
助産師解説!母乳でおっぱいに左右差|量・張り・痛み・しこりの対処法<体験談>
母乳をあげていると「片側だけ出方が悪い」「左右で大きさが違ってきた」等、左右差が気になることがあります。アンケートでもそんな状況にとまどった経験談が集まりました。今回は、母乳育児中に左右差の悩みがあるときの具体的な対処法について、助産師の坂田先生に解説してもらいます。
<アンケート>授乳で左右差が気になったことはある?

母乳の授乳中に「おっぱいの左右差」で困った経験があるかどうか、先輩ママに聞きました。
その結果、左右差で困った経験がある人は37%おり、困りごとのなかでもっとも多かったのは「母乳の量や出方に差があった」の34%でした。


<体験談>左右差があって困ったこと
※マイナビ子育て調べ 調査期間:2021年11月10日~2021年11月17日 調査人数:94人(21歳~40歳以上の女性)の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
おしえてようこ先生!左右差の解消法は?

母乳で左右差があるときの対処法について、具体的に何をすればいいか助産師の坂田先生に解説してもらいます。
「乳輪まで」くわえているか確認!
おっぱいに左右差があるときは、「母乳の出が悪そう」「赤ちゃんがなかなか飲んでくれない」「授乳の際、痛みがある」側の授乳の際、まずは「赤ちゃんの口元」を確認してみましょう。
実は、母乳は乳首だけを吸っていてもなかなか出てきません。赤ちゃんが母乳をうまく飲むには大きく口を開け、乳首だけでなく「乳輪まで」くわえる必要があるのです。
これは「ラッチオン(吸着)」といって、正しいラッチオンができていないと赤ちゃんは効率よく母乳が飲めません。

乳首だけを吸っていると赤ちゃんが母乳をうまく飲めないだけでなく、
ママは乳首に強い痛みを感じたり、傷ができたり出血することもあります。
ラッチオンについてくわしくは、下記の記事で解説しているので参照してください。
授乳姿勢を確認!
また、ママや赤ちゃんにとって「無理な授乳姿勢」になっていないかも確認してみましょう。
正しい授乳姿勢のポイント
(1)乳頭が赤ちゃんの上顎の方に向いていて、赤ちゃんの下顎は乳房に触れている
(2)上から見たとき、赤ちゃんの耳・肩・腰が一直線になっている
(3)赤ちゃんとママのお腹が向かい合って密着している
(4)ママが赤ちゃんの体全体を支えられている

「コクッコクッ」と母乳を飲み込む音が聞こえたり、
ママが授乳中に乳房や乳頭に痛みがないのも、上手く吸着できているサインです。
NGな授乳姿勢の特徴

・「顔はおっぱいを向いているのに体は仰向け」等、赤ちゃんの顔と体の向きが違っている
・首がねじれている
・赤ちゃんの下顎が乳房に接していない
・ママと赤ちゃんの体が密着していない
・ママの体が前屈して、肩に力が入っている

舌打ちするような音が聞こえたり、
赤ちゃんの頬にえくぼができるような時も上手く吸着できていないサインです。
なお、授乳姿勢にはベーシックな「横抱き」のほかにも、「交差横抱き(クロスクレードル)」「レイバック」「フットボール抱き(脇抱き)」「縦抱き」など、いくつか種類があります。
下記の記事で解説しているので、ママや赤ちゃんに合った方法を試してみてくださいね。
飲ませる順番を工夫する!
乳房の左右差が気になるときは、授乳の順番を工夫する方法もあります。
具体的には、「母乳の出が悪そう」「赤ちゃんがなかなか飲んでくれない」「乳房が小さい」側のおっぱいから、毎回授乳し始めます。
赤ちゃんが自分から口を離したら、反対側のおっぱいからも授乳します。
母乳の量が十分足りていて、片側の母乳が「出すぎている」時
片側のおっぱいの出が良すぎる場合は、4時間の間、「出が悪い方からだけ」授乳する方法もあります。
4時間経ったら、通常通りに授乳をします。こうすることで、授乳しない間、出が良すぎる側は母乳でいっぱいの状態が続くので、自然と母乳の産生量が抑えられるようになります(これは「ブロックフィーディング」と言います)。

この方法を試す前には、吸着や授乳姿勢に問題がないか確認してもらうために、
助産師や母乳育児の専門家に相談してみましょう。
母乳授乳でおっぱいに左右差ができる原因は?

そもそも、母乳をあげているとき、おっぱいに左右差ができるのはなぜなのでしょうか。
赤ちゃんが飲み取る量に差がある
赤ちゃんがおっぱいを吸うとその刺激で「プロラクチン」というホルモンが分泌され、母乳の産生が促されます。プロラクチンの分泌量は産後直後がもっとも高いのですが、何もしないと産後1週間くらいには妊娠前と同程度にまで減ってしまいます。
ですから、赤ちゃんに頻回に授乳することは母乳育児を軌道に乗せるうえで大切なことです。
ただ、せっかく母乳が作られても、長い間、乳房に溜まったままになっていると、母乳に含まれる「乳汁産生抑制因子(FIL)」というたんぱく質の働きで、母乳の作られる量は減ります。
これはその赤ちゃんにちょうど良い量の母乳が出るように、ママの体に自然に備わった仕組みですが、何かの理由で赤ちゃんが上手に飲めていないせいで母乳が乳房にとどまっていたとしても、母乳の産生量は減ってしまうのです。
左右のおっぱいでもともと母乳の出に差がある場合はもちろん、最初は同じように出ていても、赤ちゃんの飲み方に差があると、うまく飲めていないほうの母乳量は少なくなる場合があります。
例として、
・飲ませやすい方の乳房からいつも授乳を始めている
・片方の乳頭に痛みがある
・利き手と逆の手で赤ちゃんを支えるのが難しく、吸着が浅い
などがあります。
乳がんのこともあるの?
授乳中は、片側のおっぱいだけにしこりができたり、張ったりすることも多いものです。ただ、授乳中にも乳がんができることはあります。
以下に当てはまるときはとくに、早めに医療機関を受診してください。
・刺激がない状態でも分泌物が出ている
・片側の乳房からだけ分泌物が出ている
・分泌物に血液が混じっている、ピンク色をしている
・しこりやひきつれ、へこみ、ただれ等がある
まとめ

母乳育児中、おっぱいに左右差ができたときの原因・対処法について解説しました。赤ちゃんが母乳をうまく飲むためには、「おっぱいのくわえ方」と「授乳姿勢」が大切です。これらに直したほうが良いところがあると、乳房の大きさや母乳量の左右差だけでなく、痛みなどが出てくることもあります。
授乳中に左右差で困っていたら、ここで解説したチェックポイントを参考に、普段の授乳の仕方を見直してみてください。それでもなかなかうまく行かない場合は、ひとりでなんとかしようとせず、母乳外来や助産院などで専門家に相談してみましょう。
(文:坂田陽子先生/構成:マイナビ子育て編集部)
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※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます