- 掲載
- 2026年10月23日 16:47
- 更新
- 2026年10月23日 18:05
突然の強い雨、どうする? 事前に予想はできるの? 冠水や浸水にはどうすれば…親子で知りたい天気の知識
お迎えの途中、急に空が暗くなって慌てたことはありませんか? 子連れだとすぐには避難できないことも多いですよね。「ゲリラ豪雨」などと呼ばれるような局地的な大雨は予想できるのか? 降り出したらどう動けばよいのか? 雲の研究者・荒木健太郎さん監修のもと、気象予報士でフリーアナウンサーの三上萌々さんに聞きました。
3種類の雲で局地的な大雨を予想できる
――前もって局地的な大雨の可能性を知るにはどうすればいいんでしょうか?
三上萌々さん(以下、三上)まずは天気予報で、局地的な大雨をもたらす「積乱雲(せきらんうん)」の発生の可能性を知ることが大切です。
積乱雲は別名「雷雲(かみなりぐも)」とも呼ばれ、土砂降りの雷雨をもたらします。天気予報で、「大気の状態が不安定」や、「ところにより雷」「竜巻などの激しい突風」といったキーワードを見聞きしたら、積乱雲が発生し、天気が急変する可能性があります。ただし、局地的に起こる現象について、日時や場所をピンポイントで予測することは困難です。そこで、天気予報に加えて、空模様や雲から知らされるサインに気付くことが重要です。
――空や雲からのサインって、どんなものなんでしょうか?
三上 雲の様子から積乱雲に発達しそうな兆しを読み取ったり、空模様の変化から局地的な大雨を事前に察知したりできるんです。このような、空や雲を見て天気の変化を予想することを、「観天望気(かんてんぼうき)」と言います。
――具体的には、どのようなサインがあるのでしょうか?
三上 天気の急変を事前に知るためには、次の3種類の雲があるかどうかチェックしてみてください。
1.頭巾雲(ずきんぐも)
三上 1つ目は頭巾雲(ずきんぐも)です。写真では、丸い雲の頭を覆う、帽子のような見た目の雲を指します。
雲の頭が丸く、モクモクした雲は「雄大積雲(ゆうだいせきうん)」と呼ばれる雲です。その見た目から「入道雲」とも呼ばれる雲で、積乱雲になる一歩手前の雲です。頭巾雲が雄大積雲の頭に現れるということは、今まさに発達中であることのサインです。つまり、このあと積乱雲まで成長するかもしれない、ということを読み取れるのです。
――入道雲があったら、丸い雲の頭を見て、頭巾雲があるかどうかチェックするんですね。
2.かなとこ雲
三上 2つ目は、かなとこ雲です。
積乱雲は限界まで発達すると、それより上空には成長できず、横に広がるようになります。この横に広がった部分が「かなとこ雲」と呼ばれます。かなとこ雲の広がる積乱雲の下は、すでに土砂降りの雷雨になっています。かなとこ雲が見えている場所でも大気の状態が不安定になっている可能性があるため、かなとこ雲が見えたら、自分のいるところでも今後雷雨になるかもしれないと考えることができます。
――積乱雲がいっぱいいっぱいまで発達しているサインなんですね。
3.乳房雲(ちぶさぐも)
三上 3つ目は乳房雲(ちぶさぐも)です。
かなとこ雲や、かなとこ雲から広がる上空の濃い雲の底などにできる、複数のこぶが垂れ下がったような見た目の雲です。積乱雲の進む方向に広がるかなとこ雲の底にできることがあるため、乳房雲が見えたら、それは積乱雲接近のサインになる可能性があります。
――じゃあ、頭巾雲、かなとこ雲、乳房雲などがないか、空をチェックすれば突然の大雨を予想しやすいんですね!
三上 ここで紹介した3種類の雲を見かけたら、まずは気象庁ウェブサイトで「雨雲の動き」を見てみてください。これは主にレーダーの情報で、今どこで強い雨が降っているのか、どのように動くかをチェックすることができます。もし、近くに強い雨を降らせている積乱雲があって、自分のいる場所に向かって進んでいるようなら、早めに屋内に移動するなど、対応することができますね。急な雷雨でずぶ濡れになることも減ると思います。
すぐ近くに積乱雲があるか知るには
――いずれ大雨になりそうな状態を知る方法はわかりましたが、今すぐにでも強い雨が降り出しそうだと見抜く方法もありますか?
雨柱
三上 積乱雲が近いと、雨柱(あめばしら)が見えることがあります。積乱雲から降る土砂降りの雨が柱にように見えた状態で、雨柱が見えたらすぐに天気が急変する可能性が高いです。
――雨の塊がこっちに向かってくるんですね!
棚雲(たなぐも)
――その他にもありますか?
三上 棚雲(たなぐも)が迫っているときも積乱雲が近くにある証拠です。棚雲は、壁のように見える雲で、積乱雲や雄大積雲の雲の底にくっついています。そのため、この雲が見えたら、その背後には積乱雲本体があるということです。
――雲以外のサインもあるんでしょうか?
三上 雷の音がゴロゴロ聞こえてきたり、急に冷たい風が吹いてきたりしたときも、積乱雲が近いサインです。すぐに建物内に避難してください。
天気予報よりも激しく長く雨が降るのはなぜ?
――最近は大雨では、天気予報で伝えられていたよりも長い時間降ったり、雨量が多くなったりするのは、なぜですか?
三上 たとえば、「線状降水帯」と呼ばれる現象が発生した場合には、予報よりも雨量が多くなることがあります。
線状降水帯は、集中豪雨をもたらす原因となる主要な現象で、積乱雲が風上側で次々と発生して連なることでできる線状の雨域や雨雲のまとまりを指します。線状降水帯が発生すると、狭い範囲のほぼ同じ場所に、数時間に渡って強い雨を降らせるため、雨量が100~数百ミリにもなる集中豪雨が発生し、大きな災害に繋がることがあります。
ただ、線状降水帯の発生メカニズムは未解明な部分が多く、正確な予測は難しいのが現状です。そのため、予報より雨量が多くなることがあるのです。
――夏の後半から秋にかけて、線状降水帯がたびたび発生したと思いますが、よく発生する時期なのでしょうか?
三上 よく発生するのは、梅雨の時期で、西日本の太平洋側や九州で発生することが多いです。加えて、夏から秋にかけても、日本付近に秋雨前線が停滞しているときや、台風の接近に伴って発生することがあります。
――台風の雲でも大雨になりますよね?
三上 そうですね。台風の雲も積乱雲です。台風の眼を取り巻く雲は「壁雲」といって、特に発達していますので、この雲がかかると大雨になることがあります。ただ、台風はとても多量の水蒸気を伴っていますので、壁雲がかかっていないところでも、大雨が発生することがあります。たとえば、山地の斜面などに台風周辺の湿った空気が流れ込むと、中心から離れていても大雨になることがあるので、注意が必要です。
――ちなみに、今年(2026年)は台風の話題をよく耳にしますが、例年よりも多いのでしょうか?
三上 台風の発生数は10月21日現在で30個です。平年では約25個ですので、平年と比べると多いです。ただし、日本への接近数は11個、上陸数は3個で、これらは平年並みです。
激しい雨が降り始めたらどう行動する?
――急に激しい雨が降り出したら、どんな行動をすればいいんでしょうか?特に子どもと一緒にいるときは、スピーディーに動けないこともあります。
三上 屋外にいる場合は、すぐに建物の中に避難し、安全な自宅や屋内にいたら、そのまま屋内にとどまってください。地下は水が流れ込む可能性がるので避けてください。保育園や幼稚園の送り迎えの時なら、園内で雨が弱まるのを待たせてもらうのもいいと思います。
なお、木の下での雨宿りは、落雷の危険がありますので絶対にしないでください。
――たとえば、スーパーでお買い物中だったらそのまま雨が止むのを待つのがいいんですね。
三上 夕立や通り雨などの局地的な現象であれば、短時間で済みますから、無理に帰らないで安全な屋内で雨宿りしたいですね。気象庁ウェブサイトの「雨雲の動き」などのレーダーの雨量情報を見て、雨が弱まったり、強い雨域が通り過ぎたりするタイミングを見計らって移動すればいいと思います。
注意しなければならないのは、その雨によって道路の冠水が起こる場合です。冠水しているかどうかはレーダーでは分かりません。そこで、気象庁ウェブサイトで「キキクル」を確認してください。
キキクルのうち「浸水キキクル」は、短時間に強い雨が降った場合に、浸水害発生の危険度がどれほど高まっているかを5段階(白・黄・赤・紫・黒)に色分けして示されます。特に、紫色の段階では、道路が冠水し、側溝やマンホールの場所が分からなくなっている可能性があり、非常に危険です。そのような場合は、建物内の2階以上にとどまるようにするといいと思います。
――車で移動中に道路が冠水し始めたら、どうすればいいですか?
三上 河川や用水路の近くを避けるようにしてください。また、アンダーパスなど周りより低い場所は、冠水し始めると急激に水位が上がる恐れがありますので、絶対に通らないでください。冠水した道路に進入し、車の床面くらいまで水位が上がると、車内に水が入って電気系統が故障する可能性があります。そうなると、窓やスライドドアが開かなくなることもあり、非常に危険です。万が一に備えて、車内に脱出用のハンマーやシートベルトカッターなどを用意しておくと安心です。
――道路に雨水がたまり始めた時、どのくらいの深さなら歩いていいんでしょうか?
三上 歩いてよい深さなどはなく、そもそも冠水した道路に入るのは大変危険ですので、絶対にやめてください。冠水した際の水は、泥などで濁っていますので、水深が浅くても足元が見えなくなるため危険ですし、漂流物で足をケガする可能性や、汚水に入ったことによる感染症の危険もあります。
家族構成によって避難にかかる時間は違う
――深夜、睡眠中に線状降水帯などで大雨が降り続くこともありますね。睡眠中も携帯でアラートが鳴るように設定したりと、注意した方がいいんでしょうか?
三上 アラートの設定も重要ですが、テレビの天気予報などで大雨の予想を見聞きしたら、気象庁ウェブサイトで自分のいる地域の詳しい情報も、あわせて見ておくといいと思います。
台風の接近などで大雨が予想される場合や、線状降水帯発生の可能性が見込まれる場合は、気象庁ウェブサイトで「気象解説情報(台風第〇号)」や「気象解説情報(線状降水帯半日前予測)」が発表されます。そこで、注意しなければならない時間帯や、土砂災害や浸水などの防災事項を確認することができます。また、1日3回発表される「時系列情報」では、翌日までの大雨や土砂災害に関する警報などの見通しが分かります。これらの情報を活用して、明るいうちに避難しておこうとか、家にとどまっても良さそうだ、などの判断の参考にしていただきたいです。
――もしも避難が必要になった時のために、やっておくといいことはありますか?
三上 小さなお子さんがいたり、ご高齢のおじいちゃんやおばあちゃんも一緒に住んでいたり、ペットがいたりするなど、家族構成によって避難にかかる時間は異なります。
大人1人ならすぐ避難できても、家族だと時間がかかることもあるんですね。
そこで、天気が穏やかな日に、自宅の周りや通勤・通学路を見てみて、どんな危険があるか確認していただければと思います。ネットで自治体のハザードマップを見て、自宅から避難所までの水害リスクや避難経路を知っておくのがとても大切です。その上で、事前に家族で話し合って、どんな情報で、どんな場合に避難するかなどを決めておくと慌てずに行動することができます。
――避難するタイミングも、子どもや高齢者がいるかどうかでずいぶん変わりそうですね。
三上 今年(2026年)の5月29日から、注意報や警報などが変わったことも知っておいていただければと思います。ご家族の構成に合わせてこのレベル3か4のどちらかを避難完了の目安と決めて、避難を開始できるようにしていただくのがおすすめです。
(企画・構成 大崎典子)
プロフィール
荒木健太郎(監修)
気象庁気象研究所研究官、雲研究者。1984年生まれ、茨城県出身。慶應義塾大学経済学部を経て気象庁気象大学校卒業。専門は雲科学・気象学。防災・減災をめざして、災害をもたらす雲のしくみの研究に取り組んでいる。映画『天気の子』気象監修。主な著書に『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)など。
三上萌々(インタビュー)
気象予報士、防災士、フリーアナウンサー。1995年生まれ、千葉県出身。慶應義塾大学理工学部応用化学科卒業。東京海上日動火災保険勤務を経て、2023年以降、TBS NEWSでキャスターを務めるなど、フリーアナウンサーとして活躍中。
