【医師監修】セックスから受精・着床までの仕組みとは?
セックスを経て妊娠が成立するまでの時期は、自覚症状を感じない人も多いのですが、体の中では実にさまざまな奇跡が起こっています。受精から着床までの詳しい段階を、日数とともに詳しくご紹介します。
「受精」「着床」「妊娠」とは? いつ・何が起こる?
妊娠にまつわる言葉の中でも、「受精」「着床」は耳にしたことがある人がおおいでしょう。ここではこれらの意味を改めて解説します。
受精とは 排卵・射精からどのくらい?
男性から射精された精子が女性の卵子にたどり着き、合体することを「受精」といいます。
女性側の「卵子」
「卵子」は、卵巣の“卵胞”という袋の中で育ちます。卵子が十分に成熟すると、卵子は卵胞からひとつだけ排出されます。これを「排卵」といいます。
排卵された卵子はまず、卵管の先にある卵管采に取り込まれ、そこから少し子宮側にある卵管膨大部という場所で精子を待ちます。
なお、卵子の寿命すなわち受精能力があるのは排卵されてから約6~12時間と言われています。
男性側の「精子」
一方、「精子」は射精によって女性器内に送り込まれます。このときの精子の数は約2~3億。精子は⼥性の⼦宮、卵管の⼊り⼝を通過して、卵管膨⼤部を⽬指します。
しかし、卵子のもとにたどりつけるのはそのうちの約300~500個のみ。さらに、卵子と受精できるのはたったの1つです。精子は我先にと卵子の中に入り込もうとしますが、1個の精子が卵子に入ると、卵子の透明膜の性質が変わり、ほかの精子が入り込めないようになります。
精子が女性の体内で生きていけるのは、約72時間。
その間に精子と卵子が出会わなければ受精できません。
着床とは 受精から着床までは何日かかる?
受精後、受精卵は細胞分裂を繰り返しながら、卵管の中を通って子宮に移動し、受精から5~6日後に子宮に根を下ろし始めます。これを「着床」といい、受精から12日後ごろには着床が完了します
着床の段階に入って初めて「妊娠が成立した」ということになりますが、妊娠は最終月経開始日からカウントを始めますので、多くの場合、排卵の時点で妊娠2週目、着床が始まる時点で妊娠3週目ということになります。
妊娠したら? 妊娠検査薬はいつから使える?
妊娠が成⽴すると、hCG(ヒト絨⽑性性腺刺激ホルモン)が形成中の胎盤でつくられ始めます。このホルモンは、着床後から尿の中に排出され始めます。市販の妊娠検査薬では、このhCGが尿の中に含まれるかどうかを調べます。胎盤からのhCG分泌が徐々に増加し、妊娠検査薬で妊娠しているかどうかがわかるのは妊娠4週目頃(次の月経開始予定日ごろ)です(微量ながらこの前から尿中に排出されているので、妊娠4週を迎える前に陽性反応が出ることもあります)。
hCGは黄体を刺激して、エストロゲンとプロゲステロンの分泌を促します。すると、子宮が妊娠の維持に適した状態に保たれるとともに、排卵が抑制されて月経がストップします。
着床時期に⾒られる症状は?
着床が始まる時点で妊娠3週目に入りますが、この頃は妊娠したとわかるような体調の変化は少ないでしょう。しかし、着床すると人によっては下記のような症状が出ることがあります。
ただし、着床出血以外のものは月経前に起こる症状とよく似ているうえ、起きる時期も月経1週間前あたりと同じような時期です。ですから、このような症状が妊娠によるものか月経前の症状かを判断することは難しいです。
着床出⾎がある
人によっては着床するときに少量の出血を生じることがあります。
着床出血は妊娠した女性のうち8~25%にみられ [*1]、妊娠に気づいていない場合は月経と間違えることもあります。
胸の痛み
胸にはりを感じ、痛みやかゆみを伴うこともあります。
つわりや倦怠感
人によっては気持ち悪さなど消化器系の不快な症状を感じ始め、同時にだるさや眠気などを感じる人もいます。
腰痛・頭痛
腰痛や頭痛がある場合もあります。鎮痛剤などの使用に関しては、妊娠の可能性も考え、事前に医師に相談したほうがよいでしょう。
受精卵が出来ただけでは特別な症状は起こりにくいので、妊娠3週より前に体調変化が起きることはありませんが、受精卵が子宮内膜に着床した際には、主に以下のような変化が起こります。妊娠検査薬で結果が出る前の頃に出る症状は、妊娠超初期症状といわれます。
まとめ
受精から着床までは、まだ自覚症状はありません。しかし、体内では生理が止まり妊娠初期へととても大きな変化が起きています。妊娠を望む人にとっては、「ちゃんと受精できているのかな」「着床はまだかな」などと、ドキドキしながら待っているかもしれませんね。はやる気持ちはあるかもしれませんが、妊娠が確認できる時期まで、なるべくリラックスして過ごしたいものです。
(文:今井明子/監修:齊藤英和先生)
※画像はイメージです
[*1]池ノ上克ほか「NEWエッセンシャル産科学・婦人科学」(医歯薬出版)p.327
「標準産科婦人科学」(医学書院)
可世木久幸ほか「STEP産婦人科学」(海馬書房)
「病気がみえる 産科」(メディックメディア)
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます