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2024年01月03日 11:30 更新

子どもにひらがなを教えるタイミングと、文字を読むために必要な力とは? |ことばを引き出す遊び53 #2

子どものお喋りが少しずつ増えてくると、今度は「読み書きはいつ頃から? どのように教えたらいいの?」と迷われるママ、パパも多いのではないでしょうか? 親子で楽しく遊びながら文字を読むための準備ができたら嬉しいですよね♪

言語聴覚士の寺田奈々さんは、ことばの遅れが気になるお子さんに対して、おもちゃや絵本で遊びながら発語を促す相談室を開いています。
今回は、「語彙力や音韻意識を育むおもちゃ」そして「“ことばの力”と“読み書き”の関係」について、著書『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社刊)から、一部抜粋・再編集してお届けします。

五味太郎しりとり ぐるぐるカード(どうぶつ)

『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より

この遊びで育まれる力:相互性、語彙力、音韻⇒文字
言葉の発達段階:プレ学習期

※プレ学習期:ルールのある遊びや長いストーリーを理解できるようになり、文字を学ぶ準備もスタートする時期。

おもちゃの特徴

絵本作家・五味太郎の楽しいイラストが描かれたカードで、しりとりでことばをつなげていけます。うま→まぐろ→ろば→ばく……のようにつなげていくと、大きな「わ」になるのがポイント。ぐるりと並べきると達成感があります。

なな先生のアドバイス

しりとり遊びは文字を読むための準備である「ことばから、はじめの音を取り出す」「ことばの最後の音を取り出す」といった音韻意識を育てます。しりとりが苦手なお子さんでも繰り返し楽しくしりとり遊びができる素敵なカードです。

くもんのひらがなつみき

『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より

この遊びで育まれる力:語彙力、音韻⇒文字
言葉の発達段階:ぽんぽん期〜プレ学習期

※ぽんぽん期:文でのお話がスムーズになり、会話のキャッチボールがぽんぽんできるようになる時期

おもちゃの特徴

遊びながらひらがなや数字を覚えられる知育玩具です。積み木の表面には、絵、裏面にはその絵のはじめの一文字がプリントされています。積み木遊びをしながらはじめの音に注目したり、文字をつなげてことばをつくったりといろいろな遊び方ができます。

遊び方のポイント1

最初の音を取り出そう
積み木の表には絵が、裏面にはその絵の最初の文字がプリントされています。「裏には何の文字が書いてあるかな?」とクイズを出してみましょう。かさの「か!」、ももの「も!」と子どもが答えたら、「正解!」と裏面に返します。「語頭音抽出」といって、ことばのはじめの音を取り出すことが文字読みの準備になります。まだ字が読めない子どもでも楽しめます。出題するときには、表面の文字が見えないよう、指で隠しておくといいですよ。

遊び方のポイント2

文字をつなげてことばをつくる
文字が大きく書かれている裏面だけを使って、知っていることばをつくってみる楽しみ方もできます。「と」「う」「ふ」、のように見本をひとつ見せたら、あとは自由につくってもらいましょう。ことばが何も思いつかない場合は、見本を紙に書いてあげ、見比べながらやるのが◎。はじめは濁点「〝」や半濁点「゜」、小さい「や・ゆ・よ」などがつかないことばを選んで。

『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より
『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より

ほかにもこんな遊び方!

マグネットと対応させてみる
数の積み木を使って数合わせの遊びはどうでしょうか? 3頭のゾウ、3個のマグネット。大人からすればどちらも同じ「3」ですが、この対応を子どもは一歩ずつ理解していきます。前者はゾウが3頭いることが絵でわかり、後者はマグネットで数のみを表現しています。積み木の絵とマグネットを対応させると、「3」という数の理解が少しずつ促されます。

『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より

なな先生のアドバイス

はじめの音を取り出す遊びは、ことばがいくつかの音で構成されていることに気がつく「音韻意識」ともひもづきます。音韻意識の発達は文字を読むための準備のひとつ。あせらず少しずつ取り組みましょう。

お悩み「ひらがなは早く読めるようになったほうがいい?」

A. 幼児期は読み書きよりも 聞く・話す土台を育てるのが先

ことばの力を総合的に育む

「ひらがなはできるだけ早く教えたほうがいいですか?」
子どもの「ことばの力」が育っていくと、こんな疑問を抱く人も多いようです。また、ことばの遅れが気になる場合に、「ひらがなを教えることでことばが伸びるのでは」と期待する親御さんもいらっしゃいます。結論からお伝えすると、ひらがなを早く読み書きできるようになったからといって、必ずしもことばの力(言語能力)全体が高いということではありません。

文字を読む能力もことばの力のひとつではありますが、語彙力や文をつくる力、説明などの表現力などとは別で考える必要があります。

幼児期のことばの発達は、まずは聞くこと・話すことで育まれます。「日常生活の聞く・話す(生活言語)」は、「ことばの力」という大きな建物の土台。土台がしっかり固まった上に、「ことばを使って考える・表現する力(学習言語)」を乗せることができます。なので、読み書きの力だけでなく、ことばの力を総合的に育んでいくことが大切です。

ただし、ASD(自閉スペクトラム症)などの場合で、文字を手がかりにコミュニケーションを取ることや、文字を活用したスケジュール表で見通しを立ててあげることで安心する子もいます。文字を早めに獲得することでコミュニケーションがより豊かに取れる、日常生活に役立てることができるならば、ぜひ文字を活用してください。

「いつ頃にひらがなを理解できるようになればいいですか?」と聞かれた場合は、「小学校入学までにひらがな五十音の文字と音が対応するようになるといいですね」とお答えしています。ただし、小さい「や」「ゆ」「よ」やカタカナは、読めるようになるのが入学後の子も多いです。また、幼児期には書くこともまだ難しく、入学後に少しずつできるようになる子が多いでしょう。

読み書きを強要すると逆効果のことも

一方で、読み書きの苦手があるかも?と、やや気がかりなお子さんもいます。日本語を母語として育つ子どものほとんどは、特別な早期教育などをしなくてもひらがなの読みを入学までに獲得することがわかっています。気になるお子さんの中には、LD(学習障害・限局性学習症)や「発達性ディスレクシア」と呼ばれる学習の苦手が隠れていることがあるかもしれません。その場合にも、低学年のあいだに焦って読み書きの反復練習を強要してしまうと、なかなか成果が上がらず、学ぶこと自体への苦手意識を持つだけに終わってしまうかもしれません。少し気になるな?と感じたら、LD支援や配慮の情報を集めつつ、まずは語彙力や説明力など「聞く・話す」の力をコツコツ育むことから取り組みましょう。
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写真:『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より
(撮影:野中麻実子)

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