生後10ヶ月で卒乳は早い?<体験談>栄養不足を防ぐポイント【助産師・管理栄養士解説】
赤ちゃんの成長を実感する最初のステップのひとつ、「卒乳・断乳」。でも、タイミングを決めるのはなかなか難しいものです。1歳のお誕生日を迎える前、生後10ヶ月や11ヶ月ごろに卒乳しても良いのでしょうか。助産師の坂田先生、管理栄養士の川口先生にポイントを解説してもらいます。
生後10ヶ月で卒乳できた?<体験談>
アンケート調査で、赤ちゃんが「生後10ヶ月のとき卒乳した」と回答したママの体験談を紹介します。
10ヶ月で卒乳した人の体験談
※マイナビ子育て調べ 調査期間:2021年10月28日~2021年11月12日 調査人数:150人(21歳~40歳以上の女性)の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
生後10ヶ月の赤ちゃんはどのくらい成長している?
赤ちゃん(乳児)というと、だいたい1歳になる前までを指しますが、生後10ヶ月はそろそろ赤ちゃん卒業が見えてくるころ。このころの体の成長や心の発達はどの程度進んでいるのか、知っておきましょう。
身長・体重
生後10~11ヶ月児の身長・体重[*1]
身長 | 体重 | |
男の子 | 68.4~77.4cm | 7.34~10.59kg |
---|---|---|
女の子 | 66.5~75.6cm | 6.86~10.06kg |
あんよ、言葉
このころは、「ひとりすわり」や「はいはい」をする赤ちゃんが多くなっています。まだ少ないですが、「つかまり立ち」ができる子も増えてきます[*1]。
泣いたり笑ったりする以外に、「アー」「ウー」といった喃語(なんご)を発するようにもなっています[*2]。
睡眠
生後10ヶ月ごろの赤ちゃんの一日の睡眠時間は「12~15時間前後」。
低月齢のうちは眠っては起きるを短時間で繰り返していましたが、このころには連続して眠れるようになり、睡眠の大半を夜間にとるようにもなっています[*3, 4]。
生後10ヶ月に卒乳して大丈夫? やり方とポイント
さて、まだ0歳代の生後10ヶ月。この時期に卒乳しても問題ないのでしょうか。
10ヶ月は早め。卒乳するなら栄養を補って
卒乳は、「生後●ヶ月」とか「●歳」というように行う時期が決まっているものではありません。基本は、赤ちゃんの欲求に合わせて進めていきます。
しかし、基本的に10ヶ月での卒乳は早いといえます。一般的に離乳完了期は1歳~1歳半とされていますので、1歳くらいまでは母乳やミルクで摂れる栄養がまだまだ大切です。
もし何かの理由でどうしても卒乳しなくてはならないのであれば、母乳やミルクから摂れるはずの栄養を食事でしっかり補っていきましょう。
赤ちゃんが「離乳食から十分にエネルギーや栄養分を摂れるようになっているかどうか」は大切なポイントです。急にやめる場合はそのエネルギーのギャップが気になるところです。
基本的に生後9~11ヶ月はまだまだ母乳やミルクから栄養を摂る時期であり、全体の約半分くらいのエネルギーを母乳やミルクからとっているような時期です。ですから、もしこの時期に卒乳するのであれば、離乳食から十分にエネルギーや栄養分を摂れるようになっているかどうかはより重要です。
離乳食も赤ちゃんの成長に合わせて進めていくものなので個人差はありますが、生後5・6ヶ月ごろに開始することが多く、生後10ヶ月ごろになると「離乳後期(カミカミ期)」に入っている子が多くなります。このころの離乳食の与え方や量などの目安は下記の記事を参照してください。
ただ、下記の記事で紹介している量は、母乳やミルクを与えていることを前提としています。ですから、10ヶ月ごろで卒乳した場合は、離乳食の量や回数を増やしていく必要があります。食事はこれだけでいいと目安量で決めつけず、一般的な目安量よりも多くとることを心がけましょう。
赤ちゃんの成長と元気そうかに注目
もし10ヶ月ごろに卒乳をしたとするならば、離乳食は目安量よりも多めにとることが大切ですが、離乳食の量や回数は、その子の成長や発達に左右されます。
また、赤ちゃんだってたまたま食事時に食べたくなかったり、食欲がなかったりする日もあります。では、離乳食を十分食べているかどうかは、どうやって判断すればいいのでしょうか?
離乳食が順調に進んでいるかどうかわからないときは、「赤ちゃんの体重が順調に増えているか」「赤ちゃんが元気そうか」に気を付けてみましょう。
離乳食後期には3回食に移行していきますが、授乳のタイミングがなくなるわけですから、1日5回ほど食事があるくらいでOK。一度になかなか量を食べることができないので、食べそうな時間にもう一度あげてみると良いですよ。
できるだけ自然に進める方法
卒乳とは、基本的に「赤ちゃんが自然に母乳を飲まなくなること」ですが、1歳前後の赤ちゃんが自然に卒乳することはあまりないようです。
1歳前に急に卒乳をしようと思っても、赤ちゃんはなかなかおっぱいから離れません。ママが無理やりおっぱいから気をそらせようとすればするほど、赤ちゃんがおっぱいを欲しがるようになったというご相談もありました。
卒乳のタイミングも重要ですが、「赤ちゃんの心の準備」がカギになります。 そろそろ、卒乳にしたいなと思っているようでしたら、1ヶ月くらい前から赤ちゃんに話しかけてみましょう。まだ言葉は話せないですが、少しずつ理解してくれるように感じます。
そして、いったん卒乳しようと思ったとしても、その子にまだおっぱいが必要そうだと感じたら、もう少し先延ばししてあげてください。 なので、ママは少し余裕をもったスケジュールで、トライしてみるといいですね!
