【助産師監修】 母乳の搾乳&保存方法と解凍方法、気をつけたい注意点4つ
赤ちゃんが入院しなければいけないときや、外出などで赤ちゃんと離れなければいけないとき、しぼっておいた母乳をあげられるといいですよね。しかし、母乳はどのように保存すればいいのでしょうか? どのくらいの期間保存できるのかも気になるところです。そこで、搾乳の仕方や母乳の保存方法、保存・使用するときの注意点をまとめました。
- Step1 母乳の搾乳はどうやる?
- 手での搾乳|6つの手順を抑えて効率的に!
- 搾乳器での搾乳|手よりも楽にできるのがメリット
- 保存する時だけでなく、乳腺炎予防にも
- Step2 母乳の保存方法はどうすればいい?
- 母乳の保存方法は3つ
- 母乳保存方法1「常温保存」短時間ならOK
- 母乳保存方法2「冷蔵保存」冷蔵庫の奥で3日以内
- 母乳保存方法3「冷凍保存」再冷凍はNG!
- Step3 母乳の温め方・解凍方法はどうすればいい?
- 冷凍保存ならば冷蔵庫もしくは流水で解凍
- 冷蔵保存の場合はぬるま湯で湯煎
- 保存した母乳を運ぶ際は保冷に注意
- 母乳を保存するとき、どんなことに気をつける? 4つの注意点
- 注意点① 清潔な環境で行う
- 注意点② 搾乳した日付・時間を容器に記しておく
- 注意点③ 熱湯や電子レンジで解凍しない
- 注意点④ 飲み残した母乳は破棄する
- まとめ
- 人気の搾乳機・母乳パック
(マンガ:ななかんな、監修:清水茜 先生、構成:マイナビ子育て編集部)
記事内では、搾乳した母乳の保存方法・期間などを詳しく解説しています!
Step1 母乳の搾乳はどうやる?
母乳を保存したい場合、まずは乳房から母乳をしぼります。これを搾乳(さくにゅう)といいます。搾乳の方法には、手でしぼる方法と、搾乳器を使う方法があります。
手での搾乳|6つの手順を抑えて効率的に!
手の搾乳(手しぼり)は、母乳を入れる容器を用意しておけば、ほかの荷物はいらないというメリットがあります。ただし、手で搾乳すると非常に疲れますし、十分な量を搾乳するまでに時間がかかります。産後すぐで母乳量が少ないとき、勤務時間帯に少し搾るときにおすすめです。
具体的な手しぼりの方法は、以下のとおりです。
1.よく手を洗う
(乳房を洗ったり拭いたりする必要はない)
2.少し前かがみになって、手を乳房の下に添える
(右手で搾乳するのであれば左手を添える)
3.搾乳する手の親指と人さし指を乳頭の中心からおよそ 2~3㎝はなれたところに置く
(親指とひとさし指でCの字を描くように。それぞれの指先はママの胸壁へ向くようにする)
4.1~2cmほど押し込んだのち、親指と人さし指の腹が合うように乳管をはさんで圧迫する
(乳首を中心として、親指とひとさし指を対角線上に置く)
5.親指と人さし指の力を抜く
6.2~4をリズミカルに繰り返す
(指のCの字と指先の方向は変えず、乳首の上下から・左右から・斜めからなど角度を変えて)
ただし、手で搾乳を行うときは、乳頭や乳房をつまんだり、ねじったり、ひねったり、押し込んだり、引っ張ったりしないようにしましょう。痛みがあるときは、力を抜いてやさしく搾りましょう。
搾乳器での搾乳|手よりも楽にできるのがメリット
搾乳器を使うと、もっと楽に効率よく搾乳できます。ただし、搾乳器を持ち運ぶのが荷物になるという欠点があります。
搾乳器には手動式と電動式があります。手動式のほうが持ち運びしやすく、旅行にも持って行きやすいというメリットがありますが、電動式に比べるとどうしても疲れます。電動式の場合は、手動式よりも楽に搾乳できますが、荷物がどうしても多くなってしまううえ、電源のある場所でしか使えないため、外出先で使いにくいのが難点です。
なお、電動搾乳器には圧が変えられる機能がついているものがあるので、乳頭や乳房が痛いときには圧を下げてみましょう。それでも痛みがあるときには無理して使用せず、搾乳の方法を産院などで相談しましょう。
保存する時だけでなく、乳腺炎予防にも
搾乳の目的は、母乳を保存したいときだけではありません。乳房が張って痛いときに適度に搾乳すると痛みが和らぎますし、乳腺炎の予防にもなります。
ただ、搾りすぎてしまうと余計に張ってしまうことがあるので、まずは赤ちゃんに正しい咥え方・吸い方で飲んでもらうことが第一選択となります。
また、卒乳する前に保育園に預け始めるなどして授乳の機会が減ると、乳房が張って痛くなってしまうことがあります。昼休みなどを利用して搾乳をすれば、痛みが軽減し、母乳の分泌を維持することもできます。この時も搾りすぎに注意しましょう。「少しおっぱいが軽くなったかな」程度で全部出し切らないようにします。
Step2 母乳の保存方法はどうすればいい?
