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2021年09月30日 11:00 更新

部署で最初の男性育休、1ヶ月でも取って良かったと会社員パパが思う理由 #男性育休取ったらどうなった?

2022年4月から育児・介護休業法の改正により、働く男性も育児休業を取りやすくなることが期待されています。それに先立ち、すでに育休を取得して子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」をお送りします。

男性育休インタビュー バナー

「1ヶ月でも育休取って良かった」高木家

今回のパパ
高木隼人さん/30歳/人事・研修企画(情報サービス系)

●ご家族
妻:高木優香さん/29歳/マーケティング・商品企画(化粧品)
長男:みなとくん/0歳
(※お名前はすべて仮名です)

●高木家の育休
第一子誕生(2021年6月)
妻:出産~現在も育休中
夫:2021年6月下旬~7月末まで(1ヶ月)

高木隼人さんのタイムスケジュール

男性育休インタビュー タイムスケジュール

業務の棚卸しと整理 ⇒ 安心して育休に

男性育休インタビュー 高木さん
パパに絵本を読んでもらうときはゴキゲン
ーー育休を終えたばかり、ほやほやですね! 初めての育児はどうですか?

高木さん うちは妻の実家が電車で30分ほどの近距離なので、産後退院してから1ヶ月は妻は実家で休ませてもらいました。それで、生後1ヶ月のタイミングで僕も育休に入って、家族3人の生活を開始したんですね。これがもし、育休を取らずに普通に働いていたら、赤ちゃんにしてあげるケアを全部奥さんがやることになったのかもしれない。そう思うと、本当に取れて良かったです。
赤ちゃんって大体、3時間おきくらいに泣いて起きて、おむつ替えたりミルクをあげたり、夜中でも関係がない。お世話してたら絶対に寝不足になりますよね。ここを夫婦そろって体験できたことは、夫婦の価値観を共有する意味でもすごく良かったです。

ーー高木さんの職場では、すでに男性育休の取得実績がありましたか?

高木さん 会社としては数例ありましたが、僕のいる部署ではまだなかったんです。ただ、直属の上司も未就学児の子育て中で、理解があって。年明けくらいに「6月頃出産予定なんですが、できれば育休を取りたいです」と打ち明けたら、「頑張れ」と応援してくれました。

ーー前例がなくても、自分は育休取るぞ! と思っていたのですね。

高木さん これは妻の妊娠発覚以前から思っていたんですけど、自分の人生という長いスパンで考えたときに、子どもと過ごせる時間はすごく貴重なものになるだろうと想像していて。制度的には男性の育休はありなわけですし、会社の風土云々はいったん抜きにして、その貴重な時間を意図的に取れるなら絶対に取りたいと思っていたというのが大きいです。

ーーこれはもちろん女性もそうなんですけど、出産と育児による一時的な仕事のセーブがその後のキャリアに影響を及ぼすことには不安もあると思います。そういった不安は持ちませんでしたか?

高木さん そうですね。とても恵まれていると思うんですけど、ちょうど休みを取りやすいタイミングでもあったんです。僕は今の部署に配属されて3年めなのですが、今年の4月に後輩がジョインしたので、僕の中でも仕事の棚卸をして、任せられるところは任せるようにしました。チームの仲間も協力してくれて、自分が担当するものも育休前までに進めておいて、「戻ってきたら、ここからやる」と整理して、育休に入れましたね。たった1ヶ月だけですけど仕事を離れることで、それまで抱えていたものを整理できて、後輩に機会も渡せて、良いタイミングだったかなと思います。そういうふうにポジティブに捉えました。

ーー定期的な業務の棚卸しと整理って必要ですし、抜群のタイミングでしたね。育休期間は職場で相談して決めたのですか?

高木さん そこはどっちかというと僕が気を使ってしまって……「1ヶ月くらいでどうでしょうか」と言ってしまいました(苦笑)。全然、何か言われたわけではないのに、それ以上長いと悪いかなって思ってしまったんです。でも今思えば、もう1~2ヶ月取っても大丈夫だったかなって。それにやっぱり、もうちょっと子どもが夜にまとまって寝るようになってからのほうが、妻の負荷は違っただろうなと感じています。

ーー奥様は男性育休についてどういった反応でしたか?

