
ママパパ必見!知らないと損する「育児目的休暇」とは?
平成29年10月の育児・介護休業法改正にともない、子育てのために休暇が取れる制度、「育児目的休暇」が新設されました。今回はこの制度の概要や申請方法、従来からある看護休暇との違いや問題点の他、男性の育児参加に対する企業の取組みなどについて解説します。
平成29年10月新設!育児目的休暇はどんなもの?


育児目的休暇は、平成29年10月の育児・介護休業法改正により新設された制度です。特に男性の育児参加を促進する目的で作られました。詳しい概要をご紹介しましょう。
育児目的休暇とは?
育児目的休暇とは、就学前の子供がいる労働者が有給休暇とは別に利用できる休暇です。特に男性の育児参加を促進する目的で新設され、厚生労働省の指針により以下の具体例及び規定例が挙げられています。
【具体例】
●配偶者の出産に伴って育児が必要な際に取得できる「配偶者出産休暇」
●入園式や卒園式といった行事への参加に利用できる「多目的休暇」
事業主はこれらの制度に基づき、該当する労働者が育児を目的とする休暇を取れる「規定」を設ける、あるいは育児目的休暇の周知に努めなければなりません。以下に規定例を記します。
【規定例】
●就業規則の年次有給休暇とは別に、子が1人の場合は1年間(4月1日~翌3月31日)につき〇日、2人以上の場合は1年間につき〇日を限度として育児目的休暇の取得が可能。
●育児目的休暇の取得を希望する者は、原則として事前に育児目的休暇申出書を人事部労務課に提出。
ただ、法的には育児目的休暇の日数などの決まりはなく、そこは各事業所の裁量に任せられているのが現状です。
●厚生労働省ホームぺージ「育児・介護休業法の改正事項 2.育児目的休暇の新設」
http://www.mhlw.go.jp/english/policy/children/children-childrearing/dl/act_child_2017j.pdf
●厚生労働省ホームぺージ「育児・介護休業等に関する規則の規定例 P12」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/35_09.pdf
浸透しているの?申請方法は?
育児目的休暇は新設されて日が浅いため、働く人自身がそのような休暇があることを知らない場合も多いでしょう。また、事業所によっては育児目的休暇が新設されたことを把握していないケースもあります。そのため、厚生労働省では事業主や労働者向けのリーフレットを配布するなど、その導入促進に努めています。
なお、育児目的休暇の取得を希望する場合、勤務先に申請を行う必要があります。以下に申請方法の例を2パターン記します。
■例1.事前に所定の「育児目的休暇取得申出書」などの書類に必要事項を記載の上、勤務先に提出
■例2.当日電話で申し出を行い、出勤後速やかに書類を提出
法律上では育児目的休暇についての申出要件や手続き方法についての定めがありませんが、一般的には上記の方法での申出を行うケースが多いようです。
●厚生労働省ホームページ「育児・介護_規定例本冊.indd P65 育児目的休暇取得申出書参考様式」)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/dl/35_06.pdf
看護休暇と何が違うの?
ここまで育児目的休暇の概要や申請方法について説明してきましたが、ここで明確にしておきたいのが看護休暇との違いです。看護休暇とは、就学前の子供を養育する労働者が、病気、けがをした子供の看護、あるいは予防接種や健康診断のために1年に5日(2人以上だと10日)まで取る事ができる休暇です。育児目的休暇との違いは以下の通りです。
■看護休暇
・法的な罰則がある
・取得は子供の看護等を目的とする場合に限る
■育児目的休暇
・法的な罰則がない
・子供の行事参加などの目的でも取得できる
なお、看護休暇は従来は1日単位でしか取得できませんでしたが、法改正により半日単位での取得も可能になりました。
●厚生労働省ホームページ「育児・介護休業制度ガイドブック P4」
http://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf
まだまだ発展途上の育児目的休暇


実は、育児目的休暇は誰でも取れるわけではありません。その理由について説明します。
育児目的休暇は「努力義務」
現在の法律では事業所が育児目的休暇の制度を設ける「義務」はなく、あくまで「努力義務」となっています。「義務」と「努力義務」の違いは、簡単に言えば罰則があるかどうかです。
法的に「義務」となっている場合、事業所が育児目的休暇を制度化していない場合は罰則を受けますが、「努力義務」の場合は罰則が課せられません。例えば、勤務先の規定によっては、育児目的休暇が取れないケースや、育児目的休暇が取れても無給扱いになる可能性もあるのです。そのような理由から、育児目的休暇はまだまだ発展途上と言わざるをえません。
育児目的休暇が使えない場合
育児目的休暇は罰則がない努力義務となっていますので、勤務先によっては休暇の申請が通らない場合があります。また、その日数についても各事業主の裁量に任せられているため、制度があっても十分に休暇が与えられない場合あります。
そのような時は「看護休暇」や「有給休暇」を利用しましょう。子供の病気やけがの看護には「看護休暇」、入園式などの出席には「有給休暇」で対処することができます。もしご自身の勤務先に育児目的休暇がない場合でも、子供のために仕事を休む必要が生じたときは上記の制度を利用しましょう。
男性は取得している?育児目的休暇の現状
既にお話しした通り、育児目的休暇は男性が育児に参加しやすいように新設されたものですが、実際には勤務先の理解が得られないなどの理由から、休暇が取れない場合もあります。しかしながら、男性の育児参加に積極的に取り組んでいる企業もあるようです。
例えば、『イクメン企業アワード2017年』のグランプリに輝いた株式会社ソニーでは、次の取組みを行っています。
●男性が育児参加しやすい職場環境の整備
●「無意識のバイアス」に関する研修を導入
●一律20日の有給育児休暇と育児支援金の支給
●ランドセル贈呈式
●「Family Day」の設定
●テレワークの導入
●働き方改革プロジェクト「時間PJ」の実施
これらの取組みにより社内意識の変化が見られ、平成28年の男性の育児休業が51.1%にまで上昇。育児とキャリアの両立ができるロールモデルも増加しました。
●イクメンプロジェクト ホームページ「厚生労働省 イクメン企業アワード2017 受賞企業の取り組み事例集」
https://ikumen-project.mhlw.go.jp/pdf/award_company2017.pdf
まとめ


今回は、新設された休暇「育児目的休暇」について解説しました。まだまだ課題は多いものの、男性がより育児に参加しやすくなるという点では大きな意味があります。まずはご自分の勤務先に育児目的休暇の制度があるかどうかを確認の上、ぜひ積極的にこの休暇を利用して下さい。