せっかく母乳を搾っても、4時間以上そのまま置いておけば雑菌が繁殖し、栄養成分や免疫成分も変化するため、赤ちゃんに飲ませるのには適さなくなります。それでは、赤ちゃんが安心して飲めるように母乳を保存するためには、どうすればよいのでしょうか。
母乳の保存方法は3つ
母乳の保存方法には「常温保存」「冷蔵保存」「冷凍保存」があり、
冷凍保存
↓
冷蔵保存
↓
常温保存
の順で長く保存できます。
しかし、たとえ冷凍したとしても母乳は時間とともに成分が変化します。しぼった母乳はなるべく早めに飲ませるようにしましょう。
母乳保存方法1「常温保存」短時間ならOK
しぼった母乳は、清潔な容器に入れてふたをして保存します。短時間であれば、常温(16~25℃)での保存も可能です。
常温での保存は、4時間以内なら可能です。ただし、これは正期産で生まれた健康な赤ちゃんの場合です。赤ちゃんが新生児集中治療室(NICU)や特別ケア病棟にいる場合は、保存可能な時間はもっと短くなります。この場合は、施設によって決められた保存期間があるので、それに従うようにしましょう。
母乳をしぼってから赤ちゃんに飲ませる時間がこれ以上あく場合や、真夏など室温が25℃を超えそうな場合は、常温ではなく冷蔵や冷凍で保存するようにしましょう。
母乳保存方法2「冷蔵保存」冷蔵庫の奥で3日以内
搾乳した母乳は冷蔵庫で保存することもできます。その場合は、搾乳したらすぐに冷蔵庫に入れましょう(ここでいう「冷蔵」とは4℃以下)。
ただし、冷蔵庫は頻繁に開けたり閉めたりするため、4℃以下で保存するのは意外と難しいもの。冷蔵保存する場合は、ドアポケットではなく、冷蔵庫の奥のほうの、もっとも冷える場所で保存するようにしましょう。
母乳を冷蔵保存する際の最適な保存期間は、健康な正期産児の場合で3日以内です。
搾った母乳はミルクと混ぜると成分が変化してしまうので、別々の容器に入れて飲ませるようにしましょう。また、うっかり古いものを使用することがないよう、母乳を保存するボトルやパックなどに搾乳した日時を書いておきましょう。
母乳保存方法3「冷凍保存」再冷凍はNG!
母乳は冷凍庫で保存すれば、冷蔵や常温よりも長く保存できます。2ドア冷蔵庫と冷凍室で冷凍庫内が-20℃以下の場合、保存できる期間は6ヶ月以内(健康な正期産児の場合)となります。冷凍の場合も保存パックに搾乳の日時を書き、保存期間を過ぎてしまった母乳は、破棄するようにしましょう。
いったん解凍した母乳を再度冷凍して使うことは避けたいので、母乳を冷凍する場合は小分けにしたほうが無駄が少なくなります。なお、母乳は凍ると体積が膨張します。母乳を入れるのは保存パックの7分目程度にするようにしましょう。
Step3 母乳の温め方・解凍方法はどうすればいい?
