
【医師取材】花粉症の原因と症状、正しい対策・治療まとめ
くしゃみ、鼻水、目のかゆみ……。不快な症状で私たちを悩ませる「花粉症」。今回は、花粉症のメカニズムと症状、正しい対策方法や、病院での治療等についてご紹介します。
なぜ、花粉症になるの?


花粉症とは
花粉が原因で起きるアレルギー症状をまとめて花粉症と呼んでいます。正確な患者数はわかっていませんが、全国の耳鼻咽喉科医とその家族を対象とした2008年(1月~4月)の鼻アレルギーの全国疫学調査でおよそ3割の人が花粉症を持っているという結果が得られています。
花粉症になる理由とは
体に侵入した異物を排除する「免疫機能」が過剰に反応して起こる「アレルギー」。花粉症の場合も体内に侵入した花粉を排除するためのさまざまな過剰反応が花粉症特有の症状を引き起こします。
花粉症を引き起こす樹木とその時期とは
花粉症の原因としてはスギ花粉が有名ですが、花粉症の原因となる植物はほかにもたくさんあります。以下、花粉症を引き起こす植物の例と花粉の飛散時期をご紹介します。
(関東地方の場合)
・スギ花粉:2月~4月
・ヒノキ花粉:4月~5月
・イネ科植物:6月~8月
・ブタクサ、ヨモギなど:8月~10月
(北海道・本州の一部地域では)
・シラカバ:4月~6月
飛散量や植物の種類には地域差があります。例えば、沖縄にはスギは自生しないとされ、ヒノキもごく少なく、北海道ではスギ花粉の飛散が非常に少なくなっています。
花粉症の症状とは


鼻にくる花粉症の症状
花粉症の代表的な症状の1つが鼻水、くしゃみ、鼻づまりなど「鼻にくる症状」です。花粉にさらされてすぐに反応が出る「即時相(そくじそう)反応」と、数時間経ってから鼻づまりなどの症状が現れる「遅発相(ちはつそう)反応」があります。花粉がない屋内で症状が出るのは遅発相反応があるからです。
目に出る花粉症の症状
花粉症の、もう一つの代表的な症状が「目に出る症状」。かゆみ、涙、充血などの症状がみられます。重症になると、喉のイガイガ感、皮膚のかゆみ、微熱、倦怠感などの全身症状が現れることもあります。
正しい花粉症対策を知ろう


屋外での花粉症対策
花粉が飛散する時期はできるだけ外出しないことが最大の花粉症対策となります。しかし現実には、学校や仕事などがあって、外出しないというのは不可能でしょう。外出時にできる花粉症対策をご紹介します。
・マスクの着用(吸い込む花粉の量を1/3~1/6程度に減らしてくれます)
・メガネの着用(目の症状に対する効果は不明ですが、目に入る花粉の量は1/2~1/3にまで減少します)
・帽子の着用(花粉が髪の毛につくことなどを防ぐことができます)
・洋服はすべすべした生地や化学繊維を選択(花粉の付着と屋内への持ち込みを防ぐことができます)
屋内での花粉症対策
花粉は外で飛散しているため、屋内は安心と思いがちですが、油断はできません。以下、屋内での花粉対策の一例をご紹介しましょう。
・花粉の大量飛散日は極力窓を開けない
・外から帰ってきたら、上着をはたいて花粉を落として屋内に持ち込む量を減らす
・帰宅後は手洗い・うがい、洗顔・シャワーなどで花粉を落とす
・洗濯物は取り込む前によくはたく
・飛散量の多い日は洗濯物や布団を外に干さない・空気清浄機をつかう(花粉対応の製品を選ぶ)
花粉情報を確認
外出の前に、ニュースなどで天気や気温、紫外線情報などを確認する人が多いでしょう。花粉症の人はそれに加えて「花粉情報」もチェックしておくと良いかと思います。どのような花粉が飛んでいるか、あるいは飛散量はどれくらいかをチェックして、服装や、外出の時間帯を考える参考にしましょう。
寝具への花粉症対策
人は1日の1/3~1/4程度の時間を眠りに費やしています。寝具に花粉がついていれば、花粉症を悪化させる原因となるかもしれません。
花粉が飛散している時期(あるいは飛散量が多い時間帯)は、外に布団などを干さないようにしましょう。近年では、布団などが洗えるコインランドリーもあるので、布団を干す代わりにそういった施設を利用するのも良いかもしれません。また、帰宅後はお風呂やシャワーで花粉をしっかり洗い流してから寝ると良いでしょう。
生活習慣を改善して花粉症予防に
生活習慣の乱れも花粉症を悪化させる原因になっているかもしれません。以下に、気をつけるべきポイントを紹介します。
・睡眠(休息)をしっかりとること
・栄養バランスの良い食事をとること
・アルコール、タバコを控えること
・ストレスを溜めないこと・適度な運動をすること(ヨガ・ストレッチ・ウォーキングなど。外での運動の場合は花粉を防御したうえで行うことが望ましい)
赤ちゃんが花粉症になる場合も
2008年に行われた鼻アレルギーの全国疫学調査では、0~4歳でまでの子供の1.1%にスギ花粉症があるとの結果が出ています。5~9歳は13.7%でした[*1]。ほかの世代よりは少ないですが、おとなだけでなく、お子さんのためにも花粉対策も忘れないようにしましょう。
花粉症になったら迷わず病院へ


何科にいけばいいの?
鼻の症状が強い場合は耳鼻咽喉科、目の症状では眼科、皮膚トラブルなら皮膚科というように、症状にあわせて診療科を選んで大丈夫です。アレルギー科はもちろん、内科や小児科でも診察可能ですから、近くの医院を訪れてみると良いでしょう。
花粉症治療について
花粉症の治療は「薬物療法」が基本です。必要に応じて「手術療法」などが選択されることもあります。以下、それぞれの治療法をご紹介します。
■薬物療法
抗アレルギー剤や抗炎症剤を用い、点鼻薬、飲み薬、注射など、花粉症治療にはたくさんの薬の選択肢があります。ちなみに、「漢方薬」を利用する場合もあり、患者さんによっては効果をもたらすケースもあります。
■手術療法
鼻づまりの強い患者さんには、鼻の粘膜の一部を切除したり、レーザーを照射する手術もあります。
減感作療法
花粉症で、唯一「完治」が期待できる治療法として「減感作療法」(抗原特異的免疫療法)があります。減感作療法は、薄めたアレルギー物質を注射し、少しずつ濃度を上げていくことで、抵抗力の獲得を目指す治療法です。治療期間が長期で副作用の問題もありますが、2010年に行われた調査によると、スギ花粉症に対する減感作療法で軽症または無症状になった患者さんが80%以上という効果が確認されました。
舌下免疫療法
近年、減感作療法と同じ原理で皮膚へ注射する代わりに舌下にふくんで飲み込む「舌下免疫療法」が登場しました。注射による減感作療法と比較して、安全性が高く自宅で治療できるなどが大きなメリットです。嬉しいことに、2014年10月から「スギ花粉に対する舌下免疫療法」が保険適用となっています。ただし、治療可能な病院は限られているため、受診前に耳鼻咽喉科や小児科などに相談してください。
まとめ
毎年のことだからと市販薬と花粉対策グッズでシーズンを乗り切る方も多いと思いますが、花粉症にはさまざまな治療法があります。重症化を防ぐためには軽症のうちから治療することが望ましいです。花粉対策の徹底と生活習慣の改善にもぜひ取り組んでください。
※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.27)