高木さん もうそこは「是非是非!」でした。やっぱり初めてですし、不安もあったと思うので。

ーーうんうん、そうですよね。家事の面でも、育休中は高木さんが多めに担当していました?

高木さん 妊娠前、家事の分担は「妻:料理」「夫:皿洗い、ゴミ出し、お風呂洗い、買い物」で、育休中は僕がそれにプラスして、「子どもとお風呂(朝、夜)、子どもと早朝散歩」というタスクをしていました。
男性育休インタビュー 高木さん
皿洗いは「ご飯を作っていない方」が必ず担当
ーー掃除と洗濯は、分担せずですか?

高木さん 産まれるまでは、気づいたほうがやっていたんですけど。妻は料理を作るとかクリエイティブな方が得意なので、僕は片付ける係なんです。だから、「作る」と関係のない家事は基本的に僕が担当するようにしています。あと、料理を作ってない方が皿洗いするっていうのは決まりになってます(笑)。

ーーそれは作る人の精神衛生上すごくいいですね。自分だけが作って片付けもして、だとイライラしちゃいます(笑)。

高木さん でも仕事復帰したら、子どものお風呂に時間が間に合わなくて……それが申し訳ないですね。赤ちゃんはよく汗をかくので、夏は夜だけじゃなく朝もお風呂に入れていたんですけど、これがなかなか重労働なので、それをやってあげられてないのが負担になってるかなと思っています。お風呂ってただお湯で洗うだけじゃなくて、出た後に保湿してあげたり、わりと時間もかかりますしね。

背中の痛みと腱鞘炎! 夫婦で満身創痍の初育児

男性育休インタビュー 高木さん
就寝前はミルク。調乳セットはキッチンのそばにまとめて。「消毒は電子レンジでチンするケースがすごく便利です」
ーー今はコロナ禍なので、立ち会い出産や両親学級も制限されていたところが多いようです。高木さんのところはどうでしたか?

高木さん うちは妊婦さんしかクリニックの建物内に入れなくなって、妊婦健診の付き添いもできませんし、立ち会い出産もできなかったです。両親学級や父親学級もなかったですね。前提として付き添いの人も病院には入れない、妊婦しか入れないと厳格なルールが定められまして、出産後にガラス越しの面会もできず……対面できたのは、退院後でした。

ーーそれは奥様も心細さがあったでしょうね。

高木さん そうですね。毎日、LINE電話してました。退院してそのまま妻は実家で1ヶ月、産褥期を過ごさせてもらって。僕も会いに行きましたが、平日はどうしても21時とか遅い時間になってしまうので、土日だけでした。

ーー最初はなかなか会えなかったんですね。そうして1ヶ月健診を終えてから、家族3人の生活に。

高木さん ちょうど1ヶ月健診でOKが出たら、赤ちゃんの外気浴ができるようになるじゃないですか。でも7月ってめちゃくちゃ暑くて、外に出るのもしんどいですよね。僕はもともと朝型なので、5時に起きて涼しい時間に息子を抱いて近所を散歩していました。息子は抱っこ紐がすごく好きで、家の中でもいいんですけど外のほうがぐっすり寝てくれるかなという感じでしたね。

ーー抱っこが好きなんですね。寝かしつけのときも、お布団でトントンするよりも抱っこ派ですか?

高木さん 寝かしつけは大体、抱っこですね。しかも立って抱かないと泣きます。座るとすぐバレちゃうんですよね。最初は横抱きでも良かったんですけど、最近は縦抱きじゃないと寝ないっていうこだわりが出てきました。あの、これは全員当てはまると思うんですけど、夜泣きってほどひどくはないんですが、夜中でも赤ちゃんは平気で泣いて起こしてくるので、それはすごく大変なことだなと実感しましたね。
男性育休インタビュー 高木さん
愛用の抱っこ紐。夏はハンディファンも必須アイテム
ーー本当、それによる睡眠不足は多くの親のメンタルに影響していると思います。みなとくんは、わりと起きますか?

