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2021年01月09日 15:18 更新

【医師監修】赤ちゃんにハチミツは絶対NG!自然界最強毒素のボツリヌス菌とは

たとえ加熱しても、1歳未満の赤ちゃんにハチミツは与えてはいけません。今回は漫画の『もやしもん』や大人が打つボトックス注射でもお馴染みの猛毒ボツリヌス菌についてお伝えします。乳児ボツリヌス症の症状、感染経路や潜伏期間、治療方法など、乳幼児のママの必須知識が満載です。

『もやしもん』でも紹介!ハチミツのボツリヌス菌が引き起こす感染症

赤ちゃんにはNGなハチミツ
Lazy dummy

※画像はイメージです

「1歳未満の赤ちゃんにハチミツを与えてはいけない」と言われていますよね。その理由は、乳児ボツリヌス症を発症する可能性があるからです。ボツリヌス菌の毒素がいかに強いか、漫画の『もやしもん』でも紹介されているので、ご存知の方も多いでしょう。

赤ちゃんがかかる乳児ボツリヌス症とは

乳児ボツリヌス症は、乳幼児がかかりやすい感染症の1つで、1歳未満の赤ちゃんがボツリヌス菌の芽胞(がほう:固い殻に包まれた種子のようなもの)を口にすることで発症します。食品に混じっていたボツリヌス菌の芽胞は、体内に運ばれ、腸内まで侵入したあと、育って増えて毒素を出し、感染症を引き起こします。

生後1週間から12ヶ月未満の乳児に見られることがあるので、1歳未満の赤ちゃんは、ボツリヌス菌の芽胞に汚染される可能性のある食べ物を避ける必要があります。1歳以上であれば通常はボツリヌス菌の芽胞を食べても、他の腸内細菌との競争に負けてしまうため、こういった反応は起きません。

赤ちゃんの腸内環境は大人のように整っていないので、ボツリヌス菌の芽胞が腸内で発育&増殖し、感染症になってしまうことがあるのです。

自然界で最強の毒素!ボツリヌス菌の致死量

ボツリヌス菌が生産するボツリヌス毒素は、自然界で最強と言われている毒素です。いくつかのタイプがあり、タイプによって違いもありますが、たとえば代表的なA型毒素を人が口にした場合の致死量は数µg(1mg=1000µg)といわれています。

強い毒で有名な青酸カリでも、致死量は150~200mgといわれており、ボツリヌス菌とは毒性の強さが比べものにはなりません。各国で生物兵器として研究されていたとも、ボツリヌス毒素がペットボトル1本分あれば、全人類を滅ぼすことができるともいわれています。

感染経路は?ハチミツ以外に気をつけるべきものは?

乳児ボツリヌス症は、非常に珍しい病気で、日本国内では1986年に報告されてから2017年2月までの36例しか確認されていません。そのうち、ハチミツが原因と推定されるものは計13例と多く、注意すべき感染経路です。

それ以外の多くの事例では、原因は明らかになっていません。ボツリヌス菌の芽胞は土壌にも広く分布しており、周囲の環境から摂取してしまう可能性があります。自家製野菜スープから感染したと推定される例も東京都で報告されていますが、検証は困難です。因果関係の明らかなハチミツは、1歳になるまでは絶対に食べさせないようにしましょう。

そうなんだ!ボツリヌス菌のよくある素朴な疑問

ボツリヌス菌に関しては、知らないことがいろいろあると感じている方も多いのではないでしょうか。この機会に解決しておきましょう。

大人がボトックス注射を打っても大丈夫な理由

大切な我が子の命を奪う可能性があるボツリヌス菌の威力を知り、ぞっとしたママも大勢いらっしゃるでしょう。ただ、ボツリヌス菌は美容整形施術で行われるボトックス注射でも有名ですよね。なぜ大人はボトックス注射を打っても大丈夫なのでしょうか。

ボトックスは、ボツリヌス菌の毒素から製剤化されますが、実は諸々の処理によってボツリヌス菌の有害な成分は含まれていません。そのため、顔に直接注入することも可能です。筋肉を緊張させる神経を麻痺させ、筋肉の緊張をやわらげる作用があるので、シワ取りや小顔(エラの張りをなくす)など美容目的の治療のほか、多汗症や脳卒中の後遺症治療、顔やまぶたの痙攣症状の緩和、重症心身障害者の緊張の緩和など、病気を治すためにも活用されます。

授乳中のママがハチミツを食べるのは危険?

