宋美玄先生解説|妊娠中のセックス体位のおすすめ3選とNG例
妊娠中、とくに中期以降は、大きくなるおなかのせいで、セックスの体位にも注意が必要になってきます。妊娠中におすすめの体位と避けるべき体位について、産婦人科医で女性の性に関する著書も多数ある宋美玄先生に教えていただきました。
妊娠中におすすめの体位3つ
「妊娠中の女性の体には、様々な変化が生じます。
初期はつわりに悩まされたり、体が妊娠を維持するための準備を進めるため、だるさを感じたりすることが多いです。中期になると、つわりは落ち着いてくることが多いですが、動悸(どうき)や息切れ、貧血、腰痛、便秘、むくみなどのマイナートラブルに悩まされるようになります。後期は、中期に感じたマイナートラブルに、さらに悩まされるようになったり、大きくなったおなかに胃などの消化器が圧迫されて、胃もたれや胸やけの症状が強くなったりする人も少なくありません。
あちこちに何らかのトラブルがあり、妊娠中の体は決して『普通』と呼べるような状態ではないです。それゆえ、セックスの体位も、それに合わせることが必要といえます」
おすすめの体位1. 側位
① 女性がシムス位をとる
② 男性が女性の後ろから挿入する
※シムス位:体の左側を下にして横を向く姿勢で横向きになり、左足は楽な位置へ伸ばし、右足は付け根から曲げて、クッションなどを使って左足より前に出す。右手は前に出して曲げ、左手は体の後ろで伸ばすなど、それぞれ楽な位置におく
「この体位は男女ともに体に負担がかかりにくく、妊娠中以外でも体力に問題があったり、体に問題を抱えたりする場合におすすめです。」
おすすめの体位2. 後背位(バック)
① 女性が四つん這いの姿勢になる
② 男性が女性の後ろから挿入する
「後背位は深く挿入されるので心配になる人がいるかもしれません。そうした場合は、女性が脚を閉じると挿入が浅くなります。
ベッドの高さを利用すると、体格差のあるカップルでも、体への負担が少なく挿入することが可能になります。」
おすすめの体位3. 寝バック
① 女性がうつぶせになる
② 男性が女性にまたがる体勢になり、手と膝から下を床面について自分の体重を支えながら、女性の後ろから挿入する
「この体位は密着感を得やすく、男女ともに体への負担が少ないのが特徴です。男性は挿入しながら、女性の首筋や背中に愛撫することもできます。
ただし、深く挿入されやすい体位なので、女性は足を閉じておいたほうがよいかもしれません。
また、妊娠週数が進み、おなかが大きくなると、とるのが難しい体位でもあります。その場合は、先ほど紹介した側位や後背位でするのがよいでしょう。」
こんな体位、妊娠中は避けて!
では、反対に妊娠中に避けたほうがよい体位にはどんなものがあるのでしょうか。それについて質問すると、宋先生はこう話してくれました。
NG1 妊婦さんが不安になるような体位
「具体的に『これがダメ』という体位はとくにありません。強いて言えば、妊婦さんが不安になるような、不安定さや刺激を生じる体位は避けたほうがよいでしょう。
セックスをしていて不安を感じたり、気になったりするようなことがあれば、パートナーにも伝えて、別の体位に変えることをおすすめします。」
NG2 ポルチオを刺激する体位
「もしもの可能性を考えて、ポルチオと呼ばれる性感帯を刺激するのは避けたほうがよいです。
ポルチオは女性の腟内にある性感帯のひとつで、Gスポット(腟口から4cmくらいのところにある性感帯)のさらに奥、子宮の入り口付近にあります。
ここを刺激するような深い挿入になる体位は、妊娠中は避けておきましょう。」
妊娠中のセックスでNGなこと・気をつけてほしいこと
体位以外にも、妊娠中にセックスするときに避けておきたいこと・気を付けておきたいことがいくつかあります。そうした注意点をまとめてご紹介しましょう。
前置胎盤や流早産のおそれがある場合はNG
妊娠経過に問題のない健康な妊婦さんが妊娠中にセックスしても、妊婦さん自身や赤ちゃんの健康を害することは基本的にありません。ただし、過去に流産や早産をした経験があったり、現在も切迫流産や切迫早産と診断されていたりなど、赤ちゃんへの影響が懸念される場合のセックスはNGです。
そのほか前置胎盤や子宮頸管無力症、原因不明の出血や腹痛があるといった場合も、医師からセックスを止められることがあります。心配なことがあるときは、事前に医師に相談しておきましょう。
関連記事 ▶︎妊娠中のセックス、妊娠初期やおなかが張った時は?
出血があってもセックスを続けるのはNG
セックスの最中に出血が生じた場合は、すぐにやめましょう。
様子を見てすぐに出血が止まるようであれば問題ないことが多いですが、心配な場合はかかりつけ医に電話で相談したり、次回の健診の際に相談したりしてもよいでしょう。その際、セックスをしていて出血があったことを、恥ずかしがらずに伝えることが重要です。その情報がないと、医師は的確な判断をすることが難しくなります。
不衛生な状態・場所でのセックスはNG
妊娠中は、普段なら感染しても症状が出ないような菌やウイルスからも影響を受けやすくなっています。そのため、不衛生な状態や場所でセックスをするのは絶対に避けましょう。できればセックスの前だけでなく、終わった後にもシャワーを浴びて体を清潔にすると、性感染症をはじめとした様々な感染症や膀胱炎などにかかるリスクを下げることにつながります。
オーラルセックスや乳頭への刺激はNG
妊娠中のクンニリングスで腟内に空気を送られたことにより、致命的な空気栓塞症が生じた例が報告されています[*1]。また、妊娠中に乳頭を刺激すると、オキシトシンという子宮収縮を促すホルモンの分泌が高まり、陣痛を生じさせる可能性があることがわかっています。
妊娠中のセックスでは、オーラルセックスや乳頭への刺激はできるだけ避けておきましょう。
コンドームはなるべく使う
妊娠中のセックスではコンドームをつける必要性を感じないという人も、中にはいるかもしれません。しかし、妊娠中に性感染症にかかると胎児にまで大きな影響を及ぼすリスクがあるため、妊娠中はできればコンドームを付けてセックスすることをおすすめします。
妊娠中の中出しについては、以下の記事で詳しく解説しています。
まとめ
妊娠中にセックスをする場合は、体の状態に注意しながら行うことをおすすめします。そのため、体位も体への負担が少ないものを選ぶとよいでしょう。側位、後背位など、いくつか妊娠中におすすめの体位を紹介しましたが、これ以外でも、妊婦さんとパートナーへの体の負担が少なくできるのであれば構いません。
ただし、出血があった場合や体調に異変を感じた場合、それから不衛生な環境でのセックスなどは、妊婦さんや赤ちゃんへの影響を考慮して避けることが大切です。体を気づかいながら、妊娠中も可能な範囲でセックスを楽しみましょう。
(文:山本尚恵/監修:宋美玄先生)
※画像はイメージです
[*1]「ウィリアムス産科学 原著 24版」(南山堂)p216
※この記事は、マイナビウーマン子育て編集部の企画編集により制作し、医師の監修を経た上で掲載しました
※本記事は子育て中に役立つ情報の提供を目的としているものであり、診療行為ではありません。必要な場合はご自身の判断により適切な医療機関を受診し、主治医に相談、確認してください。本記事により生じたいかなる損害に関しても、当社は責任を負いかねます