2人目出産後に気づいた「周囲に甘える力」の大切さ/横澤夏子さんインタビュー【1】 #拝啓、復職前の自分へ
現在、未就学児3人の子どもを育てる横澤夏子さん。明るい笑顔がパブリックイメージの横澤さんですが、「産後1ヶ月は泣いていた」といいます。“ホルモンバランスの化身”との戦いの記録とは!? 全3回でお送りするインタビューの1回目をお届けします。
朝の夕食作りは「未来の自分へのごほうび」
ーー2023年6月に出産を報告され、今は3人のママなんですね。
横澤夏子さん(以下、横澤) 3人とも女の子で、上から4歳、2歳、0歳です。修行僧みたいに日々奮闘中です。
ーー修行僧! 1日のスケジュールはいかがですか?
横澤 だいたい朝5時に三女のミルクの時間で、その最中に上2人が続々と起きてきて、そこから1日がスタートします。朝ごはんを食べさせつつ夜ごはんも作って、食べ終えたら夫が保育園に送っています。そこから17時半まで働いて、私がお迎えに行って。帰宅したら朝作った夜ごはんを温めて食べさせて、お風呂に入れて歯を磨いて、19時には消灯します。
ーー寝かせる時間、早いですね!
横澤 でも結局、長女はそこから寝るまでに1時間くらいかかっちゃうので、「このタイムラグをどうすればいいんだろう」というのが今現在の悩みですね。
ーーその1時間で「ほかのことができるのに!」と思ってしまいますよね。
横澤 そう! だから私は、考え事をする時間に当てているんです。「新しいタオル出そうかな」「明日の服、なに着ようかな」とか。なんとかその1時間を有意義に使おうとしています。21時までには自分の時間がスタートできるのが理想的ですね。
ーー自分の時間はどんなことをしていますか?
横澤 番組のアンケートをやったり、台本を読んだり、仕事の準備のほかに、できていなかった洗い物とかをワーーッとやったり。
ーー子どもが寝ても、親はやることがたくさんありますよね。朝のうちに夜ごはんを作るとのことでしたが、買い物の頻度は?
横澤 週1回、日曜日にネットスーパーで食材を頼んでいて、そこで買った物を1週間かけて食べ尽くすという感じです。朝に夜ごはんを作っておくと夕方余裕ができて、「朝の横澤夏子、ありがとう!」と思いながら食べられるんですよね。
ーーそれは素敵です!
横澤 「未来の自分へのごほうび」という感じです。
ーーいつからそのスタイルですか?
横澤 2人目が保育園に入園して、復職したくらいからです。夕方にやることが多すぎて回らないな、と。何が正解かわからない状態で、いろんな試行錯誤をして試してみた結果、このスタイルになって。この形が今のベスト、というか。日々、研究と対策ですね。
「ホルモンバランスの化身」のせいにする
ーー「じゃあ次はこれをやってみよう」と常々考えているんですね。
横澤 そうですね。常にベストを探しています。今だって、たぶんまだベストじゃない気がするんですよ。編み出せていなくて悔しい!
ーー「ベスト」を探す一番の動機はなんですか?
横澤 最高な1日を過ごしたいから、いかに楽をするか、ですね。自分の心に負担がないと、子どもを怒らないでいられるから。結局、自分がいっぱいいっぱいになって子どもに当たり散らすことが多いとわかっているので。
ーー横澤さんでも当たり散らすことがあるんですね。
横澤 あります! 「3秒後に反省」という毎日ですよ。
ーーたとえばどんなときですか?
横澤 たとえばお片付けとか。一度トイレの中に入って「絶対に怒らないぞ」と誓ったのに、ドアを開けた瞬間にすぐ怒ってるんですよ。「なんで片付けないのーー!?」って。その自分って、すごく怖くて。自分が自分じゃないというか、誰かに操られているみたいな感じで。
横澤 だから私はずっと「産後ホルモンのせい」だと思いながら過ごしています。「ホルモンバランスの化身」と、うまく付き合おうと思いながらやっています。
ーーいいワード! 最初に「ホルモンバランスの化身」と出会ったのはいつですか?
横澤 1人目出産後の1ヶ月前後です。夫との喧嘩がすごく多くなった時期で、私もずっと泣いていました。それで夫には、「これは横澤夏子が喋っているのではなく、ホルモンバランスの化身が喋っているから。ホルモンバランスと結婚したと思ってください」と言いました。産後3、4ヶ月目でやっと「こういう感じで1日が回っていくんだな」というのが見えてきたと同時に、「あの私の怒りはなんだったんだろう? あれは私じゃないな」と客観的になれたんです。
ーー具体的に、どんなことで化身が現れていましたか?
横澤 夫が帰ってきたときに「ああ、疲れた」と言われたときです。「いやいや、私のほうが疲れているから、私の前で『疲れた』とか言わないでね!」とか、夫の一言にものすごくイライラしちゃって。
産後1ヶ月間、ずっと泣いていた
ーー旦那さんは、化身が登場したこともわからず。
横澤 そうなんですよ。テーブルに夫が飲んだ空のペットボトルが置いてあったのに気づいたんですけど、私がただ捨てればいいだけなのに「これ! 自分で捨ててよ!」みたいな感じでずっとペットボトルの前に立つんです。「自分でやればいいじゃん」と言われると「なんで私が!? ここに来てやってよ!」って。余裕があれば「捨てておくね」で済むのに、すべてのことが軽くとらえられなくなっていました。そんな自分の言動を「よくないな……」と思いつつ、「でもこれ、私じゃないから」と。
ーーホルモンバランスの化身の存在、旦那さんはわかってくれましたか?
横澤 「そういうものなのか」と思ってくれたみたいで、それからは一歩引いて、売り言葉に買い言葉をしないようになってきたのかな。
ーー先ほどおっしゃった「出産前後の1ヶ月間、ずっと泣いていた」というのは、どういう状態だったんでしょう。
横澤 いっぱいいっぱいで、子どもの泣き声が私を責めているように聞こえるんです。「こんなにも寝ないのは私のせいじゃないか。もう全然ダメじゃん」「なんでこんなに泣くんだろう? なんで泣き止まないんだろう?」とか。コロナ禍ということもあり、誰とも会えない孤独感も重なり、「私は親失格」と、悩んでいました。
ーー相談できる友だちとも会えないですもんね。
横澤 相談というか、他愛のない話をする相手すらいなくて。ちょっとしたことを大人と喋れないことが辛かったです。だから雑誌やネットを読み漁って、結果それに振り回されて。
ーー不安を煽るような記事もありますよね。
横澤 そうなんです。それに、SNSには信じられないくらいキラキラした人がいるじゃないですか。あれは見ちゃいけないですよね。宝石に見えました。
ーー宝石! わかります。有名ブランドの食器で離乳食をあげている写真とか……。
横澤 そう! そういうのを見ると、「私は正解じゃないことをやっている」と良くない方向に考えが傾いちゃうんですよ。だからもうずっと壁にぶつかっている感じで、泣いていました。
2人目で初めて親に頼り「こんなに楽なの!?」
ーー2人目の産後1ヶ月はいかがでしたか?
横澤 そのときようやく「あ、赤ちゃんってただ泣くんだ」と思えました。「自分のせいではない、これはもう自分には何もできないな」と思えて。やっと「手が足りないな」と気づいたんです。私は不器用なんですが、完璧主義……とはちょっと違うかもしれませんが「自分はできる!」と過信しちゃうんです。それで誰にも甘えられなかった。それがいい方向にいくこともあれば、自分で自分の首を絞めることにもなる。
ーーご実家にも頼らなかったんですね。
横澤 1人目のときはコロナ禍ということもありましたが、それ以前に親から「そっちに行くよ」と言われても、「いやいや」と断って。親と喧嘩をするのがイヤだったんです。
ーーすごくわかります。親の一言が気になってしまいぶつかってしまうこともありますよね。
横澤 メンタルが疲弊していますからね。でも2人目のときは来てもらったら、「え! こんなに楽なの!? こんなに全部やってくれる人、いるんだ!」って。びっくりしました。もっと早く頼ればよかったと思いました。「甘える力」って大事なんですね。
ーー復職後は、さらに甘える機会が増えますもんね。
横澤 そうですよね。だから甘え先をいくつも作っておくことは大事です。「甘え先がある」と思えるだけで心のゆとりに繋がりますよね。
横澤夏子/芸人・タレント
1990年7月20日生まれ、新潟県出身。高校卒業後、NSC東京港に15期生として入学。2016年、R-1ぐらんぷり決勝進出。「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ」(フジテレビ系)の常連で、2023年12月16日放送回で悲願の優勝を果たす。2017年に懸命な婚活が実を結び、会社員男性と結婚。2020年2月に第一子出産を公表し、2021年10月に第二子、2023年6月に第三子出産を報告した。
(取材・文:有山千春 撮影:松野葉子/マイナビ子育て編集部)