パパ友って必要? 理想のパパ友について考えてみた #渡邊大地の令和的ワーパパ道 Vol.11
『産後が始まった! 夫による、産後のリアル妻レポート』『夫婦のミゾが埋まらない 産後にすれ違う男女を変えるパートナーシップ学』(ともにKADOKAWA)など、夫婦のパートナーシップをテーマにした著書が話題の渡邊大地さんによる新連載! 令和における新たなワーパパ像を、読者のみなさんとともに考えます。
昔からよく、「女子に比べて男子の精神年齢は低い」などと言われたりしますが。
我が家の長女(小3)、先日お友だちと遊んだ日の夜、「今日はみんなで“かいぶん”探したんだ~。“イカ食べたかい?”“たしかに貸した”」と、回文の数々を披露してくれました。なかなか知的な遊びです。
それに張り合った長男(小6)、「オレ、今日すごいの覚えてきた! こうやって指を口の中に入れてみな」と、口の両端に人差し指を入れ、外側に引っ張り、「イ~」の口にするよう長女に言いました。「そのまま“文化”って言ってみ」と。すると、文化の「ぶ」がうまく発音できなくなります。
長女「う、ん、か」
長男「あれ? ……もう一回」
長女「う、ん、か」
長男「あれ、おかしいな……学校でやったときは、キレイな“う・ん・こ”になったんだけどな」
それをやるなら、“学級文庫”と言わせて“がっきゅう うんこ”にするのが常道である。昭和に戻って勉強してこい!
まあ、こんな調子ですからね、男子は先が思いやられますよ。
皆さん、こんにちは。渡邊大地です。今回も、「ワーパパ」とは何たるかを一緒に考えていきましょう!
パパ友作りを勧められるぼくたち
仕事柄、自治体(県や市区町村など)から両親学級や子育て講座の講師依頼をいただくことがよくあるんですが、いっとき、「講座を通してパパ友やパパサークルを作る流れに持って行ってほしい」というリクエストが多かったことがありました。もしくはストレートに、「パパサークルを作る講座をお願いします」と言われたこともあります。どうやら自治体職員さんは、地域のパパたちにパパ友やパパサークルを作らせたいようです。
また、両親学級や子育て講座を受講して下さるご夫婦の妻側から「夫にパパ友を作ってほしいと思って受講しました」という受講動機を聞くこともしばしば。妻たちの中にも、夫にパパ友を作らせたいという思いがあるようです。
では、これを読んでくださっている男性の皆さんに聞きたいのですが、あなたは「パパ友を作りたい(増やしたい)!」「パパサークルに入りたい!」と思っていますか?
これって、男性の育休取得問題と同じような構図があって、いくら勧められても、そもそもまわりにパパ友の輪やパパサークルがないと、それが一体どんなもので、どんなメリットがあって、必要なものなのかどうか、イメージがわかないというのが正直なところだと思います。
パパ友が欲しいと思っているような男性なら、誰に働きかけられなくてもほかのパパに声をかけるものですし、進んでパパサークルを探しているものです。ということは、積極的にパパ友を作りたくて“悩んでいる”パパ達がさほどいるとは思えないんですよね。でも、周囲からは「パパ友作り」を勧められる。パパ友はいた方がいいのでしょうか?
そもそも「パパ友」って何だろう?
「ママ友」というと、子育て情報をシェアするママ同士のコミュニティ、というイメージがありますが、一方「パパ友」の定義は何でしょうか?
情報交換のため、定期的に会うことは必要でしょうか? それとも保育園の送り迎えであいさつをしたり、しゃべったりするだけの間柄でもよいでしょうか?
会社の子育てパパ同士でもよいのでしょうか? それともある程度近い生活圏に住んで、子育て施設の情報や、地域イベントの情報をシェアできないといけないのでしょうか?
趣味を共有することは必要でしょうか? 一緒にキャンプに行ったりするのでしょうか?それともお互いにプライベートはノータッチでもよいでしょうか?
LINEグループなどの連絡用のグループを作っておくことは必要条件でしょうか? それともグループなどなくてもよいのでしょうか?
子育ての情報をシェアしないといけないのでしょうか? それとも妻や子育ての愚痴を吐き出すだけでもよいのでしょうか?
