【医師監修】おんぶはいつからできる? 始めても安心な時期と、トラブルを避けるための注意点
おんぶができるようになると、家事や外出の際、便利です。赤ちゃんはいつからおんぶできるのでしょうか。おんぶのメリット、デメリット、おんぶの時に起こりやすい事故と注意したいポイントなどについて解説します。
おんぶはいつからできる?
抱っこであれば、横抱きや首を支えながらの縦抱きもできますが、おんぶではどうしても赤ちゃんが縦の姿勢になります。おんぶを始める時期は何を目安に決めればよいのでしょうか。
おんぶは首がすわってから
赤ちゃんは体に比べて頭が大きく、また首の筋肉が未発達なため、生まれたばかりのころは首がグラグラしています。そのため、抱っこをするときは、横抱きで頭を支える必要があります。
はっきりと決まっているわけではありませんが、一般的に成長により首がすわると縦抱きをしても大丈夫と言われています。ですから、赤ちゃんが縦の姿勢になるおんぶも首がすわってからにしたほうが安心です。実際、おんぶの際も使用できる抱っこひもの説明書でも、首が完全にすわってから使用するよう書いてあることが多いです。
しっかり首がすわる前に子守帯(おんぶ紐や抱っこ紐など)を使って首を支えずに縦抱きをすると、赤ちゃんの体に負担をかける可能性があります。
首すわりって?
生まれたばかりの赤ちゃんの首はグラグラしていますが、生後2ヶ月ごろになると、腹ばいの時にしばらくの間頭を持ち上げたり、短時間なら縦抱きで姿勢を保っていられる子も出てきます。
こういった段階を経て、首がすわります。首すわりは3~4ヶ月健診でチェックされる項目です。健診では、腹ばいにしたときに頭を持ち上げるかどうか。また、あおむけに寝かせて、両腕を持って45度までゆっくり引き起こしたとき、頭が遅れずについてくるかどうかなどで、首すわりを判断します。
首すわりには個人差があり、早い子(11.7%)では生後2ヶ月~3ヶ月未満でできるようになり、生後3ヶ月~4ヶ月未満で6割が、生後4ヶ月~5ヶ月未満で9割以上ができるようになります[*1]。
おんぶのメリット・デメリット
さて、おんぶは便利ですが、メリットばかりではありません。メリットとともにデメリットについても知っておきましょう。それを事前に知っておくことで、おんぶによる事故にも注意することができます。
おんぶのメリット
おんぶのメリットは、ママの両手があき、家事や外出がしやすいという点です。また、ママの背中にぴったり寄り添っていられるため、赤ちゃんが安心するというメリットもあります。
また、おんぶで大人と目線が同じになることは、赤ちゃんにとって新しい経験です。大人の目線から親のする行動を見て体験を共有することは、赤ちゃんにとってよい刺激になります。
おんぶのデメリット
おんぶのデメリットは、赤ちゃんの様子がわかりにくいという点です。狭い場所に出入りする時やドアの付近にいる時などに、赤ちゃんの手足をぶつけてしまうことがあります。おんぶで振りむいた際にまわりとの距離感がつかめず、赤ちゃんが打撲したという事例もあります。
「抱っこひも」使用でのおんぶではこんな「ヒヤリ!」も
さきほど紹介した「おんぶのデメリット」以外にも、とくに「抱っこひも」を使っておんぶするときには気を付けるべき点があります。実際、おんぶの時に限りませんが、抱っこひもを使っている人のうち大多数が、使用中にヒヤリとした経験があるようです。
7割が「落下にヒヤリ」の体験あり
抱っこひもを使用していてヒヤリとした経験がある人は多く、7割以上の人が体験しているというデータがあります(抱っこひも安全協議会[*2])。その中でもっとも多いのは、抱っこひもからの落下です。
落下のヒヤリ体験は、抱っこひもに赤ちゃんのせる時、かがんだ時、歩行中などに起きています。とくにおんぶの場合では、「おんぶしようとしたときに横から赤ちゃんが落ちかけてヒヤッとした」「おんぶをしているとき、赤ちゃんが反り返って落ちそうになった」「おんぶする時に安全確認をきちんとせずに立ち上がったら子供が転落した」などの体験談が寄せられています。
おんぶするときに気を付けたいポイント
抱っこひもを選ぶ時の注意点
抱っこひも(ベビーキャリアー)を使っておんぶするのであれば、どの製品を選ぶのかも大切です。抱っこひもにはいろいろな構造、デザインの商品があります。安全性が不確かなものもあり、赤ちゃんが落下してケガをしたり、赤ちゃんの顔が大人の背中と密着して窒息したり、股が十分に開かないことで股関節脱臼を起こしたりすることもあります。
