3歳児神話の呪縛「そんな小さい子を保育園に預けるなんて」と言われても、安心してください。小児科医からのアドバイス
仕事へ復帰する時、小さな子を保育園などに預けると話すと「え〜早すぎるんじゃないの?」などと言われることがあります。子供と離れることに不安を感じている時に責められると落ち込みますね。そんな時はどう考えたらいいでしょうか。
3歳児神話はとっくに否定されている
小さな子供を保育園やこども園などに預けるというと、周囲の人に「そんなに小さい子を預けて大丈夫なの?」「3歳までは家庭で(母親が)育てるべきじゃないの?」などと言われることがあります。同じように仕事をしていても、なぜかお父さんではなく、お母さんだけが言われることが多いようです。
こういう発言のほとんどは「3歳児神話」に基づいていると思われます。3歳児神話とは、「少なくとも3歳までは家庭で母親の手によって育てないと、その後の成長に悪影響がある」とする考えです。
この考えは、1951年にイギリスの精神医学者であるジョン・ボウルビィ氏が家庭から切り離された戦争孤児に精神的発達の遅れがあることに気づき、「子供が育つ過程では、信頼できる大人との間に愛着関係を築くことが重要である」と報告したことが発端のようです。その後、イギリスで広まり、さらに日本へも伝わりました。
ところが、この3歳児神話は、とっくに国内外で否定されています。日本では、1998年の『厚生白書(平成10年度版)』で「少なくとも合理的な根拠は認められない」と言及されているのです。
たいていの育児は父親によっても遂行可能
さらに『厚生白書(平成10年度版)』には、以下のようにも書かれています。
「母親が育児に専念することは歴史的に見て普遍的なものでもないし、たいていの育児は父親(男性)によっても遂行可能である。また、母親と子供の過度の密着はむしろ弊害を生んでいる、との指摘も強い。欧米の研究でも、母子関係のみの強調は見直され、父親やその他の育児者などの役割にも目が向けられている」
本当にその通りで、全ての家庭において常に自宅で育児をすることがよいとは限りません。そして今は共働き家庭が多いので、保育園などの手助けは必要不可欠なのです。
そもそも、前述のボウルビィ氏が伝えたかったのは「小さな子供には信頼できる大人との愛着関係が必要」という部分。信頼できる大人には、母親や父親はもちろん、その他の家族でも、保育者でもなり得ます。それに仕事は家族を支えるために必要なものです。だから子供を預けることを非難する人がいたら、気にせずスルーするか、3歳児神話が既に否定されていることを伝えてみるといいでしょう。
私も子供が小さい時に保育園へ入れましたが、入園前の不安は全て杞憂でした。子供たちは保育園にすぐに慣れ、家庭ではできないような行事や遊びを楽しみ、保育のプロである先生にお世話になり、たくさんの友達に囲まれてすくすくと育ちました。家庭には家庭のいいところがあるように、保育園には保育園のよいところがあります。だから、あまり心配しすぎないでくださいね。
(編集協力:大西まお)