――などなど考えると、「パパ友」を一言で説明するのは簡単ではなさそうです。
参考までに、株式会社明治が2021年6月に行った「パパの育児参加状況 実態調査」[*1]によると、0歳児を育児中の25~39歳の男性590名が「参考にしている情報源」は、
1位・妻の意見……89.5%
2位・両親・親族の意見……57.8%
3位・ネット検索……53.9%
という結果になりました。パパの情報源は、身内とネット情報が高い割合を占めているようです。先に書いたように、自治体がパパ友作りを推奨する背景には、このようなパパの情報源に「パパ友」を加え、育児に対して積極的にかかわり、自ら情報を収集してほしいという思いもあるはずです。
種類別 パパ友の実態
そんな期待をされているらしい「パパ友」ですが、実態はどんなものでしょうか。ここでは、ぼくが知っている限りのパパ友の種類を紹介します。
飲み仲間としてのパパ友
コロナ禍以前は、飲み仲間としてのパパ友作りを奨励する自治体の講座が実際に存在しましたので、これが一般的なイメージなのかもしれません。仕事の話抜きで飲める仲間が欲しい、というパパもいると思いますし、ママのなかにも「ストレス発散の場として、夫が飲み仲間を作ってもOK(別に家族に還元しなくてもいい)」という人もときどきいます。ただし、「パパ友=飲み仲間」という位置づけの場合、子育ての情報共有のための集まり、という役割はあまり期待できません。
同年代の子育てをするパパ友
同じ年くらいの子どもを育てていて、悩みを共有したいという場合もあると思います。妻たちは産院の母親学級などで出産時期の近いママと仲良くなって出産後も情報交換することがありますが、それのパパ版というイメージ。ただ、男性にはなかなかそのつながりを作るチャンスがないのですが、保育園のパパ同士が仲良くなれると、このような役割を果たせるのではないかなと思います。
家族ぐるみで遊びに行くパパ友
子連れで、または家族ぐるみで付き合って、キャンプに行ったりバーベキューをしたり、という関係もあります。ぼくが子どものころは、近所の仲良し3家庭でよくパパたちに遊びに連れて行ってもらったりしました。子育て時代の思い出作りにパパががんばってくれるパターンです。ただ、子どもの年齢がまちまちだと、子どもが成長して友だち関係が変化するに従って家族同士の関係も希薄になることが多いようです。
地域別の「パパサークル」
同じ地域のパパが集まることに興味があるという人には、地域別のパパサークルがオススメです。ちょっと調べただけでも、神奈川県横浜市港北区の「どろっぱ」[*2]や、東京都練馬区の「ねりパパ」[*3]など、地元の親子向け・パパ向けイベントを企画する素敵なパパサークルが存在します。大概パパサークルは新メンバーをいつでも歓迎してくれるので、目的を持った活動をしたいというパパは、ぜひインターネットで地元のパパサークルを探してみてくださいね。
ぼくが保育園のパパと「パパ友」になったきっかけ
ぼく自身が「パパ友」と思っているのは、長男が保育園に通っていたときのパパたちとの付き合いです。卒園して5年以上になり、コロナ前は年に1回ほど飲みに行ったりしていましたが、2020年以降はLINEグループでのやり取りのみで、一度も会っていません。LINEグループには15名ほど、主に投稿するのは2~3人で、子育て情報は薄めです。投稿内容は、「進級して誰と誰(保育園で一緒だった子)が同じクラスになった」とか、「保育園でお世話になった●●先生が別の園に異動したらしい」とか、「駅の近くに新しい焼き鳥屋さんができたので行った人は感想教えてほしい」とか、そんな感じです。
そもそもこのパパたちと付き合いはじめた経緯をお話しすると、保育園の最初の懇談会のときに、あるパパ(Aさん、とします)が全員に向かって「これから5年間同じクラスで過ごすわけですから、皆さんで懇親会でもしませんか?」と呼びかけてくれたんですね。その後彼が食事会をセッティングしてくれて、家族ぐるみで保育園最初の懇親会が行われ、その際に来たパパたちですぐに意気投合しました。それ以降、パパが中心に、幹事持ち回りで懇親会を開催することになり、進級に伴って園児・保護者の数も増えていき、それが卒園まで5年間続きました。当然このクラスは保護者同士とても仲がいいです。その合間にパパだけの飲み会もたびたび行われています。
長男が保育園に入って3年目に長女も同じ保育園に入りました。その最初の懇談会のときに、今度はぼくが以前のAさんと同じように懇談会の終わりに「皆さんで懇親会でもしませんか?」と声を上げ、最初の幹事をしました。しかし、2~3回の食事会は行われたものの、いつの間にか自然消滅してしました。
その後第3子が入園した際には、同じように「懇親会でも」と声を上げてもまったく同意を得られず……一度も開催されずに、おそらくこのまま卒園まで行きそうです。
「コロナ禍だし、保護者同士の関わりって年々薄くなってきているのかなぁ」と思ったりしましたが、Aさんいわく第2子(我が家の長男と同級生)のクラスがとりわけいい雰囲気だったそうで、Aさんの第1子クラスも第3子クラスもノリはイマイチなんだそうです。つまり、時代の変化というよりは、そのときのクラスや保護者の雰囲気による部分が大きいようです。そう考えると、長男のときのクラスは、気の合うパパばかりで、毎回の食事会をパパが持ち回りで企画していたという積極的な面もあり、貴重な年だったと思わざるを得ません。
そんな発起人のAさん、子育て情報を共有したいという思いは特になく、単純に妻公認で飲める機会が欲しい、ということで声を上げてくれたようですが、結果的に保護者同士、パパ同士が仲良くなるきっかけになりました。
保護者が仲良くなることのメリットとしては、子どもたち同士も仲良くなりやすいことや、ほかの家の子が「他人の子」ではなくなるので、クラスの子どもたちみんなの成長に関心を持てるようになったことが挙げられます。また、パパ同士の風通しがよくなると、送り迎えに対するパパの抵抗感が薄れるのか、当時はまだ珍しかったパパの送り迎えがとても多いクラスでしたし、保育園行事(係活動や保護者出し物)にパパが参加することも多くなるという効果があります。保育園の懇談会へのパパの参加率も圧倒的に高く、毎回担任の先生が驚いていました。そういう意味で、パパたちが顔見知りで親睦が深いというのはいいことづくしですよね。
ぼくの個人的な「パパ友」観は、子どもや家族全員を巻き込んだ付き合いで、家族にいい影響が出る友人でありたいというものです。逆に、パパたちだけで集まって飲んで、その子どもや妻の顔が見えないのは、ぼくにとっては有意義ではありません。
パパ友がいなくても、大丈夫!
先ほど書いた通り、「パパ友=飲み仲間」という風潮は根強く、また子育て情報のシェアだけのために結ばれた仲間、というのは、そもそもパパ友を作る機会が少ないパパたちにとってあまり現実的ではありません。特に今のようなコロナ禍で飲み会が自粛されるなか、情報源としてのパパ友作りはかなりハードルが高いのかなという気はします。
ぼく個人的には、子育てに関する悩みは専門家(医師や医療関係者、保健師、保育園、幼稚園、子育て広場など)に聞くべきだと思いますが、それもあまり行き過ぎて情報マニアになってしまうと、妻には押し付けがましく感じられるんじゃないかと心配です。もっと言うと、多くのママは、パパが外から情報を持ってくるよりも、「まず現状を知ってほしい」「子どもをよく見て、そして私の育児の状況や働き方を理解してほしい」と思っているんじゃないでしょうか。
ぼくは、パパ友ってあったらあったでいい、くらいのもので、必須なわけではないと思っています。パパ友がいないからって焦ったり悲観したりすることはありません。パパ友がいないと子どもが非行に走りやすくなるなんてデータは聞いたことがありませんから、だいじょうV!(←あ、読めます?「だいじょうぶい」って読みますよ!)
例えるなら、「趣味のひとつ」くらいに捉えておけばいいのではないでしょうか。
パパ友という趣味がない人は、焦って作ろうとしなくていいし、パパ友がいる方が偉いとかスゴイとかでもないです。パパ友のために生きているわけでもないですし、趣味は人それぞれです。
パパ友がいる人も、のめりこみ過ぎず、家族に喜ばれる範囲でパパたちと付き合っていくのが、理想のパパ友かなと思います。中心に家族があることを忘れずに!
そういえば、「保育園のパパたちの飲み会で、何か有意義な子育て情報のやり取りしたっけな~?」とよくよく考えてみたら、以前の飲み会でも“学級文庫”の話になって、「いや、オレのときは『文鎮』だった」(同じように発声すると“うんち”になる)というパパもいて、“文鎮派”と“学級文庫派”に分かれて議論が白熱したことを思い出しました。小6もオッサンも変わらないね。
今回のまとめ
(文:渡邊大地、イラスト:村澤 綾香、編集:マイナビ子育て編集部)