高木さん 調子が良ければ4-5時間連続で寝てくれるんですけど、3ヶ月の今も週の半分は3時間ごとに泣きますね。19時に寝たとして、22時くらいに一回起きて、次は1時、4時と。これを全部一人だけで対応するとしたら、大変すぎますよ。ほとんど眠れませんよね。この経験は、パパも絶対にしておいたほうがいいだろうと思いました。どれだけしんどいか、知っておかないといけないです。

ーー心から同意です……! 寝かしつけはどんなふうにしてますか?

高木さん 僕はもう、抱っこ紐で寝かせてそ~っとおろすやつです。抱っこ紐を装着して、自分がゆらゆら揺れてます。でもこの動きが、背中にきました(苦笑)。普段使わない筋肉を変なふうに使ってしまったようで、抱っこした直後にじ~んって鈍痛が続いていて。ここ2~3週間は接骨院通いで、だいぶ良くなってきました。そこの接骨院は赤ちゃん歓迎で、寝かせておけるスペースもあるんですよ。ありがたいですね。

ーーそれはとってもありがたいですね。奥様は産後、体調はいかがでしたか?

高木さん 帝王切開だったので、その痛みはつらかったようです。ただ、今は手首の腱鞘炎ですね。あるあるだと思うんですけど、授乳や沐浴や抱っこで手首を痛めてしまって。それもあって、僕がお風呂をやれていないのがすごく申し訳ないんですよ。

子どものいる生活はストレス。でもすごく愛おしい

男性育休インタビュー 高木さん
お気に入りのオモチャ。手で握って遊べるようになってきました
ーーパパの育休で、夫婦そろって子どもに向き合う時間が取れましたよね。1ヶ月という短い期間ではありましたが、どんな変化があったと思いますか。

高木さん 何より、育児はチームでやるものだなという認識になりましたね。子育てを2人でやっていこうって夫婦の絆ができたと感じています。そう思えた背景として、子育ての方針というか価値観で、最初は小さなことですけど夫婦の相違があったんです。でも、話し合って認識を共有できたなって。

ーーどんな相違があったんですか?

高木さん たとえばなんですが、赤ちゃんが泣いているときの対応。ある程度泣かせていてもいいのか、すぐにそばへ行ってケアしてあげるのか、みたいなところで、少し揉めたことがあって。僕は「少しくらい泣かせていてもいいんじゃない?」と思っていたけれど、向こうはそうじゃないと。なぜかというと、赤ちゃんは今は泣くことでしか不快を表現できない、そこで歩み寄ってあげたかが、のちのち子どもの安心感や信頼につながると思う、と説明されたんですね。それを聞いて僕も「ああ確かにそうだな」って思えました。僕は多少泣くのも運動になるんじゃないかなと思っていたけれど、妻の考え方に納得したので、今はそうしています。

ーー育休中、そういった話し合いを重ねる時間も持てたわけですね。夫婦の価値観のズレや誤解を、放置せずに話し合えた。

高木さん それでチーム感は増しましたね。それに、お互い息子のことが何より大切だという気持ちは同じなので、方向性が違うわけじゃない。その思いをお互いに確認して、夫婦間の信頼を強くする期間でもあったと思います。ずっと忙しく働いていたら、そういうコミュニケーションを取る時間もなく疎かにしていたかもしれないので、家族に専念できる時間があって本当に良かったです。
男性育休インタビュー 高木さん
素早いおむつ替えは得意
ーーこれから先、お子さんの予防接種スケジュールを組むのが大変だったり、保活したり、保育園で熱を出したり……といったフェーズも来ると思いますが、そういうときに両親ともに同じ当事者として関われることは、大きいですよね。

高木さん はい。妻も、「育休を取ってくれたことで、意見が言いやすい関係になった」と言ってくれています。そういえば、「テレビの音量とか部屋の明るさとか、寝る前にそういうのもっと気にしてね」と言われたこともありました。確かに、と気づいて、それから気をつけるようにしています。

ーー子どもがいる生活って、家の中でもある程度、自分の自由が制限されたりしますよね。でもその状態に適応することは親として必要で、育休期間はそれを実感できるんじゃないかと思います。出産前と生活リズムが変わらなかったら、たぶん気持ちも変えられないですし。まるっと生活リズムを赤ちゃんに会わせる期間を持てることが、男性育休の大事なところのひとつかなと思います。

高木さん そうですよね。それに、他にもいいところはたくさんあって。何よりも僕としては、息子が日々成長するので、そのちょっとした変化が毎日楽しいというか。今日はすごく気持ちよさそうに寝ていたとか、初めてちょっと笑ってるとか、そういう小さなことの積み重ねが育児の楽しさだと僕は思うし、身体的な成長もすごく早いので、毎日見逃さずにいられたのは良かったなあと思います。

ーー毎日「可愛いなあ~」って思っちゃいますよね。

高木さん 子どもへの愛情がどんどん深まりましたね。生活リズムの話じゃないですけど、育児は当然、ストレスがまったくないわけではないし、むしろこれまでにないストレスを感じたりするところもあるんですけど(苦笑)、そのような中でも子どもが可愛い、大事だなと思えるのが愛情かなと。寝る時間とかはすごく削られるわけで、寝るのを邪魔されるみたいな気持ちになることもないわけではないですし、「うわー、いま泣くかー」ってことも正直あります。でもそれは仕方ないと割り切れますもん。

第二子も検討中。「次は絶対もっと長く取ります」

男性育休インタビュー 高木さん
ママ手作りのメリーが息子くんはお気に入り!顔の近くで揺らすとニコニコになります。「100均の材料で作れちゃう」そう
ーー奥様の職場復帰はいつの予定ですか?

高木さん うーん、保育園次第ですね。住んでいる区は結構、待機児童が多くて激戦区といわれているので、どうしようかと。実は2人目も欲しいので、職場復帰してまたすぐに妊娠して休むよりも、まとめて取っちゃうのもなくはないかも……とか妻と話し合っています。

ーーそれもありなんですね。

高木さん 妻の職場は子育て社員のサポートが手厚いといいますか、基本的に在宅ワークになっているんです。コロナ禍で本格的に在宅の動きが始まって、このまま定着させるようなんですね。出社するとしても週1~2、あとはリモート。働きやすい会社なんだと思います。ですから、2人出産してからの復帰も可能性としてはありなんですよね。

ーー働き方に柔軟性があって素晴らしい。第二子を授かったとしたら、次も高木さんは育休を取りますか?

高木さん 取ります! 今回より絶対長く、少なくとも3ヶ月は取りたいです。それに自分だけじゃなくて、育休はもっと男性みんなが取れるようになっていくといいなあと思います。育休を取りたい人が取れることはもちろんなんですけど、育休期間の家計を考えると「取れない」というケースもありますから、社会的にこの期間の金銭的フォローも手厚くしてくれたらいいのにとも思いますね。手取り換算だと多分、最初の6ヶ月はそんなに収入が減らないはずなんですけど、残業代とかはないので家計が厳しくなるケースはやはりあるだろうと。将来の教育費も含め、子どもを育てることの大変さを踏まえると、子育て世代への金銭的なフォローはもっとあってもいいんじゃないかと思いますね。

ーー教育といえば、まだ先のことではありますけど、これからパパとして子どもにしてあげたいことって何か考えていますか。

高木さん 子どもに対しては様々な選択肢を与えてあげたいなと思っていて。そのためにいろんな体験もさせてあげたいし、機会をたくさん作ってあげたいなと思っています。僕、幼少期から学生時代までサッカーしかやってこなかった人間なんですよ。それしか知らなかった。でも今、選択肢をもっと知っていれば違うこともしていたんじゃないかな? っていう思いもあるんです。だから、君の前にはいくつもの選択肢が広がっているんだよと教えてあげたいですね。

(取材・文:マイナビ子育て編集部、撮影:尾藤能暢、イラスト:すみれ)

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