ボツリヌス菌の芽胞が入っている可能性があると思うと、ちょっとハチミツを食べるのが怖くなりますよね。けれど安心してください。腸内環境が整っている大人は抵抗力が十分にあるので、ハチミツなどを食べてもボツリヌス症になることはありません。

また、授乳中のお母さんがハチミツを食べても、母乳にボツリヌス菌が混ざる心配はありません。もちろん、赤ちゃんがうっかり口にしないよう、ハチミツの瓶はすぐに片付けましょう。ハチミツを食べた口で赤ちゃんにキスするのも厳禁です。

加熱処理でボツリヌス菌の毒素は消える?

ボツリヌス菌の毒素そのものに汚染された食品を食べると、大人でも「ボツリヌス食中毒」になることがありますが、ボツリヌス毒素は、85℃で5分間の加熱で壊すことができるので、食品を十分に加熱することはボツリヌス食中毒の予防に有効です。ただし、芽胞の場合は熱に強く、100℃で長時間加熱しても死滅させることができません。

また、ボツリヌス菌は酸素の少ないところで増殖しますが、増殖するときに、異臭を放ってガスを出します。真空パックや缶詰が膨張していたり、開封したときに変なにおいがするときは、ボツリヌス菌が増殖している可能性があるので、絶対に食べないようにしましょう。

ちなみに容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルトパウチ食品)やほとんどの缶詰は、120℃で4分間以上の加熱が行われています。ただし加熱処理が行われていない、冷蔵保存が必要な容器包装詰め食品もあるので、よく表示を確認するようにしましょう。

赤ちゃんがボツリヌス菌に感染したときの症状や治療方法

万が一赤ちゃんが乳児ボツリヌス症になったときの症状や治療方法についても把握しておきましょう。

乳児ボツリヌス症の症状

乳児ボツリヌス症の発症直後は、頑固な便秘が初期症状です。この後に、泣き声が弱い、手足を動かさない、笑わない、ミルクの飲みが低下するなど筋力低下の症状が急激に進んできます。
病状が進行すると、身体の筋肉が弛緩するので、首のすわりが悪くなって、全身がぐにゃぐにゃした感じになったり、呼吸に必要な筋肉が麻痺すると、呼吸が止まってしまい、人工呼吸器を使わなければ死亡することもあります。

ボツリヌス菌が侵入してから・・・潜伏期間が長い

ボツリヌス菌が体内に侵入しても、いきなり乳児ボツリヌス症を発症するとは限りません。潜伏期間が3日から30日間もあります。
そのため、症状が現れても原因を突き止めるまでに時間がかかることも珍しくありません。いきなり発症することもあれば、何日かかけて徐々に症状が現れることもある厄介な感染症です。

どうやって治療するの?

ボツリヌス菌の毒素そのものに汚染された食べ物を摂取することで発症する「ボツリヌス食中毒」の治療では、毒素を中和するための抗毒素製剤が用いられます。しかし、赤ちゃんの場合は副作用が起こる可能性があるので、乳児ボツリヌス症の治療に抗毒素製剤は使用されません。そのため対症療法が基本となり、呼吸困難があれば人工呼吸による呼吸管理を行うほか、栄養管理なども行います。完全に治るまでには、数ヶ月かかります。

また、乳児ボツリヌス症では、回復してからも数ヶ月間、便の中にボツリヌス菌が排出され続けるので、おむつ交換の後は流水と石鹸でよく手を洗うなど、二次感染に気をつける必要があります。

まとめ

ハチミツに入っている可能性があるボツリヌス菌について、感染したらどんな症状が出るのか、どのように治療するのか、詳しい情報をお伝えしました。致死量や潜伏期間の長さを知って驚いたママもいるのではないでしょうか。ボツリヌス毒素の毒性は本当に強いので、1歳未満の赤ちゃんにハチミツは絶対与えてはいけません。1歳を過ぎれば与えても問題ありません。

※この記事は 医療校閲・医師の再監修を経た上で、マイナビ子育て編集部が加筆・修正し掲載しました(2018.08.20)

  • 本記事は公開時点の情報であり、最新のものとは異なる場合があります。予めご了承ください。

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