
助産師解説!卒乳ケアは必要?やり方と時期・注意点<体験談>
卒乳するとき、赤ちゃんの反応が気になる一方で、「おっぱいケアは必要かどうか」についても疑問に思うかもしれません。今回は、卒乳のときにおっぱいは何かケアしたほうが良いのかどうかや具体的な方法・注意点について、助産師の坂田先生に解説してもらいます。
卒乳のおっぱいトラブル<体験談>
卒乳のときに「おっぱいトラブル」を経験した先輩ママの声を紹介します。
※マイナビ子育て調べ 調査期間:2021年10月28日~2021年11月12日 調査人数:150人(21歳~40歳以上の女性)の回答より抜粋
※ここで紹介した方法と結果は、個人の体験によるものです。記載の方法を推奨したり、結果を保証するものではありません。
卒乳のとき「おっぱいケア」は必要?

「卒乳」は、赤ちゃんの欲求に合わせて徐々におっぱいやミルクを卒業していくこと。卒乳するにあたって、とくに母乳の場合は進め方に少しコツがあります。
中でも、それまでおっぱいをさかんに作っていた「乳房のケア」で、実は注意したいことがあるのです。
おっぱいケアで「乳腺炎」などのトラブル予防
おっぱいを急にやめると、乳汁はまだ作られ続けているので胸が張ることがあります。
そのままにしておくと胸が張って痛み、「乳腺炎」(乳房やその周辺が炎症を起こすこと)になることもあります。
乳腺炎の症状
・乳房が腫れる、痛む、しこりができる
・乳房の一部が赤くなったり熱を持ったりする
・ひどくなると、悪寒・発熱、頭痛や関節痛などインフルエンザのような症状が出る
乳腺炎は、軽い場合は乳房に溜まった乳汁を出すことでたいてい良くなりますが、炎症を起こした乳房に細菌などが感染すると、38℃以上の高熱が続きます。
この場合は、抗生物質(抗菌薬)などによる治療や、膿がひどく溜まっている場合は手術で皮膚を切開して膿を出す処置が必要になることもあります。
おっぱいが張ったら「圧抜き」を
ですから、徐々におっぱいの回数を減らす卒乳でも、乳房が張っている場合は中に溜まった乳汁を少し絞り出して過度な張りを取り除く「圧抜き」をしましょう。
くわしいやり方はこのあと解説します。
卒乳ケアのやり方は?

卒乳ケアの具体的なやり方を解説します。
(1)搾乳で「圧抜き」|手で軽く搾る
徐々におっぱいの回数を減らす卒乳の方法は、急にやめるよりも、乳房や赤ちゃんに負担が少なくなります。
2~3日に1回またはそれ以上の間隔で、授乳回数を減らしていくようにすると、乳汁の分泌も徐々に減っていくので、搾乳が不要なこともあります。
ただ、もし乳房が過度に張って痛みを感じる場合は、以下の手順で「搾乳」(圧抜き)をしましょう。
「圧抜き」の手順
・お風呂場などで搾乳を行うと乳汁を洗い流せて便利
・乳房が張っていて、乳輪部分がむくんでいる場合は、「先に乳輪部のマッサージ」を行ってから搾乳をしましょう
・乳房を手で大きく包み込み、「できるだけ乳輪を触らない」で搾るようにしましょう
「圧抜き」のポイント
・「乳房が張って、ママが不快に感じるとき」に、軽く搾乳をしましょう
・「過度な張りが取れるまで」を目安に母乳を搾りましょう
(乳房が空になるまで頻繁に搾乳すると、乳汁が作り続けられてしまう)

乳房の張りを強く感じるときは
「卒乳の進め方が早すぎる」サインであることもあります。
赤ちゃんの様子を見ながら、このまま進めて良いか検討しましょう。
搾乳器は使わないほうがよい?

