朝はママ、夜のお風呂~寝かしつけはパパ。親になっても個人の時間を尊重する夫婦の過ごし方 #男性育休取ったらどうなった?
育児休業を経験し、子育てに奮闘しているパパの声を聞いていくインタビュー連載・「男性育休取ったらどうなった?」。今回は2022年6月に3ヶ月間の育休を取ったご夫婦に話を聞きました。
我が子を溺愛しながら夫婦それぞれの時間も確保できる!
今回のパパ
有川颯人さん/34歳/株式会社バンダイ 菓子・食品関連部署 経営企画担当
●ご家族
妻:弥生さん/27歳/株式会社バンダイ 品質管理系部署 品質管理担当(育休中)
長男:律くん/0歳6ヶ月
●有川家の育休
第一子誕生(2022年6月)
夫:長男誕生後、3ヶ月間の育休を取得する。2022年9月より職場復帰。
妻:里帰り出産はせず、自宅近くで出産。産休前は夫と同じ職場の別部署に勤務し、現在は育休取得中。
(※お名前は全て仮名です)
仕事も育児も趣味も満喫! 有川さんの1日スケジュール
職場は育休を取りやすい雰囲気が醸成されていた
――育休取得のきっかけを教えてください。
颯人さん 社内に育休取得したことがある男性社員が多いことと、取得しやすい環境だったことが大きいですね。育休の期間はそれぞれですが、1〜2週間、長くても1ヶ月までという人が多い印象です。
――在籍している男性は育休取得経験がある方が多いのですね。
颯人さん 僕のような子育て世代の社員は、基本的に奥さんの出産のタイミングで育休を取得している社員が多いようです。ここ数年で急に意識するようになったというよりは、以前からみんなが気を使わずに自然と取っていたような気がします。
――社内に取りやすい雰囲気が流れているのですね!
颯人さん 女性社員の育休や産休も含めて、非常に取得しやすい風土があり、 誰が「育休を取ります」と言っても、非難されるようなことは一切ないです。
――颯人さんの場合、3ヶ月という期間はどのように決めたのでしょうか。
颯人さん 以前お世話になった部署の上長が過去に3ヶ月育休を取得していたんです。当時、男性で3ヶ月育休を取る人はいませんでしたが、その上司から「有川さんもいつか育休取るなら、3ヶ月取りなよ。絶対そっちの方がいいから!」と言われたことがずっと頭にあって。妻が妊娠して、会社に「育休を3ヶ月取りたい」と伝えたら、とても前向きに対応してもらえました。
――復帰後のキャリアに関する不安などはありませんでしたか?
颯人さん 全くないですね。やることをしっかりやっていれば大丈夫という社風なので、他の育休取得経験のある社員も、そういった不安はなかったのではないでしょうか。そういう面ではとても働きやすいし、性別を問わず、育休取得もしやすいと思います。
――弥生さんは、颯人さんが一緒に育休を取ろうと考えていると聞いたとき、お気持ちはいかがでしたか。
弥生さん 純粋に嬉しかったですね。実際に育児の大変さや出産の大変さを実感するのって経験しないとわからないこともあると思います。でも、育休を取ってもらえたことで、それがちょっとでも伝わったのかなと思いますね。
夜泣きのピークは気づいたら過ぎていた!
――育休中の家事はご夫婦でどのように分担していましたか?
颯人さん 感覚的には、どちらかが全部をやるということはなく、それぞれが得意なことをやるというスタンスでした。洗濯物は僕のほうがきれいにたためるので僕がやって、料理は妻がとても上手なので、お願いしています! あとは妻の希望に沿って、ゴミ出しやお風呂洗いなどは僕が多めに。掃除はロボット掃除機、皿洗いは食洗機、洗濯は全自動洗濯乾燥機、買い物はネットスーパー……と、便利家電やサービスを活用して、極力家事は減らしています。
――里帰りはされていないということで、退院後はご夫婦2人きりでの新生児育児がスタート。不安などはありませんでしたか。
弥生さん 実家の母が手伝いに来てくれるという話もありましたが、私としては自分たちで1からやっていきたいという気持ちでした。もちろん不安もありましたけど、どちらかというと「自分がこうやりたい!」と思い描いたようにやり通せた喜びのほうが大きかった気がします。夫もサポートしてくれて、やりたいようにやらせてくれました。
颯人さん 女性は産褥期といって産後6週間から8週間は安静にする期間が必要ということと、妊娠と出産でだいぶ疲弊しているということはあらかじめ知っていたので、力仕事や体に負担がかかりそうなことは積極的に僕がやるように心がけていました。
弥生さん 産後は特に助かりましたね。ただ、夫は普段から家事をよくやってくれるので、ずっと変わりなく助かっていて。妊娠中でつわりがキツかったときも、炊事も含め家事全般すべて夫がやってくれました。産後に特別にやってくれたというよりは、産後も変わらずにやってくれたという感じです。ある意味、いつも通り。
――共働き夫婦の理想形ですね! 産後すぐの時期、特に印象に残っているエピソードはありますか。
颯人さん コロナ禍で出産への立ち会いや面会はすべて禁止されていたので、僕が息子に初めて会えたのは生まれてから一週間後、退院のときでした。やっと会えて、家から病院までの帰り道に初めて抱っこしましたが、赤ちゃんが想像より重くて驚きました(笑)。
――えっ、すでに重かったのですね(笑)!
