで出るほど分泌量が増えます。

そのため、メーカーが推奨する使用時期より早くフライングで検査をしてしまうと、hCGの濃度が妊娠検査薬に反応するほど上がっておらず、正しい反応が出ない可能性があるのです。

(4)多胎妊娠している

妊娠検査薬はhCGが分泌されていないと陽性になりませんが、実は検査薬で判定できる範囲を超えて「hCGが大量に分泌されている場合」も結果が陰性となることがあります。

妊娠検査薬の説明書にも、「生理開始予定日を過ぎても生理が始まらないのに妊娠検査薬の判定が陰性となる例」として、「妊娠によるhCGが非常に多く分泌した場合」「尿中hCGが多くなりすぎた場合」といったことが記載されています。

これは、妊娠している場合では、通常の妊娠でも前回の生理より約2ヶ月以上経過した頃にまれに起こることがありますが、お腹の赤ちゃんが「双子など多胎」の時にも起こる可能性があります。

妊娠していないけれど生理が来ないケース

妊娠検査薬が陰性だった女性のイメージ
Lazy dummy

妊娠していないのに生理が遅れる原因には、ストレスや過度なダイエットなどがあります。また、多嚢胞性卵巣症候群、高プロラクチン血症、甲状腺機能異常などの病気が原因という場合もあります。

(1)ストレス

強いストレスを受けていると、生理周期が狂い、予定通り来ないことがあります。これは、女性には決して珍しくありません。

ストレスとは、外部から刺激を受けることで起こる緊張状態のことです。刺激となるのは、天候や音などの環境によるもの、病気や体調不良などの身体的なもの、不安や悩みなどの心理的なもの、人間関係などの社会的なもの、とさまざまです。

こうしたストレスは、女性ホルモンなどの分泌をコントロールしている脳の視床下部に影響を与えます。その結果、生理のメカニズムに深く関係している女性ホルモンのバランスが崩れてしまうために、生理不順や無月経が引き起こされることがあるのです。

(2)無理なダイエット

無理なダイエットも、生理不順や無月経を招く一因になります。ダイエットで厳しい食事制限をして十分な栄養を摂らないと、体重が急に減少します。この急な体重減少は、やはり視床下部へのストレスとなるからです。

無月経の状態を放っておくと、その期間が長くなるほど自然に生理が再開する可能性は低くなってしまいます。もし、ストレス対策や無理なダイエットの中止など生活習慣の見直しをしてもやはり生理が来ない場合は、あまり放っておかず2、3ヶ月のうちには婦人科を受診することが大切です。

(3)婦人科系の病気

婦人科系の疾患がある場合も、生理不順になったり、生理が何ヶ月か来なくなることがあります。生理周期に影響する婦人科系の病気の代表的なものには、「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」「黄体機能不全」「高プロラクチン血症」「早発卵巣不全(早発閉経)」などがあります。

「多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)」とは、排卵の発育に時間がかかり、なかなか排卵しない病気です。おもな症状は、以前は順調だった生理が不規則になったり、月経周期が35日以上あるなどです。その他、ニキビが多かったり、毛深くなったり、肥満といった症状が起こる場合もあります。

「黄体機能不全」は、おもに卵巣からのプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が不足することで起こります。原因は不明ですが、脳の視床下部が卵巣のコントロールをうまくできなくなり、女性ホルモンが正常に分泌されなくなることに加え、子宮内膜の異常などが絡み合って発症すると考えられています。

「高プロラクチン血症」は、妊娠中や産後ではない女性で母乳が出たり、無月経が起こる病気です。脳下垂体にできた腫瘍や視床下部の異常などにより、「プロラクチン」という母乳の分泌を促すホルモンが過剰になって起こります。

「早発卵巣不全(早発閉経)」とは、40歳未満で生理が来なくなった状態を言います[*1]。

(4)処方薬の影響

薬の種類によっては、無月経性月経や無月経を招くものがあります。さきほど解説した「高プロラクチン血症」は、一部の処方薬によっても起こるからです。

高プロラクチン血症になることがある薬は、「睡眠薬」「精神安定剤」「胃薬」「ホルモン剤」「降圧剤」などの一部です(こうした効能のある薬のすべてで起こるわけではありません)。

当てはまる薬剤を服用していると、副作用で内分泌機能に影響を与えるために、プロラクチンの分泌量が増えてしまうのです。

(5)肥満

肥満が、生理不順や無月経の原因になることもあります。これは、脂肪細胞から分泌される「レプチン」というホルモンが関係しています。レプチンには食欲をコントロールする働きがあるほか、生殖機能を調節する働きもあります。

体脂肪の量と血中レプチン濃度は比例しているので、極端にやせていたり低栄養状態の女性は、レプチンの不足で生殖機能がうまく作用せずに生理が来なくなることが多いのです。

