
妊婦もホルモンを食べてもいい?焼き肉で注意したいトキソプラズマとは【管理栄養士監修】
元気をつけたい妊娠中、焼き肉を楽しんだりすることもありますよね。そんな時にふと気になるホルモン。レバーなどの内臓はなんとなく体に良さそうなイメージはありますが、注意すべき点などあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
妊婦もホルモンを食べていい?
ホルモンとは牛の内臓のことを指します。代表的なものに、ハツ(心臓)、レバー(肝臓)、ミノ(第一胃)、ハチノス(第二胃)、シマチョウ(大腸)などがあります。他にも、タン(舌)やほほ肉、ハラミ(横隔膜)、サガリ(横隔膜)などもホルモンの一種です。
妊娠中はいろいろな食べ物から栄養を摂りたいものですが、一方で食中毒なども心配ですよね。ホルモンを食べる時にはどのようなことに気を付けたらいいのでしょうか。
ホルモンの一種・レバーには注意が必要


ホルモン中でもレバーは鉄分が豊富なので、女性には人気があります。妊婦の貧血対策として鉄分はたくさんとりたいものですが、妊娠時にはビタミンAが過剰になってしまう心配もあるため、たくさんは食べない方がいいでしょう。
焼肉で食べるレバー(牛レバー)は、ビタミンAが鶏レバーや豚レバーの約1/10と少ないものの、牛レバー100gには1100μgRAEのビタミンAが含まれています。女性のビタミンAの耐容上限量は2,700μgRE/日ですが、妊娠3ヶ月以内は特に気を付けたいため、レバーを選ぶのであれば鶏や豚のレバーより牛レバーを選んで、ときどき少し楽しむ程度にとどめ、毎日食べ続けるようなことはしないようにしましょう。
なお、腸管出血性大腸菌による重い食中毒やE型肝炎などのリスクがあるため、牛でも豚でもレバーの生食はやめましょう。食べるときは中心部まで十分に加熱しましょうね。
レバー以外のホルモンもよく加熱することが重要
レバーだけではなく、肉類はすべてよく加熱する必要があります。新鮮かどうかは関係なく、どんなものであっても生肉は食中毒リスクがありますので、しっかり中心部まで75℃で1分間以上加熱しましょう。
妊婦に危険!加熱不足のホルモンはトキソプラズマ感染のリスク
加熱不足の肉による食中毒は、腸管出血性大腸菌だけではなく、いろいろな種類があります。妊婦だけではなく、しっかり加熱することを覚えておきたいものです。その中でも、特に妊婦に注意が必要な食中毒が、母子感染リスクのあるトキソプラズマ症です。
トキソプラズマとは


トキソプラズマ症は、寄生虫であるトキソプラズマ原虫が引き起こす感染症です。おもに猫の糞便中に寄生し、それを摂取した動物にも感染します。感染経路には「感染している猫の糞」「ガーデニングなど土をいじること」「十分に加熱されていない肉などを食べること」の3つがおもにあげられます。
肉は特に豚肉・羊肉の症例が多いですが、すべての動物に可能性はあるため注意が必要です。
ホルモンを食べる時に、しっかり中まで火が入っていない状態で口にしてしまうと、トキソプラズマ症になる可能性があります。ホルモンの中には、分厚く切られ、火の通りがゆっくりな部位もあります。焼肉の場合は、しっかり中まで焼けているか確認し、生肉をつかんだトングで取り分けたりしないようにしましょう。
トキソプラズマ感染の症状
通常はトキソプラズマに感染しても、無症状だったり体調の悪さや発熱程度の軽症であることが多いです。
トキソプラズマ感染が赤ちゃんに影響することも
妊娠中に特に注意が必要な理由は母子感染があるためです。
妊婦が初めて感染した場合は、流産・子宮内胎児死亡などを引き起こしたり、脳症や水頭症、子供の発育不全、精神遅滞、視力障害などを発症する可能性があります。
加熱不足以外にもあるホルモンの注意点
ホルモンを食べる時には、トキソプラズマ予防だけではなく、さまざまな食中毒のリスクを考え、しっかり中まで加熱が必要であるのですが、それ以外にもちょっとした注意点があります。
ホルモンは脂肪が多い!カロリー過多に注意


低カロリーのイメージが強いホルモンですが、種類によってはそうでないものもあります。ギアラと呼ばれる牛の第4胃やハラミやサガリは油の多い部位で、カロリーが低いとはいえないため食べすぎには注意が必要でしょう。
味付けが濃いものは塩分の摂りすぎに注意
ホルモンは、部位によってクセがあるものが多いのため、にんにくや唐辛子などで味付けをしていたり、全体的に濃い味付けになりがちです。食べても大丈夫ですが、くれぐれも食べすぎて塩分過多にならないようにしましょう。
まとめ


ホルモンは、しっかり焼けば妊娠中でも食べることができます。焼肉の場合は生肉のトングと取り分け用のトングをしっかり使い分けられるよう、サラダの近くに生肉を置かないなどの配慮をしましょう。ホルモンだけでおなかいっぱいにしようとしてしまうと味付けも気になりますので、野菜やごはんなどをとりつつ楽しみましょう。
(文:川口由美子 先生)
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