冷蔵庫や冷凍庫で保存した母乳は、そのままだと赤ちゃんにとっては冷たすぎるので、飲みやすい温度にまで温める必要があります。
赤ちゃんが空腹で泣いていると、「急がなきゃ!」と焦ってしまうものですが、電子レンジで温めたり、いきなり熱湯に入れて湯煎するのはNGです。母乳の栄養や免疫物質が熱で変わったり、赤ちゃんがやけどしたりする可能性があるからです。
冷凍保存ならば冷蔵庫もしくは流水で解凍
冷凍母乳を解凍させる場合は、常温で放置するのではなく、冷蔵庫に入れて12時間近くかけて解凍します。急いでいる場合は、37℃程度の流水に保存パックや容器をさらして解凍させても構いません。解凍時間は20分以内にしてください。
解凍させた母乳は、常温で最大2時間、冷蔵庫で最大24時間保存することができますが、再度冷凍することは避けてください。
冷蔵保存の場合はぬるま湯で湯煎
冷蔵保存した母乳は、ぬるま湯(40℃以下)で湯煎して人肌程度の温度にします。母乳は冷やすと脂肪が分離します。容器を左右にやさしく振って混ぜ合わせてください。このとき、激しく振ったり、かき混ぜたりするのは避けましょう。
保存した母乳を運ぶ際は保冷に注意
冷凍した母乳を、病院や保育園、外出先などに持っていくこともあると思います。そのときは、保冷剤を入れたクーラーバッグを使うようにしましょう。
母乳を保存するとき、どんなことに気をつける? 4つの注意点
母乳を保存したり、保存した母乳を赤ちゃんにあげたりするときには、赤ちゃんの安全のためにもいくつか気をつけたいことがあります。
注意点① 清潔な環境で行う
しぼった母乳に雑菌がなるべく入らないよう、搾乳は清潔な環境で行いましょう。たとえば、搾乳前には石鹸で手を洗い、清潔なタオルで手を拭きます。また、搾乳器や母乳を入れる容器などの搾乳用品は、食器用洗剤で洗ってよくすすぎ、清潔なふきんで拭くか、清潔なふきんの上で自然乾燥させるようにします。
また、搾乳用品を洗った後は、最低でも1日に1回は消毒しましょう。新品の搾乳用品や、しばらく使っていなかった搾乳用品を使う前も消毒が必要です。消毒の方法は煮沸消毒や消毒液を使う方法などがあります。
煮沸消毒をする場合は、大きな鍋に搾乳用品を入れてすべてが水の中にかぶるようにし、5分以上沸騰します。消毒液の場合は、空気が入らない状態で30分以上消毒液に浸しましょう。そして、消毒液は1日1回は交換してください。消毒の方法は、その搾乳用品の材質によって違うので、搾乳器メーカーの推奨している方法に従うようにしましょう。
注意点② 搾乳した日付・時間を容器に記しておく
期限の過ぎた母乳を飲ませてしまうことを避けるため、搾乳した母乳を入れる容器には、搾乳した日時を書いておきましょう。
注意点③ 熱湯や電子レンジで解凍しない
先ほども説明しましたが、熱湯での湯煎や電子レンジを使って母乳を温めることは避けましょう。母乳の栄養や免疫物質が壊れてしまいますし、赤ちゃんがやけどする可能性もあります。赤ちゃんが泣くとつい焦って早く温めたくなってしまいますが、次の授乳時間を見据えて、前もって用意しておけるといいですね。
注意点④ 飲み残した母乳は破棄する
赤ちゃんはときには途中で飲むのをやめてしまうこともあります。哺乳瓶に残った母乳を見ると、「これをもう一度保存すれば次の授乳にも使えるかも……」と思いたくなるかもしれません。
しかし、赤ちゃんは哺乳びんから母乳を飲むときに、赤ちゃんの口の雑菌が自然に母乳に混入します。ですから、もったいないと思っても、飲み残した母乳は捨てるようにしましょう。
まとめ
赤ちゃんに直接授乳したくても、仕事などでどうしても母乳をあげられないときがあります。そんなときに、保存していた母乳を飲ませることができればずいぶんと助かりますね。
しかし、搾乳した母乳には、雑菌が混入することもありますし、時間とともに成分も変化してしまいます。搾乳や保存の方法には細心の注意を払って、適切な方法で保存するようにしたいものです。
(文:今井明子/監修・イラスト:清水茜先生)
※画像はイメージです
人気の搾乳機・母乳パック
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、助産師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます