絵本を読んでも反応が薄い我が子。発達と何か関係が……? まずは子どもの「好き」を探してみよう!|ことばを引き出す遊び53 #3
「絵本を読んでも反応が薄い……」「読み方が悪いのかな?」「興味がないのかな?」こんな疑問を感じたことはありませんか?
言語聴覚士の寺田奈々さんは、ことばの遅れが気になるお子さんに対して、おもちゃや絵本で遊びながら発語を促す相談室を開いています。
今回は、「ことばを引き出す絵本」について、読み方、楽しみ方のポイントを著書『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社刊)から、一部抜粋・再編集してお届けします。
はらぺこあおむし
■この遊びで育まれる力:相互性、イメージ力、数
■言葉の発達段階:めばえ期〜ぽつぽつ期~カタコト期
※ぽつぽつ期:ぽつぽつと言えることばが増えていく時期
※カタコト期:知っている単語をつなげて「くっく、はく」のようなカタコトの文が話せるようになる時期
あらすじ
「にちようびの あさ うまれた ちっぽけな あおむしは、おなかがぺっこぺこ」。ダイナミックな絵のタッチと、色彩豊かなデザインで世界を魅了した「色の魔術師」エリック・カールによるロングセラー絵本。ことばのリズムを楽しみながら読んでいきましょう。
この本のポイント1
小さな穴に触れて楽しむ
はらぺこあおむしが食べた跡は、丸くくり抜かれた穴として表現されています。まだ物語を理解できない子や、絵本を読み慣れていない子でも、この小さな穴の部分に指を入れて遊びながら、あおむしがごはんをもぐもぐと食べているイメージを共有します。指をあおむしのように動かして、食べっこ遊びへ展開するのも楽しいですね。
この本のポイント2
繰り返しのパターンに親しむ
食べものの場面では「りんごを ひとつみつけて たべました」「まだ、おなかはぺっこぺこ」と、同じパターンが月曜日から日曜日まで繰り返されます。このように、繰り返すパターンの中で少しずつ変化がある絵本は、ストーリー絵本が苦手な子どもにも親しみやすいです。前後のページは飛ばして、「げつようび~」から読むのも。
この本のポイント3
大人と立場を逆転しても!
繰り返し読むうちに、セリフをまるごと覚えてしまう子も。そんなときは、役割をスイッチして子どもに読み聞かせをしてもらってもいいと思います。「それでも おなかは?」「ぺっこぺこ!」のように合いの手を入れてもらう読み方もおすすめ。
なな先生のアドバイス
最後にあおむしはちょうちょになりますが、その姿を早く見たい! と、ページを次々めくる子もいます。書かれている文字を正確に読み聞かせることにこだわる必要はないので、お子さんの興味や注意が向くペースに合わせてあげてください。
お悩み「絵本を読み聞かせても、 反応が薄い…」
A. 無理に引っ張り込もうとせず 子どもの「好き」を探してみて
絵本よりも好きなことがあるかも
絵本をたくさん読み聞かせたり、おもちゃで一緒に遊ぼうと促したりしているけれども、肝心の子どもの反応がいまいち薄い……。これもまた、「子育てあるある」ではないでしょうか。
興味がない・反応が薄い可能性のひとつに、発達段階と遊びがマッチしていないということがあります。発達に凸凹があるということは、運動・認知・言語など、各々の領域がそれぞれの発達ペースを持つということです。そうすると、発達ペースに合わせた遊び方を見出すのに少し工夫が必要な場合があります。また、私たち大人の興味がそれぞれ違うように、子どもの興味関心が向かう先も人それぞれ。同じ本好きでも、お話(物語)に興味がある子もいれば、図鑑に魅力を感じる子もいるでしょう。体を大きく使う遊びに夢中になる子もいれば、ひとりで黙々とブロックに取り組むことに熱中する子もいます。
大人が提示する「遊び」に、子どもが必ずしも興味を持ってくれるとは限らないのは、ある意味、当たり前のことです。
まずは子どもの「好き」を探してみよう
子どもがあまり興味を示してくれないときに、押しつけたり無理強いしたりするのは逆効果です。
それよりも、目の前にいる子どもが、「今、なにに興味を持っているのか」をじっくり観察しながら探ってみましょう。大人が先回りして手や口を出さなくても、子どもは自分の関心が向かう先を少しずつ見つけていきます。その子が自ら手を伸ばし、繰り返し好んでしているのはどんな遊びやおもちゃでしょう? どんな遊び方のツボがありそうでしょうか? 夢中になっている遊びが、背伸びしすぎない、今のその子の成長・発達ペースに合ったものと捉えましょう。
かかわり方にもコツがあります。ひとつは、行動をまるごと真似っこすること。子どもが手をぱっちんと合わせたら、大人も同じく手をぱっちんと合わせます。子どもが「だぁ!」と言ったら大人も「だぁ!」と言う、声やことばの真似っこもいいですね。
こちらに視線が向いてくれたら、子どもの行動や考えていそうなことを、「ボール転がったね」「ブロック足りないね」などとことばにします。たくさん話しかけるのではなく、あくまで反応を引き出すために少しずつ。
ちょうどよい量のことばかけかどうか迷うことがあれば、子どもと大人が同じ量・回数だけアクションしたり話したりしているかな? を目安にしてみてください。
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写真:『発達障害&グレーゾーン幼児のことばを引き出す遊び53』より
(モデル:さえちゃん&さえちゃんママ、ピオヴァロヴ 悠利、撮影:野中麻実子)