ただ、母乳の場合、「職場復帰するから」「睡眠不足をなんとかしたい」など、ママ自身におっぱいを止めたい気持ちが強いなら、それもまた卒乳を始める立派な動機となります。そんなとき試してみてほしい計画的卒乳の方法とポイント・注意点を紹介します。
計画的卒乳のやり方
ポイントと注意点
ミルクの場合は?
「育児用ミルク(乳児用調製粉乳)」は、母乳の代わりに赤ちゃんに栄養補給するもので、対象年齢は「生後0~12ヶ月」です[*5]。
ミルクの場合も、「離乳食から栄養を十分に摂れる」ようになっていて「体重が順調に増えている」ことが、卒乳時期を決める目安になります。
フォローアップミルクは必要?
「フォローアップミルク」は、離乳期以降に不足しがちな「たんぱく質」や「鉄分」などをバランスよく補うためのものです。ただ、育児用ミルクのように母乳の代わりになるものではありません。
フォローアップミルクは、「離乳食をしっかり食べられていて体重が順調に増えている」のであれば、とくに与えなくても大丈夫です。
生後10ヶ月の卒乳の注意点
生後10ヶ月ごろに卒乳するとき、注意したほうが良いことはあるのでしょうか。
鉄分不足に注意
赤ちゃんは通常、体の中に鉄分を蓄えた状態で生まれてきますが、その貯蔵鉄は生後6ヶ月ごろから不足し始めると言われています。鉄分が不足すると「鉄欠乏性貧血」になる場合があります。
実は、母乳には鉄分がほとんど含まれていません。そのため、生後6ヶ月以降は離乳食などで鉄分を補ってあげる必要があります。とくに、発育のさかんな生後9ヶ月以降は鉄分が不足しやすくなります。
ミルクやフォローアップミルクを離乳食に活用
一方、育児用ミルクやフォローアップミルクは鉄分が添加されています。鉄分というとレバーが思い浮かぶかもしれませんが、レバーだけで乳児期に必要な鉄分を補給しようとするとビタミンAの摂り過ぎが心配です。
そんなときおすすめなのが「離乳食に、育児用ミルクやフォローアップミルクを使うこと」。母乳だった赤ちゃんでも、離乳食の素材としてなら口にしやすいのではないでしょうか。「おかゆに入れてミルクがゆ」にしたり、「野菜や肉・魚などをミルクで煮る」「バナナと混ぜておやつ」など、月齢に合ったメニューでとり入れてみましょう。
母乳の場合はビタミンD不足にも注意
母乳で育った赤ちゃんの場合は、「ビタミンD不足」にも注意が必要です。ビタミンDは、不足すると骨の変形や成長障害を起こすリスクがあります。母乳栄養中心の0~6ヶ月児ではビタミンD不足の子が多かったとする報告もあります[*6]。
ビタミンDは魚や卵、キノコなどに含まれていますが、日光浴によって皮膚でも作られます。そのため、離乳食をバランスよく食べさせるとともに、散歩や外気浴で適度に日光を浴びるようにしてあげましょう。
また、鉄分同様、育児用ミルクやフォローアップミルクに添加されているので、これらを離乳食に利用することで補うこともできます。
部分的卒乳という方法も
少し早めに卒乳したいと思う理由が「睡眠不足」なら、夜寝ている間だけ授乳をやめたり、回数を減らしたりする「夜間断乳」から始めてみる方法もあります。くわしいやり方は以下の記事を参照してください。
なお、授乳は赤ちゃんに栄養を与えるだけでなく、親子のきずなを深め、赤ちゃんに安心をもたらすものでもあります。
卒乳の仕方がどのようなものであっても、授乳を減らしていく分、たっぷりスキンシップをとりながらできる限り徐々に進められると良いですね。
まとめ
日々、育児をするなかで、赤ちゃんの成長を感じる大きな出来事のひとつが「おっぱいやミルクからの卒業」ではないでしょうか。ここで解説したとおり、卒乳の際は、離乳食をしっかり食べられているかどうかが大切です。また、栄養だけでなく、母乳やミルクの授乳は、赤ちゃんとのスキンシップという面で大事なひとときでもあります。その子のペースに合わせて徐々に卒乳は進めつつ、折に触れてたくさん抱っこしてあげるのも忘れないでくださいね。
(文・構成:マイナビ子育て編集部/監修・コメント:川口由美子先生、坂田陽子先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省『平成22年乳幼児身体発育調査の概況について』調査結果の概要
[*2]『デンバー発達判定法 DENVERⅡ』W.K.Frankenburg.M.D,2005 ㈳日本小児保健協会 日本小児医事出版社
[*3]厚生労働省:未就学児の睡眠指針
[*4]Hirshkowitz M. et al.: National Sleep Foundation's sleep time duration recommendations: methodology and results summary, Sleep Health . 2015 Mar;1(1):40-43.
[*5]日本乳業協会 「乳児用調整粉乳」と「フォローアップミルク」の違いは何ですか?
[*6]クリニックばんびぃに「母乳だけで育つ乳児の75%がビタミンD不足(日経メディカルに掲載されました)」
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます
※マイナビ子育て調べ 調査期間:2021年10月28日~2021年11月12日 調査人数:150人(21歳~40歳以上の女性)の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。