#拝啓、復職前の自分へ 不要な夫婦喧嘩は自分が変わることで解消できた/菊地亜美さんインタビュー(後編)
現在、2歳の女の子を育てている菊地亜美さん。インタビュー中にも「今も保育園から電話かかってくるんじゃないかって」とドキドキした様子。家族と協力して仕事と育児を乗りきる、リアルな“働くお母さん”の姿を覗かせてくれました。
家族総動員で「いつもギリギリでしのいでいます」
ーー復職後のご家族との関わり方について伺いたいです。前編で「夜までの仕事があるときは、夫に確認する」と伺いましたが、どんなやり取りをしていますか?
菊地亜美(以下、菊地) 夫とはスケジュール管理アプリでお互いの予定を共有しているので、夫が記入したスケジュールを確認して、空いていたら夜までの仕事を入れて、「この日、お願いできる?」と電話します。それで確約が取れたら、事務所にOKの連絡をしています。
ーー妊娠中からそういった取り決めをしていましたか?
菊地 していませんでした。出産後もしばらくは毎日口頭で確認し合っていましたが、徐々に「スケジュール共有アプリのほうが楽だね」と。
ーーダブルブッキングなどのヒヤッとした経験は?
菊地 正直ありますね(苦笑)。どうしても、というときには、私の母親にも協力してもらっています。娘が熱を出して保育園に行けないけど夫婦で仕事が休めない、というとき、北海道から母に来てもらうんです。
ーー北海道から!
菊地 いつもギリギリでしのいでいます(笑)。今だって「保育園から電話が来るんじゃないか……」とビクビクしています(笑)。
ーーシッターさんに依頼は?
菊地 実は一度もお願いしたことがないんですよ。毎回「今回はなんとかなった……。次は大丈夫かな……」という不安を抱え2年間やってきました。この辺のやりくりは、今でも定まっていないですね。娘のインフルエンザが夫にうつり、母と私にもうつったときは大変でした……。
ーーあるあるですが、お察しします……。
菊地 ただの発熱の場合は、私が仕事を急に休むことは難しいので、マネージャーさんに「家でメイクするので集合時間をギリギリにしてください」と伝えて、入れ替わりで夫が帰宅してリモートで仕事をしてもらって、という体制でしのいでいます。夫婦でお互いの仕事時間を把握するのは、すごく大事ですよね。
独身時代と変わらぬスタイルの夫に……怒!
ーー先ほど夜までの仕事について伺いましたが、何日も続くときはどうしていますか?
菊地 連日お願いしても、夫は「いいよ」と言ってくれるとは思いますが、すべて任せてしまうと私がソワソワしちゃうので、続けてお願いすることは控えていますね。でも、急なお願いにも対応してくれるので、やっぱり夫には感謝の気持ちを持たなきゃと実感します。
ーー旦那さまはどんなタイプですか?
菊地 正反対です。私は心配事があったら朝まで眠れないタイプだとしたら、夫はぐっすり眠れるタイプ(笑)。それが原因で、出産直後はぶつかることがありましたね。最近は、お互いに足りないところを補い合っていられると思います。
ーーどんなことで喧嘩に発展していましたか?
菊地 たとえば、私は深夜や朝方に娘の泣き声で起きて授乳するし、何時から仕事があろうとも早朝に起きて子どものことをしているのに、夫は自分が仕事に行く時間を逆算して起きてくる。独身じゃないんだし、子どものことや家のことをやるためにもっと早く起きてほしいじゃないですか。で、「あなたは、私のこと専業主婦だと思ってるの? ていうか、専業主婦でもこんなことされたら怒るよ!」みたいな。そういうことで喧嘩になっていました。
これを友だちに言うと、「言えばやってくれるんだからいいじゃん」と言われますが、いちいち毎回言うのって面倒くさいじゃないですか。
ーーわかります。こちらが当たり前にやっていることなのに、夫はどうして言わないとやらないのか、と。
菊地 「子どものご飯は○グラムで、レンジで○分温めてね」というメモを取るレベルのことを聞かれるのはいいんです。でも、「おむつが濡れていたら換える」のは、赤ちゃんと一緒に暮らす人間なら普通にやることなのに、言えばやってくれるんだからいいじゃん、と捉えられるのって「おかしくない?」と。それでピリピリして喧嘩になっていましたが、最近はやっとなくなりましたね。
お願いの仕方を変えたら、無用な夫婦喧嘩が解消された
ーー喧嘩がなくなった原因はなんでしょう。
菊地 きっかけは必ず私からで、夫から喧嘩をふっかけてくることはないことに気づいたからです。
あとは、私の機嫌次第だとわかったからでしょうか(笑)。機嫌が悪いときはキツイ言い方をしてしまって。だから夫は「指摘してくれるのはいいけど、言い方や声のトーンだけ変えてくれ」と言います。
夫は、塩が入っている袋をいつも開けっ放しにするんです。それを昨日は「閉めてって言ってるじゃん!」とは言わず、寝る直前に「塩、閉めてくださいね〜」とちょっと笑いながら伝えたら「ごめんなさい」と言って自ら閉めてくれたんです。
ーー効果的!
菊地 私がそうすれば仲良くなれる、円滑に回るって学びました。
ーー先ほど「機嫌が悪いときがある」とおっしゃいましたが、自分で自分の機嫌を取るとき、どうしていますか?
菊地 長風呂ですね。昔からお風呂は大切な時間で、雑誌を読んだりスマホをいじったり、完全なプライベートになれる空間なんです。同時に夫が、「いつまで娘と一緒に入れるかわからないから」と娘と一緒にお風呂に入るので、私は自分だけの時間を確保できてリラックスしています。
ーーママ友とご飯に行ったりとかもしますか?
菊地 実は私、ご近所にママ友がいないんです。保育園は行事もなく、よくも悪くも保護者のみなさんとの接点がなくて。同業者にもいないかも……。あ、でも、北川景子さんは出産時期がすごく近いんです。同時期に出産した人って気になるじゃないですか。だから私は景子さんの出産のニュースを見て覚えていたんですが、そうしたら景子さんもそうだったみたいで。子どもが3ヶ月くらいのときに特番で初めてお会いしいて、向こうから話しかけてくれたんです。
ーー北川さんから!
菊地 基本、私から女優さんに話しかけていくことはないんですが、すごく気さくに「同時期に出産したから、会いたかったんです」と言ってくださって。で、「私ママ友がいなくて」「私もいないよ」なんて話して連絡を取るようになりました。
復帰後初のテレビ出演は、大御所相手の仕事で……
ーーどんなやり取りをするんですか?
菊地 「玉ねぎとか食べさせてる?」とか、ほんとうに些細なことが延々と続く感じです(笑)。お互いに復職もしているから、「こういとき、どうしてる?」とアドバイスをし合ったり。同じ業界にいても女優さんとは接点があまりないですが、同じ“ママ”になると一気に距離が近くなるんだなぁ、と思いました。
ーーお互いに頼れる存在ですね。
菊地 子どもがいないとしゃべる機会もなかったと思うので、本当にうれしいですね。
ーーところで、復職して初めてのテレビのお仕事はいかがでしたか?
菊地 『ザ!世界仰天ニュース』(日本テレビ系)で復帰しましたが、上手くしゃべれなくて。だって、妊娠7ヶ月からずっと家にいたし、産後はほとんど娘と夫にしか会っていないし、友だちともしゃべれるか不安なレベルなのに、急に大御所相手ですよ?
ーーいきなり(笑福亭)鶴瓶さんと中居(正広)さんですもんね(笑)。
菊地 声を張ることもなかったし、自分の話をする機会もなかったですし。だから当然のように、話を振られて噛んでしまいましたが、おふたりからは「全然変わってないね」と言われたんです。「え! 今日の私ダメダメだったのに。でも、意外とみんなには気づかれないのかな?」と思うことができました。みんな気づかないなら、やる前から「どうしよう、できないかも」と追い込んでしまうのはよくないなと。
ーー「自分がダメだと思っていても、周りはまったくそうだとは思わない」と。
菊地 はい。そういえば、産後にDAIGOさんも共演しました。当時はまだ景子さんと知り合う前でしたが、DAIGOさんはすっごいクマがあって完全に“赤ちゃんと一緒に暮らしている人”の顔で、「今日も朝4時から起きている」と話していて。しっかり“パパ”をしていたんです。でもその日の放送をあとで見たら、DAIGOさんもいつも通りで普通だったんです。だから、「みんなそうなんだな」と思って。なんとかなるんですよね!
