保護者会の会費は払わなくていい? 保育園の保護者会の意味と役割(後編) #渡邊大地の令和的ワーパパ道 Vol.29
『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』『夫婦のミゾが埋まらない 産後にすれ違う男女を変えるパートナーシップ学』(ともにKADOKAWA)など、夫婦のパートナーシップをテーマにした著書が話題の渡邊大地さんによる新連載! 令和における新たなワーパパ像を、読者のみなさんとともに考えます。
Nintendo SwitchやiPadなどで遊べるゲーム「Minecraft」(マインクラフト、通称マイクラ)。ブロックで建築したり、動物を飼ったり、冒険をしたりといろいろな遊び方ができるそうで、5歳の娘も長らくハマっております。ぼくは、まったく遊び方を知りませんし、触ったこともありません。
先日娘から、「パパぁ、“エンダーマン”って、いるじゃん」と尋ねられました。どうやら「マイクラ」に登場するキャラクターのようですが、ぼくにはさっぱりわかりません。
「ごめん、それわかんないわ」
「じゃあ、“どどめき” しってるでしょ?」
「……知らない」
「“シャイガイ”は?」
「……知らない」
「“はっしゃくさま”」
「……知らない」
「“ミュータント”……もういいや」
見限られました。
皆さん、こんにちは。渡邊大地です。今回も、「ワーパパ」とは何たるかを一緒に考えていきましょう!
保護者会は保育園が作ったわけじゃない?
前回、保育園の保護者会活動について大まかに紹介しました。
●保護者会が主催する行事等の運営
●役員会議の開催
●保護者会費の適切な使用・監査
これらを行うために「保護者会役員」がいるんだ、という話でした。
今回は3つ目の「保護者会費の適切な使用・監査」という部分についてお話ししたいと思います。
この役割は、一言で言うと「保護者会費」の使いみちが間違っていないかをチェックする、ということです。
前回も少し触れましたが、「保育料を払ってるのに、さらに保護者会費って何だそれ?」と思われたことはありませんか?
ぼくは保育園の保護者会役員を全部で4年間やりました。その中で何度か「保護者会費ってなんで必要なの? うちだけ保護者会を抜けてもいいですか?」という投書をもらったことがありました。
保護者会費の考え方って、「保護者会があるから保護者会費が発生する」のではなく、「保護者会費があるから保護者会が必要になる」という特徴があります。頭の中が「?」でいっぱいになりますよね(笑)。
では、その「保護者会費」とは何のためのお金なのか?
これも簡単に言うと、保育園行事を充実させるための資金です。保育園で生活していくうえで、何をするにもお金がかかりますよね。公立保育園であれば、当然、保育園の運営費用は市区町村から出ているわけですが、それだって潤沢にあるというわけではなく、必要最低限です。それを補うために「保護者会費」が使われます。
……というと、「何で保育園でお金が足らんものを、保護者に請求するんだ?」と思った人もいるのではないでしょうか?
ここで大事なのは、「保護者会は保育園が作ったものではない」という点です。保護者会って、もともとその保育園に子どもを通わせている保護者が「保護者会があった方がいいよね」と有志で作ったものです。
前回、「保護者会はどこの保育園にもあるわけではない」と言いましたが、先人たちが保護者会の必要性を感じていなければ作らないまま現在に至る、というわけです。
ということは、今保護者会がある保育園というのは、過去に先輩たちが必要性を感じて保護者会を作ったことになり、つまり、先輩たちが「保育園行事に保護者からお金を出そう」と思って作った、ということになります。
クリスマス会のプレゼントは“当然”じゃない
わかりやすく例を出しますね。
たとえば、多くの保育園で12月に「クリスマス会」という行事をすると思います。子どもたちがホールなどに集まって、クリスマスの歌を歌ったり、先生たちが出し物を見せてくれたり、みんなでクリスマスっぽい給食を囲んだり。ハイライトは、サンタクロースに扮した先生(または近所の有志のおじさん)が登場して、「メリークリスマス!」などと言って子どもたちの歓声を浴びることです。
さて、ぼくが住んでいる埼玉県所沢市、保護者会がない公立保育園では、サンタさんが大きな袋からオモチャを“ひとつ”取りだして、「みんなで仲良く使うんだよ」と言って置いていきます。
一方、保護者会がある園では、サンタさんが大きな袋から子どもたち“ひとりずつ”にプレゼントを渡してくれます。これが、保護者会費があるかないかの違いです。
保護者が、クリスマス会では子どもたちひとりずつにプレゼントを渡してあげたい、と思ったから、そのためのお金を保護者会費として集め、保育園にそのようなイベントを依頼している、というわけです。
※わかりやすく例示しましたが、クリスマス会の実施方法は地域や園によってさまざまです
保護者会費は年間行事に大いに関係する!
我が子が通ってきた保育園では、クリスマス会のプレゼントのほか、運動会で年長クラスの子たちに金メダルをプレゼントする、卒園式で年長クラスの子たちに卒園記念品をプレゼントする、というような行事を盛り上げるための費用に充てられていました。
その他、保護者会費がないと実現できないようなイベントにも充てられています。
●地元の畑で芋掘りをする
●劇、人形劇、楽器の演奏家などを呼んで芸術鑑賞する
●太鼓演奏家を呼んで、太鼓の指導を受ける
などなど。
そして、なんと言っても保護者会と言えば、「夏祭り」じゃないでしょうか。夏に、園庭や園舎内に出店(でみせ)を出し、親子で飲食をしたり、園児の出し物を観覧したりして家族ぐるみで参加する行事です。子どもたちも毎年楽しみにしています。
これらが通常の保育園運営に組み込まれていない場合、保護者会費がないとその行事自体が開催されない、ということになるはずです。我が子の通う保育園に保護者会費がなかったら、年間行事がいくつもなくなってしまいます。
※もちろん、保育園によっては保護者会と関係なく、通常の行事に夏祭りなどを盛り込んでいることもあると思います
そのほかにも、
●各クラスに保護者会費が支給され、保護者の交流(食事会、茶話会など)に自由に使ってよい
●保育園付近の月ぎめ駐車場を借りて、保護者で頭割りにする
●退職・異動する職員に贈り物をする
というような、保育園行事ではない使い方をしている園もありました。
保護者会費を正しく使ってもらうために
今説明してきたように、保護者会費は、保育園行事に予算を上乗せしたり、保育園だけでは開催できない行事を行ったりするために使われるものです。先代の保護者たちが必要に応じて出費を決めてきたものですから、園によっては年間の保護者会費が数百円のところもあるでしょうし、数千円のところもあるわけです。そう聞くと、毎年保護者会費を払うのも納得できますよね?
なお、冒頭にあった「うちは保護者会に入りたくないんですけど」という話をもし受け入れてしまうと、その家庭の子どもだけクリスマス会でプレゼントがなかったり、夏祭りに参加できなかったり、卒園記念品がなかったり、という事態が発生してしまうわけです。そんなのチョベリバですよね。(←古かった⁇)
そんな大事な保護者会費ですから、間違いなく子どもたちのために使われているかをチェックしたり、不要な出費がないか、またはほかに必要な買い物がないのか、といった検討を「保護者会役員」が「役員会議」の中で行っているんですね。
ぼくが以前役員をやっていたときには、「物価の高騰でクリスマスプレゼントの予算が厳しい」と保育園から相談を受けたことがありました。そこで、役員会議で検討し、保護者全体にアンケートを行ったところ、「保護者会費を上げてクリスマスプレゼントのクオリティを維持してほしい」という声が多かったため、翌年度から保護者会費を値上げした、ということがありました。
また、別の園で役員をしていたときには、毎年保護者会費が余ってしまい、その余剰金を何に使うかを話し合うような状況でした。そこで、これも役員会議で検討して「余るくらいなら最初から金額を下げればいい」という意見が多かったので、翌年度から保護者会費を値下げした、ということもありました。
まとめると、
●「保護者会が主催する行事等の運営」について話し合うために
●「役員会議の開催」があり、そのなかで
●「保護者会費の適切な使用・監査」が行われている
――単純に言うと、そういうことです。
前回ぼくは、「保護者会役員をすると、我が子の保育園生活にこれまで以上に興味を持つことができる」と書きましたが、それにプラスして、「保護者会役員をすると、保護者会費の使いみちを知ることができる」というメリットも挙げたいと思います。大切なお金が、子どもたちの素敵な思い出になっていると知ると、保護者会費の役割がいかに大きいかがわかると思います。
保育園行事の充実は、すなわち、我が子の保育園生活の充実です。ぜひ積極的に保護者会役員をやってみてくださいね。
今回のまとめ
(文:渡邊大地、イラスト:村澤 綾香、編集:マイナビ子育て編集部)