颯人さん 3400gで生まれたので、僕が思っていたより大きかったですし重かったです。家から病院まで徒歩10分くらいの距離ですが、抱いてみると「10分も抱っこしていけるかな」と思ったのが、最初に印象に残ったことですね(笑)。新生児なのに息子には安定感があって、そのたくましさに安心できたような気がします。
妻が復職しても、きっと大丈夫
――ご夫婦揃ってテニスが趣味ということで、平日でも朝と夜に分けてテニスを楽しんでらっしゃることに驚きました!
颯人さん 僕は平日4〜5回テニスに行っています。今日も行ってきました! 始業前にテニスに行って、帰宅してシャワーを浴びて、そのままリモートワーク開始です。
弥生さん 私は産後の1ヶ月健診でOKが出てから、産後ダイエットも兼ねてやってみようと思い、始めました。夫があまりにも楽しそうなので(笑)、やってみたくなったんです。
――今は、颯人さんは朝の始業前に、弥生さんは夜の食事後にテニスをしに行くというスタイルですか。
颯人さん そうなっています。もともと僕が参加している仲間との会は朝の時間帯に多くて、妻が行きたい練習会が夜に多かったので、調整しています。あとは空いている日があれば「じゃあ行ってくるね」という感じで、お互いの予定次第ですね。子どもが小さいといっても、夫婦それぞれの個人の時間も大切だと思うので、お互いに個人の時間を尊重しています。
――夜、ママがいなくても息子さんはすんなり寝てくれますか?
颯人さん 寝かしつけに苦戦したことはないですね。いつものルーティンとしては僕がお風呂に入れてその後寝る支度をして、ミルクを飲ませたら5〜10分くらいで寝てくれます。妻がわりと早い時期からネントレを取り入れてくれたので、そのおかげですかね。
弥生さん ネントレも最初はうまくいきませんでしたが、寝るまでの毎日のルーティンをちゃんと時間通りにやり続けて、2〜3ヶ月ぐらいかけ少しずつ定着しました。今はルーティンをしてベッドに置いたらスッと寝てくれるようになりましたね。
颯人さん リズムができるまでは、ちょっと大変でしたけどね。でも、うちの場合はすごく育てやすい子なのかなと思います。基本は一度寝たら朝まで起きないので、夜泣きもほぼないですね。個人差があると思いますが、夜泣きのピークは4~5ヶ月頃に来るのかなと覚悟していたんです。ところが気がついたら、夜泣きをほぼ経験せずに月齢のほうがすぎてしまっていたなという感じです(笑)。
――羨ましい……! 何をしても泣き止まない、寝ない、ミルクを飲まない……といったケースもありますし、本当に個人差が大きいですよね。お子さんが泣いたときにあやすのも、颯人さんはお手の物ですか?
颯人さん うちの子はすごくわかりやすくて(笑)、構ってほしくて泣いているときは、抱っこすればある程度落ち着きますし、抱っこしても泣いているときは100%お腹が空いているときなんです。泣き方でほぼわかるようになりました。
――お話を伺っていると、家事も育児も夫婦で分け隔てなく協力していることがよくわかります。育休を取って一番よかったと思うのはどんなことですか。
颯人さん 子どもと一緒にいられる時間が長いことですね。最初の3ヶ月という、結構長い時間を一緒に過ごせたので、子どもにパパの存在を覚えてもらいやすい、子どもの視界に入りやすい時間が取れたのかなと。また、復職した今も在宅ワークの日を活用し、子どもと接しやすい環境を作ることができていると思います。また、夫婦の信頼関係がさらに深まったと感じます。妻が以前よりもっと、隣にいてほしい存在になりました。
弥生さん 私も、余裕がないときや体調のすぐれないとき、嫌な顔ひとつせずに家事などをしてくれる夫の姿には感謝しかありません。
――育休期間を3ヶ月に設定してよかったと思いますか?
颯人さん はい。1ヶ月前後では、まだルーティンができるまでにもう少し時間が欲しいかなと。3ヶ月くらいには、徐々にルーティンもできてくるかなと思うので。あと子どもの成長も見られたので、非常によかったと思います。1年でもと思いますけど、社会復帰を考えると3ヶ月がちょうどいいかなと思いますね。
弥生さん 1週間や1ヶ月だと、なかなか育児の本当のつらさはわからないですよね。3ヶ月もあれば、調子がいいときもあれば、調子が悪いときもあって、いろいろな波が経験できると思います。生まれてから3ヶ月という時間を共有し、大変なこともうれしいことも一緒に体験できたことは大きいですね。
――保育園に入園できれば春からは弥生さんも復職されますよね。そうすると、今の生活リズムも変わっていくと思いますが……。
颯人さん そうですね。ファミリーサポートやベビーシッターなどの利用も視野に入れて検討中です。保育園の送り迎えなども、二人で協力して乗り切っていけたらと思います。育休期間は、自分がちゃんと子どもの世話をできるという自信につながりましたね。
(取材・文:宮本貴世、撮影:尾藤能暢、イラスト:ぺぷり)