育休中「赤ちゃんの泣き声がつらい」と感じてパパが気づいたこと。#男性育休とったらどうなった?
育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は2022年8月から2023年3月まで育休を取り育児に向き合った男性に話を聞きました。
「育休中は完全ワンオペのシフトを組みました」
今回のパパ
石田景悟さん/31歳/京都医塾 国語社会科主任
●ご家族
妻:綾奈さん/31歳/酒造メーカー商品開発部所属
長男:旭くん/0歳6ヶ月
●石田家のパパ育休
結婚当初から夫婦で育休を取ることを希望。2022年8月に第1子が誕生し、産後から育休を取得。里帰り中の妻に合わせて、2ヶ月間を妻の実家で一緒にすごす。その後自宅に戻り、夫婦で二人三脚の育児生活をスタート。塾の期首にあたる2023年4月に職場復帰。
育休中の石田家の24時間
産後の夫婦関係を考慮して育休を希望
――結婚当初から「子どもができたら夫婦で育休を取ろう」と考えていたそうですね。
綾奈さん 子どもがかわいいことはもちろんですが、育児のつらさも夫婦で共有しておきたいと思いました。ワンオペ育児の苦労や、いわゆる産後クライシスなども気になっていたんです。
景悟さん 過去に男性育休を取得した人が社内にいなかったので、前例を作りたいという気持ちもありました。当時の上長には、妻の妊娠前から将来子どもができたら育児休暇を取得したいと伝えていました。
――心配ごとはありませんでしたか。
景悟さん 僕は京都医塾という医学部受験専門の予備校で講師をしています。育休を取るとなると、僕が受け持っていた授業を他の人が回していくことになるので、気がかりでなかったといえば嘘になります。ただ組織の体制として、育休によってキャリアがダウンする可能性は考えにくかったので、将来的なキャリアへの不安はありませんでした。
――塾講師というと、受験シーズンに向けて忙しなさが加速していくイメージがあります。引き継ぎなどは大丈夫でしたか。
景悟さん そうですね、塾生の夏期講習の前に育休に入って、その年の受験が終わる3月まで休み、次のシーズンが始まる4月に復職する形にしました。個別と集団のクラスとの受け持ちバランスがちょうどよかったので、引き継ぎは問題なくできました。僕の部署に新たな人材を1人補てんしてくれたことも大きかったと思います。
産後のシフトは8時間ごとの交代制
――妊娠中や育休中、家事の分担はどうしていましたか。
綾奈さん 我が家は家事をポイント制にしているんです。どんな家事を何分やったのかを家事分担アプリに記入して月々のポイントにし、翌月にどちらが多かったかを確認します。時給1000円で換算して、少なかった人がたくさん家事をやった人にお小遣いとして還元する、って方法です(笑)。
――それは面白いアイディアですね。
綾奈さん 公平性を保てるなと思いました。産後はいったんストップしているのですが、夫婦で職場復帰したら、再開しようと思います。
――赤ちゃんはまだ体内時計が未熟で昼夜問わず授乳やおむつ替えなど色々なお世話が必要ですが、夜間の対応はどうしていましたか。
景悟さん 育休中は、8時間ずつの完全交代制シフトを敷いていました。
綾奈さん インターネットで「8時間ずつの完全交代制を取ってお世話をしている」という方を見かけて、参考にしました。20時から4時までは夫が、4時から12時までは私が担当します。その時間帯は完全にワンオペで交互に寝て、12時から20時までは二人で一緒に見るので、三交代制ですね。
――景悟さんは昼夜逆転の生活になりますが、からだは大丈夫でしたか?
景悟さん 夜中はひたすらストレッチや筋トレをして眠気を覚ましていました(笑)。夜間に子どもの横にいるときは電気をつけられないので、照明がない中で本を読むとか作業をするのは難しくて。時間はあっても、やりたいことを自由にはできないというストレスはあったと思います。そんな状態で深夜の疲れているときに、原因もわからないまま子どもが泣き続けたりすると、つらいなぁと思うこともありました(苦笑)。
綾奈さん これをやってもだめ、あれをやってもだめで、全然泣き止まなくてどうしたらいいのか! というときは、しばしばありましたね。そんなとき、多少は放っておいて様子を見た方がいいようだと頭ではわかっていても、ちょっと心苦しくて。そうした困りごとがあるとついネットで検索して有益な情報を探しますが、おかしな情報も多くヒットしてしまうので、育児の情報リテラシーを身につけることは大切ですよね。今もそこには苦労しています。
――困っているときこそ、自分が「こうあってほしい」と思う情報に飛びついてしまいやすいですし、情報の見極めは難しいですよね。
綾奈さん 赤ちゃんの様子や発達のことなど、随所で迷います。私は医学的なエビデンスや論文など、なるべく裏づけできる情報を探すようにしています。
「赤ちゃんの泣き声がつらい」と思ったとき、気づいたこと
――綾奈さんは里帰り出産をし、景悟さんも綾奈さんのご実家で一緒に過ごされたそうですね。
景悟さん はい。それも育休を取ってよかったことのひとつですね。2ヶ月間も妻の実家ですごせる機会は滅多にないし、相手側のご家族との関係を深める良い機会でした。
綾奈さん 私は緊急帝王切開になって、産後は不調が続いていました。育児以外のことを夫や両親にやってもらえたことは、本当に支えになりました。里帰りをしたことで常に大人の話し相手がいて、雑談ができたのもよかったです。
景悟さん 義父母も働いているのに、長く滞在させてもらい感謝しかありません。
――育児がスタートして最初のうちは不安な気持ちもありましたか。
景悟さん 僕は「生まれてきたらもうやるしかないぞ!」と気合を入れた感じでしたね。それでも新生児期には、子どもの泣き声がちょっとつらいなと感じるときがあって。ただ、泣き声に反応している自分に気づいたとき、なんとなく、「これが父になったということかな」という気持ちになりました。
――どういうことですか?
景悟さん もし子どもが生まれても普通に仕事をしていて、職場と家の往復という生活だったら、子どもに関わる時間も短いですし、子どものかわいいところしか見られないんじゃないかと思ったんです。だから、育児のつらいところが目にとまるようになったときに、一生懸命育てているからこそそう思うんだよな、と気づきました。
育休取得で家族の関係性がより強化された
――育休を経て、他に気づいたことはありましたか。
景悟さん 育児指南本やネット記事などもですが、「ママ」を強調しすぎていることでしょうか。もちろんこれまで、母親が育児をすることがベースになっている研究や実験が蓄積されてきたためだとか、仕方がない面もあると思います。でもたとえば、育児教室が「ママさん教室」という名称だったりするのは、門戸を狭めてしまっているなと感じました。
――ママだけでなく、子育てをしているあらゆる保護者に開いていく必要がありますよね。お子さんが生まれて、ご夫婦の関係性に変化はありましたか?
景悟さん 息子が生まれる前から持っていた妻のいい印象が、より強化されました。育児に関する情報を集める際にも、客観的に見てより正しいと思われるものを自分で見つける姿勢がある。そして、それを実行に移している。妻らしいと思います。
綾奈さん 私はもともと夫のことをとてもマイペースな人だと思っていて。それは子どもが生まれても、変わらず強化されています。たとえばあやし方ですね。一般的な、高い声で「よしよし〜」みたいなことは全くやらずに、とても独特なあやし方をするんですよ(笑)。それが面白いです。
――どんな感じでしょうか(笑)。
綾奈さん 絵本を読むときに音楽を流しながらラップ調で読むとか、地声で音楽に合わせて、全然関係ない本を読んでいるとか。それはありなのかな? と思いながら、結構面白いので、まあいいかと(笑)。
――独特で面白いです(笑)。息子さんが大きくなるにつれて会話もできるようになりますし、きっともっと楽しくなりますね。最後に、半年間の育休を取って良かったと思うことを教えてください。
景悟さん 妻との関係も含めて、家族にプラスをもたらすことができたことです。まず育休を取っていなかったら、妻の健康とか、子どもが生まれた喜びや育児の苦労を共有するという点でマイナスがたくさん生じたと思います。それは、のちのち取り返しがつかないものだから、家族や夫婦の関係性に深く影響していきそうですよね。個人的には、子どもが生まれるときには両親とも育休を取って子育てに専念する期間を設けることがベースになるといいなと思いました。
(取材・文:マイナビ子育て編集部、宮本貴世、イラスト:ぺぷり)