出産して初めて、プロデュース業にも挑戦
ーー「なんとかなる」は、不安を抱えるお母さん・お父さんにとって、とても励みになる言葉ですね。最近では育児関連のお仕事も増えた菊地さんですが、2022年8月にはお風呂上りにサッと羽織れる「ワンオペバスローブ」(UNf/アンフ)をプロデュース・発売しましたよね。
菊地 以前から商品プロデュースのオファーはありましたが、そもそもプロデュースしたいものがなかったのでそうした仕事はしてきませんでした。でも子育てするうちに、自然と「こういうものが欲しいな」「もっとこうなったらいいのにな」というものが増えてきて。
ママになって初めての気づきがたくさんあり、それをSNSで発信すると「私もそう思っていました」という声が多く届くことが頻繁にあったので、「今こそプロデュースをするタイミングではないか?」と、作らせていただきました。
ーーバスローブは現在ソールドアウトですが、今後も何か予定されていますか?
菊地 マイペースにやっていくつもりです。実現したいのは、イベントですね。妊娠中に女性だけのランチ会を開催してすごく楽しかったんです。「これからも定期的にやっていこうね」というタイミングでコロナ禍になってしまったので、また再開したいと思っています。みなさんとの交流で生まれた「こんなもの、あったらいいな」という声を反映したアイテムを作ることができたら、理想的ですね。
ーースキンケアブランド「Pepti Time」(ペプチタイム) もプロデュースされています。
菊地 「芸能人プロデュース」というアイテムは高いイメージがありますが、この化粧水はバシャバシャ使えるし時短になるし、手に取りやすいアイテムだと思いますよ。実はこれが産後すぐのお仕事で、外出する機会を減らして仕事ができたので、とてもありがたい機会でした。
ーー出産前とは仕事に対する意識がガラリと変わった菊地さんですが、最後に、復職したばかりの方々にメッセージをお願いします。
菊地 うちは生後5ヶ月から一時保育を利用していたので、「保育園に行きたくない!」と泣くようなことはありませんでしたが、最近になって「ママと家にいたい」と言うようになったんです。そのたびに「どうしよう……」とドキドキしてしまいます。
でも、子どもは親がいないところで身につけることがたくさんあると思います。お絵かき、ダンス、リトミック、お友だちとのコミュニケーションなど。「泣いて嫌がるのを預けていいのだろうか、かわいそう」と思っても、子どもが帰宅するころには楽しい顔を見せてくれるんですよね。
だから私は、自分がしょんぼりしている姿を娘に見せないようにしようと思っています。家が明るいことが一番。だからこそ、自分が明るくいられる道を、みなさんと一緒に見つけていけたらと思います。
拝啓、復職前の自分へ ~今の自分から復職前の自分へのメッセージ~
「復職前の自分に手紙を書くなら、何を伝えたい?」ーーそんな問いに対し、菊地さんが筆を走らせたのは、ポジテイブなパワーが湧き上がる、太陽のような言葉でした。
【information】菊地亜美さんプロデュース 働くママがほしかったバスローブ&スキンケアアイテム
がんばるママを応援するブランド「UNf」の第一弾アイテムとして、「ワンオペバスローブ」をプロデュース(現在は完売)。今後も、あらゆるママが「欲しい!」と思うアイテムを制作予定です。
また、スキンケブランド「Pepti Time」を立ち上げ、ローションやオイル美容液もプロデュース。初回ロットが販売から数日で完売した人気アイテムで、年齢だけでなく、ライフステージや環境の変化により出てきた肌悩みにアプローチしてくれます。
UNf https://shop.unf.jp
Pepti Time https://peptitime.jp/
菊地亜美さん/タレント
2008年にアイドルグループ「アイドリング!!!」に所属し、2014年に同グループを卒業して以降、タレントとしてテレビ・CM・ラジオなどで活躍。2018年2月に結婚し、2020年8月に第一子を出産。
(取材・文:有山千春 撮影:松野葉子/マイナビ子育て編集部)