抱っこひもを選ぶ際は、SGマーク(Safe Goods:安全な製品の略で、民間の第三者機関が検証し、基準に適合する製品に付けられるもの)が表示されているかどうかを参考にするとよいでしょう。
また、使用する際は、必ず取り扱い説明書を読み、正しく使うことが大切です。製品によって対象月齢も異なるのであらかじめ確認しておきましょう。ただ、首すわりの時期には個人差があるので、説明書にある月齢だから大丈夫と考えるよりも、赤ちゃんの様子をみて判断することが大切です。
抱っこひもを使っておんぶするときのチェックポイント
抱っこひもを使う際は、まず対面抱きでの使用に慣れてから、おんぶを試してみましょう。また、使う際は、落下事故などを防ぐために、毎回以下をチェックしましょう。
使用開始時の注意点と確認すること
□赤ちゃんを背負うときも降ろすときも低い位置(ソファなど)で行う
□授乳直後には使用しない(嘔吐による窒息の可能性がある)
□バックル類の止め忘れはないか
□ウエストベルトは腰骨の上にあるか
□全体にベルトの緩みはないか
※あまり締め付けすぎてもいけません。目安は抱っこひもの説明書を参考にしてください
□赤ちゃんの位置は低すぎないか
□赤ちゃんは苦しそうではないか
使用中の注意点
□大きく前にかがまない。かがむ必要がある場合は、必ずひざを曲げる
(抱っこの場合は、前に屈む際は必ず手で赤ちゃんを支える)
□外出時など、抱っこからおんぶに変えるときも低い位置で行う
□おんぶしたまま、走ったり飛び跳ねたりしない
□おんぶしたまま、自転車に乗らない
□服や抱っこひもについているフードが子供の顔にかからないようにする(窒息のおそれがある)
その他の注意点
赤ちゃんの脚がまっすぐにならないようにする
おんぶでも抱っこでも、赤ちゃんの脚は伸ばさないように注意が必要です。赤ちゃんの脚はもともと両膝と股関節が十分曲がって「M字型」となっているのが正常な状態で、伸ばされた状態が続くと股関節を脱臼する可能性があります。
基本的に、抱っこよりおんぶのほうが股関節の異常を引き起こすリスクは少ないようですが、抱っこひもを使ったおんぶの際は、
□赤ちゃんのお尻が座面にしっかりと乗っている
□側面からみると背中が自然なカーブを描いている
□真後ろから見たときに赤ちゃんの脚がM字型になっている
ことを、ときどき鏡で確認してみましょう。脚がぶらーんとぶら下がった状態は赤ちゃんの股関節に負担をかけるので注意しましょう。
手や腕をひっぱらない
これもおんぶに限ったことではありませんが、子供のひじは引っ張ると簡単に脱臼するので抱え上げる際は注意が必要です。とくに4歳未満でよく見られます[*3]。脱臼してもあまり腫れたりはしないものの、子供はとても痛がります。
おんぶや抱っこの際は、手や手首をもって持ち上げたり、引っ張ったり、振ったりしないように注意しましょう。もし脱臼した場合は、家庭で戻す方法もありますがコツがあり、かえって悪化させる心配もあるので、小児科や整形外科を受診したほうが良いでしょう。
おんぶするほうの体力も考えて、長時間のおんぶは避ける
とくに、子供が乳児のうちは、出産によるママの体のダメージがまだまだ残っているころ。パパであっても長時間のおんぶは体に思いのほか、負担がかかります。
「まだまだいける」と無理しているうちに、足元がおぼつかなくなれば危険にさらされるのは背中の赤ちゃんです。また、長時間おんぶされっぱなしは赤ちゃんの体にも負担をかけます。移動時間はできるだけ短めにし、十分な休憩を取りながら、おんぶしましょう。
まとめ
おんぶは首がすわったらできるようになりますが、首すわりには個人差があるため、抱っこひもの対象月齢を目安にするよりも、赤ちゃんの様子をみて判断することが大切です。また、抱っこひもを使って抱っこやおんぶをするときは、落下事故に注意しましょう。抱っこひもは正しく使うこと、おんぶするときは前に屈まない、背負うときも降ろすときも低い位置で行うことが大切です。
(文:村山真由美/監修:梁尚弘先生)
※画像はイメージです
[*1]厚生労働省「平成22年 乳幼児身体発育調査」
[*2]抱っこひも安全協議会抱っこひも「ヒヤリハット」体験募集結果レポート ヒヤリハット体験 第1位は「落下の危険」
[*3]アメリカ小児科学会 Nursemaid’s Elbow
※この記事は、マイナビ子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます