【助産師監修】母乳の冷凍保存で注意すべきことは?保存期間・手順・使い方
赤ちゃんと一緒に出かけられない場合など赤ちゃんに母乳を直接あげることが難しいとき、あらかじめ搾乳した母乳を冷凍してストックしておくといいでしょう。今回は、母乳の冷凍に関して、メリットや注意点、具体的な手順などを解説します。
冷凍母乳の搾乳〜保存〜授乳までの手順と注意点
母乳を冷凍して保存するためには、まず搾乳することが必要です。搾乳方法から保存のパッキングまでのポイントや注意点を解説します。
①搾乳|手をよく洗うなど衛生に注意を
搾乳には、お母さんが自分の手を使って母乳を搾る方法と、搾乳器を使う方法があります。どちらの場合も雑菌が入らないようにしっかりと手洗いを行います。爪の間、指の付け根、手首まで洗い残しのないように気を付けましょう。
手で母乳をしぼる際には、蒸しタオルなどで乳房を温めると母乳が出やすくなります。搾乳する際には、同じ場所ばかり搾るのではなく、左右上下まんべんなく搾るのがコツ。母乳の流れがゆっくりになったら、他の部位に指を移動させ搾乳したり、反対の乳房を搾乳しましょう。
搾乳器を使う際には、消毒してから搾乳口を乳頭にあてて使います。なお、搾乳器のサイズが合わないと手で搾るときよりも乳首に強い力がかかる場合があるため、乳首のサイズに合った搾乳口の搾乳器を使いましょう。痛みを感じたら無理に続けないようにしてください。
搾乳するときは、リラックスできる環境で、楽な姿勢で搾乳をしましょう。
搾乳方法について、詳しくは以下の記事でも解説しています。
②保存|日時を記した専用バッグに入れて奥にしまう
搾った母乳はすぐに保存用の母乳バッグに入れますが、その際、母乳バッグの内側に指が触れないように、母乳を入れましょう。また、飲み残しを防ぐため、少量ずつバッグするのがポイント。母乳は冷凍すると膨張するため、決められた容量以上は入れないようにし、母乳バッグの空気をしっかり抜きます。
母乳バッグができたらすぐに、搾乳日を記入してから冷凍庫に入れてください。扉のポケットや入口付近は温度が変動しやすいので、冷凍庫の奥で保存するようにしましょう。
持ち運び|保冷剤で挟んで溶けないように注意
赤ちゃんが入院している場合や保育園など預け先で使う場合は、自宅の冷蔵庫から母乳を使用する場所まで運ばなくてはなりません。持ち運ぶ際には、途中で溶けないように工夫が必要です。2つの保冷剤で母乳バッグをサンドイッチするようにしてはさんだものをビニール袋に入れ、保冷バッグ内に入れるといいでしょう。特に真夏は、車内などの熱のこもった暑い場所に放置せず、移動先に冷蔵庫があれば使用時まで入れておくようにしてください。
③解凍|流水などで溶かしてぬるま湯で湯煎する
冷凍母乳は、冷蔵庫内で時間をかけて(24時間以内)溶かすか、流水で解凍します。とけた後は、母乳バッグを清潔なガーゼで拭いて、哺乳ビンに移します。そのあと、40℃前後のぬるま湯で湯せんすると室温~人肌程度の授乳に適した温度になります。流水やぬるま湯を入れる容器は清潔なものを使用してください。また、温めるときに熱湯や電子レンジを使ったり、直接直火にかけたりすると母乳の成分が破壊されてしまうので避けてください。
冷凍母乳にまつわる3つの疑問
お母さんの母乳には、赤ちゃんにとって大切な成分がたっぷりつまっています。けれど、直接母乳をあげたいと思っても、何らかの事情で授乳ができないこともあります。そんな時に便利なのが、冷凍母乳です。
どんな時?|ママ以外の人が授乳する場合など
お母さんが外出時に家族や保育者に育児を頼む時、NICUに入院中の赤ちゃんに母乳を届ける必要がある時に、冷凍母乳はとても便利です。また、お母さんの病気の時など、万が一母乳をあげられなくなった時を想定してあらかじめ母乳を冷凍保存しておくと、いざという時に誰でも赤ちゃんに母乳をあげることができます。
栄養や味は?|ほぼ変わらないが風味に変化も
いったん冷凍した母乳を解凍し温めて与えた場合でも、直接授乳した際の母乳と比べて栄養面での違いはほぼありません。
ただし、母乳の中にある脂肪が分解されて脂肪酸が増えるため、少し匂いが変わるといわれています。風味は落ちても、問題なくあげられます。
いつまで保存可?|冷凍で3ヶ月を目安にするのがおすすめ
市販の母乳バッグで冷凍母乳を適切に保存した場合(-18度以下)、健康な赤ちゃんでは6ヶ月までは使用できます[*1]。ただし、自宅の冷蔵庫で保存する際には保存状態が一定ではないため、3ヶ月までを目途にできるだけ早めに使いきるようにしましょう。なお、衛生面で問題があるため、余ってしまった飲み残しを再冷凍して使ってはいけません。
まとめ
お母さんが直接赤ちゃんに授乳できない時、冷凍母乳を使えば、いつでもだれでも母乳を与えることができます。栄養がたっぷりつまった母乳を安心して赤ちゃんに与えることができるよう、冷凍母乳の正しい使い方を知って上手に活用してくださいね。
(文:大角美由貴、監修・解説:坂田陽子先生)
※画像はイメージです
[*1]公益社団法人 日本助産師会「赤ちゃんとお母さんにやさしい母乳育児支援」p.19 http://www.midwife.or.jp/b_attendant/breastfeeding.pdf
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます