ことばが遅い=発達障害? ラッパやトランペットで言葉の力を育てよう|ことばを引き出す遊び53 #1
「なかなかおしゃべりがじょうずにならない」「正しい発音はいつできるようになる?」「ちゃんと聞こえているのかな?」子どもの「ことば」について、親としてとても気になるところです。そんなとき、日常の遊びを通じて「ことばの発達」を促すことができたら嬉しいですよね。
言語聴覚士の寺田奈々さんは、ことばの遅れが気になるお子さんに対して、おもちゃや絵本で遊びながら発語を促す相談室を開いています。
今回は、「お口の機能を育むおもちゃ」「相互性や文法などを育むおもちゃ」そして「ことばの遅れと発達障害の関係」について、著書『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社刊)から、一部抜粋・再編集してお届けします。
アンビトーイトランペット
■この遊びで育まれる力:お口の機能
■言葉の発達段階:めばえ期〜ぽつぽつ期
※ぽつぽつ期:ぽつぽつと言えることばが増えていく時期
おもちゃの特徴
普通のラッパは息を吹き込むことで音が鳴りますが、こちらの子ども用ラッパは息を吸ったときにも音が鳴るのが特徴。軽くて握りやすいため、1歳前後から使うことができます。吹くおもちゃで遊ぶことで肺活量が高まり、話すための呼吸機能や発声機能の獲得につながります。
遊び方のポイント1
音を楽しみながら「吹く」力も伸びる
吸っても吐いても音が出るラッパであれば、遊びながら吸う・吹くの練習ができ、話すための呼吸機能、発声機能が高まります。
遊び方のポイント2
音が鳴るのは「フィードバック」
上手に息を吹き込めると「プーッ」と音が鳴ります。「フィードバック」と言って、自分の行動の結果が音として返ってくるので、手ごたえがあり、おもしろく何度も取り組むことができます。上手に音を出せたら「プーッて鳴ったね」と声をかけて一緒に音を楽しんでみてください。
ほかにもこんな遊び方!
試してみよう! いろんな吹く遊び
最初のうちは上手に音が鳴らせないかもしれませんが、ふとしたときに音が出てびっくり、なんてこともあるかもしれません。また、ラッパが難しい場合は吹き口の形状に口を合わせられないなどの背景があるかもしれません。風車や吹きコマ、ティッシュ吹きなどほかの形状のものを吹いたり、息をはぁーっと吐いたりすることも試してみてください。
なな先生のアドバイス
ラッパなどの吹くおもちゃは肺活量を高めるだけでなく、ほっぺたやくちびるなど口周りの筋肉の使い方もうまくなり、上手なおしゃべりにつながります。おしゃべりを支える呼吸や声、口周りを上手に動かすよい練習になります。
おままごとセット
■この遊びで育まれる力:相互性、イメージ力、語彙力、文法
■言葉の発達段階:ぽつぽつ期〜カタコト期〜ぽんぽん期
※カタコト期:知っている単語をつなげて「くっく、はく」のようなカタコトの文が話せるようになる時期
※ぽんぽん期:文でのお話がスムーズになり、会話のキャッチボールがぽんぽんできるようになる時期
おもちゃの特徴
おもちゃの包丁で野菜やフルーツをサクッと気持ちよくカット。お料理気分を味わえるおままごとセット。「おままごと」というシチュエーションで、さまざまな野菜やフルーツの名前、色や形などを、ことばでやり取りしていく経験を得られます。女児の遊びという印象がありますが、性別を問わず楽しめます。
遊び方のポイント1
切る・食べる・おいしい・好き…表現の宝庫
いろいろな種類のカラフルな野菜やフルーツがあるので、まずは子どもが好きなように遊んでみましょう。子どもはさまざまな遊び方を自分で見つけていくはずです。「切る」「食べる」といった動きのことば、「おいしいね」「好き」のような様子のことば、「トントン」「コロコロ」のようなオノ
マトペ(擬態語・擬音語)などのことばかけがポイント。
遊び方のポイント2
バラバラのもう片方を探すゲーム
野菜やフルーツは、すべて半分に分かれるつくりになっています。半分の片方を子どもに見せて、「もう片方はどこかな?」と探すゲームもおすすめ。ゴーヤのように子どもに馴染みがない野菜にも、興味が向いたらさりげなく名前を教えてあげて。お勉強の時間にならないよう、あくまで楽しい雰囲気で遊びましょう。
遊び方のポイント3
お店屋さんごっこでコミュニケーションを楽しむ
「お店屋さん」と「お客さん」役に分かれてのお買い物ごっこをしてみましょう。「今日のお買い物のおすすめはなんですか?」「いちごがおいしいですよ~」とやり取りをすることで、使える表現がどんどん広がっていくはず。
なな先生のアドバイス
おままごとは「りんご/切る」「りんご/切れた」のような2語文のバリエーションを広げる練習にもなります。子どもは「切る」と「切れた」の変化を実際に自分で体験できるので、ことばの使い方の理解も深まりやすいですね。
お悩み「ことばが遅い=発達障害 と考えたほうがいい?」
A. ことばの遅れと発達障害は必ずしもイコールではありません
発達障害の子もいるが、そうでない子もいる
発達障害(神経発達症)とは、生まれつきの脳機能の発達に偏りや凸凹があり、生活や対人関係に困りごとが生じていることです。最近は発達障害という概念が広く知られるようになってきたため、保護者から「うちの子、ことばが遅れているのですが発達障害でしょうか?」といったお悩みを相談されることも増えています。
結論からお伝えすると、ことばの遅れ=発達障害とは限りません。ただし、発達障害の子どもの中には、ことばの発達に遅れを持つ子ども「も」います。このあたり、混同されている人も多いのではないでしょうか。
ASD、LDの特徴として「ことばの遅れ」を持つ子も
まず、発達障害はおもに次の3種類があります。
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●ADHD(注意欠如・多動症)…不注意、多動性、衝動性などの特性が見られる
●ASD(自閉スペクトラム症)…興味やこだわりが限定される、
感覚過敏、コミュニケーションや対人関係に困難を抱えやすい
●LD(学習障害・限局性学習症)…聞く・話す・読む・書く・計算など特定の領域に苦手を感じる
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この中で、ことばの発達の遅れと関わりを持つことが多いのは、ASD(自閉スペクトラム症)です。ASDの子どもは、発語が遅い、話せる単語が少ない、オウム返しをする、一方的にしか話さないなどの特徴をあわせ持つことがあります。ただし、ASDであっても、ことばの発達に遅れを持たない子どももいます。
※言葉の遅れと発達障害の関係について、続きは本誌をご覧ください
「まだ話さない…」「発達障害かも?」そんなお悩みに対し、その子に合った働きかけで、自然とおしゃべりを引き出せることばの芽生えをサポートするアイデアがいっぱいつまった本誌。おもちゃや絵本、カードゲームなどを使った”ことばを引き出す”テクニックが写真付きで紹介されています。その数、なんと53アイテム! すぐにお家で試したくなりますね。
(マイナビ子育て編集部)
写真:『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より
(モデル:さえちゃん&さえちゃんママ、撮影:野中麻実子)