一方で、肥満の人の場合は、体脂肪が多く血中レプチン濃度は高いのですが、脂肪細胞からレプチンが出続けているためにかえって効きにくくなる「レプチン抵抗性」という状態になりやすいのです。

そのため、肥満の場合も生殖機能がうまく働かなくなり、ホルモンバランスが崩れて排卵しにくくなるので、生理不順や無月経になることがあります。

(6)甲状腺機能障害

「甲状腺」はのど仏のすぐ下あたりにある蝶のような形をした臓器で、「甲状腺ホルモン」を作っています。甲状腺ホルモンには、体の代謝や成長などを調節する働きがありますが、女性ホルモンの分泌にも関係しています。

この甲状腺ホルモンに異常が起こり、過剰に分泌されたり、逆に分泌量が低下してしまったりすると、生理不順になったり生理が止まってしまうことがよくあるのです。

甲状腺ホルモンが過剰に分泌される「甲状腺機能亢進症」の代表的な病気が「バセドウ病」で、甲状腺ホルモンが少なくなる「甲状腺機能低下症」の代表が「橋本病(慢性甲状腺炎)」という病気です。どちらも女性によくみられます。

妊娠を正しく判別する方法

妊娠検査薬

妊娠検査薬で正しい結果を得るには、検査薬の説明書などに従って正しく使うことが大切です。

「期限切れでない」検査薬を「正しく」使う

市販の妊娠検査薬は、使用期限が製品の外箱や説明書などに記載されているので、使用前には必ずチェックしましょう。使用期限は、たいてい「製造してから未使用の状態で36ヶ月または3年」とされているものが多いようです。

ただ中には、「25ヶ月」「30ヶ月」などの製品もあります。また、製品によっては尿をひたす時間が異なったり、独自の使用方法に従って使うものもあります。

さらに、妊娠検査薬を使用するタイミングが早すぎるフライング検査では、正確な結果が出にくいものです。検査薬の使用は、多くの妊娠検査薬が推奨している「生理開始予定日の1週間後」以降にしましょう。もしこれより早めに使用して陰性が出たら、適切な時期に再検査して本当に陰性か確かめることをお勧めします。

いずれにしても、妊娠検査薬の使用前には、説明書や注意書きをよく読んで正しく使うことが基本です。

妊娠初期症状に当てはまるものがあるかチェックしてみる

妊娠検査薬で調べても陰性なのに、生理がなかなか来ないこともあるものです。その場合は、何らかの原因で正しい判定が出なかったけれど、実際には妊娠していることも考えられます。

妊娠の可能性があるけれど判定が陰性のときには、妊娠初期の症状はないかもチェックしてみるといいですね。妊娠初期によく見られる症状には、以下のようなものなどがあります。

妊娠初期によくみられる症状

・吐き気が続く

・微熱がある

・だるい

・生理痛のような下腹部痛がある

・胸が張る感じがする

・高温期が続いている


ただし、妊娠していないときの「PMS(月経前症候群)」でも同じような症状が見られることがよくあるので、こうした症状があるからといって妊娠しているとは限りません。これらの有無より妊娠の可能性が高いのは、「基礎体温で高温期が17日以上続いている」ときです。

一度、妊娠検査薬を使ってみたけれど陰性の場合でも、こうした症状や高温期の持続が見られたら、数日~1週間後にもう一度、妊娠検査薬を使ってみてください。

迷う場合は病院での検査がベター

妊娠検査薬の判定結果が陰性なのに生理が来ないのは、何らかの理由があるはずです。ストレスなどで単に生理が遅れているだけかもしれませんが、検査薬の使い方が間違っているなどで実は陽性なのに陰性と判定されている可能性もあります。また、ここまでで解説した婦人科系の病気が原因となっていることもあります。

もともと基礎体温で低温期と高温期の区別がはっきりついており、「高温期が17日以上続いている」場合は、受診して状態をよく調べてもらいましょう。それ以外の人も、無月経が続く場合はあまりほうっておかず受診することをおすすめします。

まとめ

妊娠検査薬とエコー写真

妊娠検査薬は、適切なタイミングで正しく使わないと、正確な結果が得られません。間違った使い方をしている場合、判定が陰性でも、実は妊娠している可能性もあります。時期や使い方でおかしい点があれば、説明書に沿った方法で再検査してみましょう。それで陽性が出れば産婦人科を受診します。

また、ここで解説したように、さまざまな原因で妊娠していないのに生理が来ないケースもあります。急に生理が来なくなってしまったり、生理周期が乱れたりしたら、その後の妊娠の可能性を下げないためにも、あまり放っておかずに受診することをおすすめします。

(文:村田弥生/監修:齊藤英和 先生)

※画像はイメージです

参考文献
[*1]病気が見えるvol.9婦人科・乳腺外科, p.219, メディックメディア, 2018.

※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました

※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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