【算数が得意な子を育てる】数量感覚を育もう!家庭でできる、問いかけや声かけの事例
算数の力の基礎となる「数量感覚(数感覚・数の感覚)」を親子の会話を通じて自然と身に着ける工夫をお伝えします
「数量感覚」とは何なのだろう?
算数の先生は、算数が苦手な子供に対して「君は数量感覚が身についていない」と言うことがあります。
しかし、「数量感覚(数感覚・数の感覚)」という言葉は漠然としているため、子供本人だけでなく、多くの保護者もどうすればこの感覚を育めるのかがわかりません。
今回は「数量感覚」とは何かを解説し、この感覚を鍛えるために家庭でできることを紹介します。
「数量感覚」の定義は人によって違う
「数量感覚(数感覚・数の感覚)」の定義は発言者によってバラバラです。塾講師などが口にする「数量感覚」について整理すると、概ね次の3つの感覚を意味しているようです。
【1】数字の大小関係を正しく把握できる感覚
【2】数字を具体的な個数や数直線などと結びつけられる感覚
【3】数字の正誤を日常生活の常識から判断できる感覚
【1】~【3】の感覚は、子供によっては自然と身につくこともあります。しかし、そうならない子供も多いため、大人が上手く誘導して身につけさせる必要があります。
いつまでも数量感覚が身につかない子供に対して、保護者がイライラすることは避けましょう。時間をかけて楽しく、丁寧に教えていくことが大切です。
「数量感覚が身についていない」とは?
数量感覚が身についていない子供の特徴を【1】~【3】の感覚に分類して整理してみましょう。
【1】の感覚が身についていないと、30×1.5=4.5のような計算ミスをします。「30を1.5倍したら、30よりも大きな数になるはずだ」と判断できないことから生じるミスです。
【2】の感覚が身についていないと、15cmと20cmを数直線で表したとき、15cmの線分を20cmの線分より長く書いたり、15と20を3:4の比率で書き表せなかったりします。深さ80cmの水槽に100cmの高さまで水を入れられると思い込むこともあります。
【3】の感覚が身についていないと、人間の歩幅が550cmになったり、自転車の速さが時速250kmになったりしても、全く気になりません。平均を求めるのではないのに、男子の人数を3.5人と答えます。
数量感覚を家庭で育むにはどうする?
子供の数量感覚を家庭で育むには、日常生活や普段の勉強にひと工夫が必要です。
遊びを通して数量感覚を育む
小学校低学年の子供に積み木、ブロック、パズルなどのおもちゃを与えるのは定番です。数量感覚の育成を目的としたおもちゃもあるので、これらで遊ばせてみるのもおすすめです。
一方、子供の理解度に合わせて数字カードなどを手作りするのも効果的です。たとえば、1~10を書いた紙を大きい順や小さい順に並べ替えさせたり、足して5になる組み合わせを選ばせたりしましょう。子供が数字に慣れたら、●や■などの記号やリンゴや花などのイラストを描いたカードも作ります。これらのカードで遊ばせれば、「2=●●」「3=■■■」のように、数字を具体的な個数に対応させる訓練にもなります。
買い物を通して数量感覚を育む
小学校中学年以降の子供は買い物に連れて行きましょう。買うものの合計金額がいくらくらいになるかを計算させることで、概算や暗算の力が鍛えられます。
ほかにも、値引きシール、税込み価格と税抜き価格、1gあたりの値段など、割合や単位量あたりの大きさを学べる数値に着目させるのがポイントです。
高学年の子供には、たとえばトイレットペーパーを買うとき、12ロールで598円の商品と18ロールで798円の商品のどちらが安いかを聞いてみます。1ロールの値段、さらには1ロールの長さまで考えさせると、子供の理解が深まるはずです。
普段の勉強を通して数量感覚を育む
中学受験予定の子供には、普段の算数の勉強で線分図や面積図などの図を描かせることが大切です。子供が計算で問題を解いてしまっても、保護者は「図を描いたらどうなる?」と声をかけてみてください。
保護者は子供が描いた図について、数値だけでなく、次のこともチェックします。
・正しく単位を使えているか?
・長さや大きさの比率は適切か?
・規則正しく整然としているか?
算数の勉強で普段から適切な図を描いていると、子供の頭の中に割合や比などのイメージが出来上がっていきます。
数量感覚に頼り過ぎないことも大切
算数や数学を学んでいく上で数量感覚は大切です。しかし、数量感覚に頼り過ぎるのは危険です。中学以降の数学で文字が入ってくると、感覚では捉えられない抽象的な思考が必要となるからです。
そのため数量感覚が身についたら、次の段階としてその感覚を言語化しておくとよいでしょう。たとえば「30×1.5は、30が1つあって、さらに30の半分を足したのと同じ」のように言葉で表現してみるのがおすすめです。
近年は算数や数学でも、文章を読み取ったり言葉で表現したりする力が求められています。大学入学共通テストの数学などでもこの傾向が顕著です。感覚と言語の両方を大切にしましょう。