母乳の分泌を減らしていくためには、搾りすぎに注意をしなければいけません。
搾乳器を使用してもいいのですが、自分の手で搾ったほうが加減がわかりやすいかもしれません。乳房の張る感覚を確かめながら、排出しすぎないようにしましょう。
(2)クーリング
もし、授乳回数を減らして「乳房の張り」を感じるようなら、乳房が軽くなる程度に搾乳するほか、「適度に乳房を冷やす」のもおすすめです。
「クーリング」のタイミング
・熱っぽいとき
・張りが強いとき
・痛みがあるとき
・冷やしたほうが心地よいと感じるとき
「クーリング」のポイント

「クーリング」は必ずしも行わなければいけないものではありませんが、「心地良いと感じる」ようであれば行ってください。
ただし、冷やしすぎないように凍った保冷剤などで直接冷やすのはやめましょう。
「おっぱいマッサージ」は必須ではない
おっぱいケアというと、助産院などで受ける「おっぱいマッサージが必要?」と思うママもいるかもしれません。でも、おっぱいマッサージは、卒乳をスムーズに進めるために必ずすべきというものではありません。
ただ、助産師さんに話を聞いてもらいながら、リラックスしたり癒されたりしたい場合は、受けてももちろんOKです。おっぱいのケアというより、ママの心のケアとして役立つかもしれません。
卒乳ケアは「いつからいつまで」やる?

卒乳時のおっぱいケアは、乳腺炎予防のために張りを感じたらぜひ行って欲しいのですが、だいたい「いつからいつまで」すれば良いのでしょうか。
卒乳開始から「1ヶ月間程度」が目安
順調に卒乳が進んでいる場合、始めて1週間くらい経つころから徐々に、乳房の張りや痛みを感じることが少なくなってくるでしょう。
そして、個人差はありますが、授乳の回数が順調に減っていき、開始後1ヶ月ほど経てば、搾乳しても「乳首にじわっとにじみ出てくる程度」になってきます。
胸の張りなどを感じなくなったら、卒乳完了と考え、ケアも卒業して大丈夫でしょう。
卒乳ケアをするときの注意点

卒乳ケアをするなかで注意したいことも解説します。
迷ったり悩んだりしたら専門家に相談して
卒乳のタイミングやいざ卒乳に向けて授乳を減らしていっても、なかなかうまく進まないこともあるかもしれませんね。
そんなときは、1人で悩まずに、かかりつけの産婦人科や助産院に相談してみましょう。ママと赤ちゃんに合った方法を一緒に考えてくれますし、無事に卒乳できるまで、寄り添ってサポートしてくれます。心配なときに、すぐに相談できる場所があれば、不安を抱えたままにならずに済みますね。
「乳腺炎かも」と思ったら母乳外来を受診

卒乳・断乳をするときに、一番心配なのは「乳腺炎」です。
「乳房にしこりがある」「赤くなった」「腫れてきた」「発熱」などの症状が出たら、母乳外来のある産婦人科に相談してください。
また、卒乳完了数ヶ月以上も母乳が出ているようなら、病気(高プロラクチン血症など)が原因の可能性もあります。
この場合、治療が必要になることもあるので、必ず医療機関を受診してください。また、乳房にしこりがある場合も乳腺外科を受診しましょう。
まとめ

卒乳時におっぱいのケアがなぜ必要なのか、具体的な方法・注意点などを解説しました。卒乳は赤ちゃんにとってひとつの節目ですが、それまでさかんに母乳を作っていた乳房にとっても大きな変化をもたらします。
多くの場合、問題なく終えることができますが、おっぱいの張りをそのままにしておくと乳腺炎がひどくなることもあるので、「適度に圧抜き」をしたり「心地よいと感じるくらい冷やしてあげる」とスムーズに進められるでしょう。
赤ちゃんの成長を見守るとともに、自身のおっぱいにも少し気を配りながら、親子で成長の大きなステップを踏み出しましょう。
(文:坂田陽子 先生/構成:マイナビ子育て編集部)
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※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます