保育園の保護者会とは? 役員会議って何してるの? その内容と役割(前編) #渡邊大地の令和的ワーパパ道 Vol.28
『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』『夫婦のミゾが埋まらない 産後にすれ違う男女を変えるパートナーシップ学』(ともにKADOKAWA)など、夫婦のパートナーシップをテーマにした著書が話題の渡邊大地さんによる新連載! 令和における新たなワーパパ像を、読者のみなさんとともに考えます。
長女が最近「意味が分かると怖い話」にハマっています。この話、娘たちの間では「イミコワ」と呼んでいるそうで、要は、サラッと聞くとなんともなく聞こえる話が、よくよく内容を理解すると、幽霊や殺人鬼などが登場していたり登場人物に殺意があることがわかったり、というものです。たとえば、みんなで仲良く写真を撮りあっていたら、一枚だけ全員が写っていた(ほかに誰もいなかったはずなのに誰が撮影したの?)というような類です。怖い話も、現代はここまで手の込んだものにしないと、楽しんでもらえないんですね。
ではせっかくですから、ぼくからも「イミコワ」をひとつ。
妻に先立たれたぼくは、毎日泣き暮らしていました。ある晩、枕元に妻が現われました。
「泣かないで、あなた。天国には一緒にバレーボールをする仲間がたくさんいて、毎日バレーボール三昧なの。私はとっても幸せなのよ。元気を出して!」
それを聞いてぼくの気持ちは少し晴れ、これから前向きに生きていこうと思えました。
そして、去り際に妻が言いました。
「それじゃあ、あなた、元気でね! あ、そういえば、明日のバレーボールの審判、ヨロシクね!」
※解説:天国のバレーボールで審判をするということは、「ぼく」は明日には天国にいるということです
皆さん、こんにちは。渡邊大地です。今回も、「ワーパパ」とは何たるかを一緒に考えていきましょう!
働いてるのに、保護者会活動もさせられるの?
今年新入学・新入園をされた皆さん、ご入学・ご入園おめでとうございます!
我が家も中学校に進学した長男がいますので、新入学組です。11年前に保育園に入って毎日大泣きしていた息子が、制服なんぞ着て中学校に通うようになったと考えると、時が経つのはあっという間だと感じます。
皆さん、気づいたときには子どもは親の身長を超え、声変わりし、野太い声で「ままぁ、ヨーグルト食べていい?」と言ったりしますので、小さい時期の今は一瞬しかないと思っておいてくださいね。
そんな11年前の新入園のとき、親であるぼくが「え? 何それ?」と思ったのが、保育園の「保護者会」でした。入園早々、保護者会名義のお便りが配布され、「保護者会費 ●●円、お釣りのないように準備し、封筒に入れて封をし、期日までにうんぬんかんぬん……」と保護者会費の集金のお知らせが記されていました。
「保育料払ってんのに、その上なんでお金とられるわけ⁇」
しかも、保護者会「役員」なるものもあり、ボランティアで働かなければいけない。
「みんな仕事してるから保育園選んだんだよ? なのに保育園のために働けってどういうこと?」
と大いに疑心暗鬼になったものです。
その後、自分自身が保護者会役員を経験することで、この疑問はすべて解消しました。
新入園を迎えた皆さんには、どうか保育園の「保護者会」を誤解せずに、積極的に関わってほしいと思っています。そこで、今回は、「保護者会」って何?ということをお話ししていきましょう。
なお、「保護者会」って、どこの保育園にも必ずあるわけではなく、保護者会がない保育園もあります。
保護者会活動は面倒くさい?
「保護者会活動」と言われると、どうしても「PTA活動」のようなものをイメージしてしまうと思います。ネットニュースなんかでよく、「PTAをやめたい」「PTA役員が負担だ」「毎年の役員決めのくじ引きが恐怖」という体験談を目にしますので、そんな「やめたい」「負担」「押し付け合い」といったネガティブなイメージが保育園の保護者会にもあるのかと思われがちです。
正直、ぼく自身も我が家の第一子が保育園に入ったときに「保護者会活動」、そして「各クラスから役員選出」なるものがあると知ったときには、「保護者会って、面倒くさそ~……」と思ったものです。
ですが、ちょっとタンマ(←古かった?)。
保育園に通う家庭は、キホン保護者の皆さん働いていますので、保護者会の人たちだって長時間活動したり、何度も会合を開くのをいやがる傾向にあります。
我が家はこれまで、3ヶ所の保育園(市内の公立・認可保育園)に通ってきて、保護者会活動も合計4年間経験していますが、共働きに支障をきたすほどの保護者会活動だったことはありません。
もちろん、保護者会によっては、ゴリゴリに負担がのしかかるようなところもあるでしょうが、確率は低いんじゃないでしょうか。
最近は特に、コロナの影響で、どこの保護者会もかなり簡略化したり、活動時間を短縮しているようです。
保護者会活動は、回りまわって我が子のため
さて、ぼくが冒頭で「保護者会には積極的に関わってほしい」と書いた理由を、最初にお話ししますね。それは、ぼく自身、保護者会活動を経験して、保育園生活や保育園行事に対する理解と信頼が深まったからです。
保護者会の設立目的って、【保護者が働きやすく、子どもたちが保育園生活を充実できるようにする】ということですよね。そのためには、保護者、園児、そして保育園という三者が、みんな気持ちよく保育園で過ごせるようにしなければいけないので、それを達成するために保護者会は保育園とのコミュニケーションが密接になります。
この「保育園とのコミュニケーションを取れたこと」は、ぼくにとって大きな財産になりました。保護者会活動をしていなかったら、保育士さんたちの熱心さや技術の高さに間近で触れる機会がなかったかもしれません。保育士さんを信頼して保育園のファンになったのは、保護者会活動を通して、保育園行事などについて保育士さんと相談する機会を持てたためでした。保育士さんのすごさについて具体的には、過去の記事に詳しく書いていますので、未読の方はぜひご覧ください。
保護者会を経て保育園との関係性が強まり、保育士さんとの絆ができると、先生たちとコミュニケーションを取りやすくなりますよね。そうすると、子どもの話や相談をしやすくなるのはもちろんのこと、保育園での保育方針や行事について、先生たちがどんな意図をもって創り上げているかが分かります。普段何気なく送迎していた保育園で、いかに綿密な計画をたてて一日一日を大切に保育してくれていたかに気付くと、親としてもぜひ保育園を応援したいという気持ちになります。保育園を応援することは、我が子の生活の場を応援すること……つまり、保護者会活動は、回りまわって、我が子のためになる、と言い切ることができるんです。
役員会議は心強い味方
では、そんな保護者会は一体何をしているのか。保護者会の主な活動は、だいたいこんな感じです。
●保護者会が主催する行事等の運営
●役員会議の開催
●保護者会費の適切な使用・監査
順を追って説明しますね。
まず、保護者会を運営する人たちを「保護者会役員」(以後、「役員」)と言います。園によっては「クラス役員」「保護者会委員」など呼び方はそれぞれです。
一般的に、役員は、すべてのクラスから数名ずつ選出することになっていて、または同じ年齢のクラスが複数ある場合は、必ず各年齢から選出することになっている、という場合がほとんどだと思います。「役員」は、クラスの代表者ということです。中学校の学級委員なんかと同じイメージですね。
役員さんは、定期的に「役員会議」を開催します。
「役員会議」は何を話し合うのかというと、概ね以下の3点です。
①保護者会が主催する行事等の運営段取りについて
②保護者から問題提起があったもの
③保育園側から話し合い等の要望があったもの
1)の「保護者会が主催する行事等の運営段取りについて」は、あとでじっくり解説しますね。
2)の「保護者から問題提起があったもの」は、保育園によっては「保護者会のご意見箱」のようなものを設置している場合があって、そこに投函された保護者からの意見について検討します。
・駐車場の台数が足りなくて送迎に時間がかかるので、保護者会で付近の有料駐車場を借りられないか
・保護者会主催行事の日程がいつも都合が悪いので、平日開催にしてもらえないか
・保護者会主催行事の◎◎が毎年負担なので、廃止できないか
・異動・退職する職員に贈り物をしたいが、クラスで集金をするのが難しいので、保護者会費から出してもらえないか
――などなど。
「ご意見箱」がない場合は、直接役員さんが「うちのクラスの保護者からこんな意見がありました」とシェアする場合もあります。
3)の「保育園側から話し合い等の要望があったもの」はめったにないと思われますが、本来②になるはずのところ、保護者が役員ではなく保育園に要望を挙げたりすると、保育園づてに保護者の要望が下りてくる、ということもあります。
一見、クレーム処理みたいで面倒くさいと思うかもしれませんが、保育園生活をする上で、意外と保護者間で解決しなければいけないことが出てきたりします。それを検討するための機関があると、いざというときに心強いものです。
保護者会主催行事で子どもから声援
保護者会活動のメインになるのは、おそらく、
●保護者会が主催する行事等の運営
でしょう。そして、「役員会議」で主に話し合うのが、その段取りです。
保護者会が主催する行事というのは、基本的には「保育園行事だけだと年間行事が少ないので、ほかにも何かあるといいよね」、そして「普段なかなか保護者同士で交流する機会も少ないから保護者も参加できる行事があるといいよね」という名目で設置された行事です。
……が、それってスタート時はそうだったかもしれませんが、今になってみると「伝統的に保護者会がやっているのでやらないといけない」と思われがちなものが多く、ネガティブに受け取られやすいのも事実です。
各地でさまざまな保護者会行事がありまして、よくあるものだと「夏祭り」「落ち葉拾い、からの焼き芋」「芋掘り」「バザー」「卒園準備(卒対)」などでしょうか。
ほかに聞いたことがあるのは、「保護者のための運動会(園児も一部参加)」「川遊び」など。
あとは、行事ではないのですが、「ベルマーク集め」「古紙回収」「駐車場の見守り」などを保護者会役員主体で行っている例もありますし、保護者会はあるけど行事は特にやっていなくて、その代わり「クラスごとの交流会を年に一回役員が主催しなければならない」とか、園児のために「劇、人形劇、演奏家などを招致する」「太鼓の指導者を招いて太鼓指導してもらう」といったことを役員が主導している、というのもあります。
いずれにしても、前提として「園児のためになる」「園児が楽しんでくれる」もの、ということになります。保育園だけではできないことを保護者がやりますので、保育園からはとても感謝してもらえます。と言っても、保育園が関わらずにいることなどできませんから、何かにつけて保育園の手を借りながら一緒に作り上げていくことになります。
もちろん、行事のために何度か集まって準備をしたり、自宅で制作物をしたりする場合もあるでしょうから、それなりに負担はあります。そう聞くと、「やっぱり面倒くさ!」と思われるかもしれませんが、役員として運営した行事等で子どもたちが楽しんでくれると、めちゃくちゃうれしいです。夏祭りの店番だろうと、古紙回収の当番だろうと、我が子から大声援がきますから。
ぼくが以前、夏祭りのエンディングの挨拶をしたときには、その後、ある園児が保育園で夏祭りの絵を描いて、そのど真ん中に、マイクを持って挨拶をしているぼくを描いてくれてたこともありました(我が子じゃないのにですよ!)。
保育園で活躍しているパパやママの姿って、子どもにはすごく眩しく映るんですね。
保護者会をやるといいことばかり
そんな保護者会活動を通して、実際に保育園の生活の一部に触れてみると、いかに保育士さんたちが大変な思いをして、子どもたちの安全を守りながら、日々の生活に楽しさも取り入れて保育をしてくださっているかがよくわかります。そして、我が子の保育園生活にこれまで以上に興味を持つことができます。
ですからぼくは、できるだけ多くの家庭に保護者会活動を体験してみてほしいんです。全家庭が必ずやることにすれば、役員決めで揉めるようなこともなくなって一石二鳥です。
ところで、保護者会の活動の中で紹介した
●保護者会費の適切な使用・監査
については、まだ解説していませんでした。これについては、ぼくも保護者会役員時代に「保護者会費ってなんで必要なの?」という声を何度も聞きましたので、次回じっくりお話ししたいと思います!
今回のまとめ
(文:渡邊大地、イラスト:村澤 綾香、編集:マイナビ子育て編集部)